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第4章 修道院
9 原因となるもの
しおりを挟む「先ずは、これまで多くの有益な情報を提供してくれてありがとう。その情報を基に、いくつか分かったことあるんだ。私自身、完全に理解したとは言いづらいが、現状、こちらで確認している内容を皆に知っておいてほしい」
「こちらとしては、最初から教えておいてほしかったですわね」
第一王子アレックスの説明に、エリザベスから不満の声が上がった。
「それについては、申し訳なかった。しかし、こちらで危険だと判断したものに関しては、これからも伝えるつもりはない」
「そんなに危険だと思われる情報を、こちらが把握していないことの方がよっぽど危険だと思いますわ。もし問題が生じても、何も知らなければ、こちらでは対応ができませんもの」
「エリザベス、そう責めないでくれないか。これからも今まで通り、問題が解決するまでは協力を願いたい。これからも、どうかよろしく頼む」
「危険なことは知らせないだなんて……、その考えは分からなくもありませんが、そんな悠長なことを言っている場合ではないのでは?」
「お前は、何でアレックスに対していつもそう喧嘩腰なんだ。いい加減にしろ、不敬だぞ。昔はもっと仲が良かっただろうに。」
アレックスとエリザベスのやり取りを見かねたキースが口を挟んだ。
「お前たち、話しが前に進まない」
「すまない」「すまん」「失礼いたしました」
まだまだ終わりそうにもない言い合いを、リオンが終わらせた。リオンの鋭い眼光で見つめられたら、アレックスとキース、そしてエリザベスの三人は、黙るしかない。
「話が逸れてしまって申し訳ない……。アレックス、早く話してやってくれ」
リオンが三人以外の者たちに謝り、話し出さないアレックスに早く話すようにと急かした。アレックスはリオンに頷くと、全員の顔を見てから話し出した。
「皆、待たせてすまなかった。……ここからは重要な話になるからよく聞いてほしい。
50年前の問題が起きたとき、当時の第三王女と深く関わった者たちは、皆一様に不自然な言動を取っていたらしい。初めの頃は、若者特有の精神状態だと大人たちは思っていたそうだ。それから直ぐに、婚約を破棄するものが増えて、大人が気付いた時には手遅れの状態だった。ここまでは、皆も話には聞いたことがあると思う。
しかし、厄介なのはその後だ。結局、原因も分からずに、問題は解決しないまま、時だけが過ぎてしまった。そこで私たちは、第三王女と関わった者がおかしくなった原因をずっと探ってきた。そして、行き着いたのが先代の王妃が保有していた原石だった。その原石は、隣国から嫁いでくるときに父王から貰ったものだそうだ。私たちはそれらの回収を急いだ。しかし見つかったのは大きな宝石が一つだけだった。
隣国の者に確認したところ、その原石は傷もなく結構な大きさがあったようでね。大きな宝石が一つと、小さい宝石が数個は作れるという話だった。しかし、今こちらの手元にあるのは大きな宝石が一つだけ。加工した際の残りの宝石はいくつあるのか、そしてその中の一つは第三王女に渡されたと思うが……、その宝石も未だ見つかっていない。
今はその残りの宝石を探しているところなんだ。君たちに話せる内容はここまでだけど、何か気になったことはあるかい?」
アレックスの話を聞いた直後に、考え込んでいる顔のエリザベスが口を開いた。
「隣国の者とは、どなたでしょうか? それと、何故、原因が宝石だと思われたのですか」
「それは、隣国の第二王子だ。この話は第一王子には伝えてはいない。今はこれ以上の事は言えないが、時が来れば皆の耳にも入るだろう。それと、原因だと思った理由だが、第二王子の情報で、その宝石が隣国の秘宝だということが分かった。しかも、隣国は扱いの難しい石だということも分かっていながら、その秘宝をわざわざ嫁ぐ娘に渡した。それは、もう個人間の問題では済まされない……、ということは分かるよね」
「……なるほど、それについては分かりました。後は、宝石について詳しくお聞きしたいのですが、それはエマが来てからでも良いでしょうか」
「そうだね。エマも知っていることがあるかもしれないから、そうしよう。それまでの間、皆少し休憩にしようか」
アレックスとエリザベスの会話が落ち着きを見せたところで休憩となったようだ。休憩と聞き、ルイーズは皆に話しかけた。
「少し外に出てきても良いでしょうか?」
「ルイーズちゃん、エリーちゃんの様子が気になるのね。私も様子を見に行くわ、一緒に行きましょう。」
「はい」
ルイーズとイリスは、エリーが休んでいる医務室へ向かったようだ。
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