43 / 84
第4章 修道院
9 原因となるもの
しおりを挟む「先ずは、これまで多くの有益な情報を提供してくれてありがとう。その情報を基に、いくつか分かったことあるんだ。私自身、完全に理解したとは言いづらいが、現状、こちらで確認している内容を皆に知っておいてほしい」
「こちらとしては、最初から教えておいてほしかったですわね」
第一王子アレックスの説明に、エリザベスから不満の声が上がった。
「それについては、申し訳なかった。しかし、こちらで危険だと判断したものに関しては、これからも伝えるつもりはない」
「そんなに危険だと思われる情報を、こちらが把握していないことの方がよっぽど危険だと思いますわ。もし問題が生じても、何も知らなければ、こちらでは対応ができませんもの」
「エリザベス、そう責めないでくれないか。これからも今まで通り、問題が解決するまでは協力を願いたい。これからも、どうかよろしく頼む」
「危険なことは知らせないだなんて……、その考えは分からなくもありませんが、そんな悠長なことを言っている場合ではないのでは?」
「お前は、何でアレックスに対していつもそう喧嘩腰なんだ。いい加減にしろ、不敬だぞ。昔はもっと仲が良かっただろうに。」
アレックスとエリザベスのやり取りを見かねたキースが口を挟んだ。
「お前たち、話しが前に進まない」
「すまない」「すまん」「失礼いたしました」
まだまだ終わりそうにもない言い合いを、リオンが終わらせた。リオンの鋭い眼光で見つめられたら、アレックスとキース、そしてエリザベスの三人は、黙るしかない。
「話が逸れてしまって申し訳ない……。アレックス、早く話してやってくれ」
リオンが三人以外の者たちに謝り、話し出さないアレックスに早く話すようにと急かした。アレックスはリオンに頷くと、全員の顔を見てから話し出した。
「皆、待たせてすまなかった。……ここからは重要な話になるからよく聞いてほしい。
50年前の問題が起きたとき、当時の第三王女と深く関わった者たちは、皆一様に不自然な言動を取っていたらしい。初めの頃は、若者特有の精神状態だと大人たちは思っていたそうだ。それから直ぐに、婚約を破棄するものが増えて、大人が気付いた時には手遅れの状態だった。ここまでは、皆も話には聞いたことがあると思う。
しかし、厄介なのはその後だ。結局、原因も分からずに、問題は解決しないまま、時だけが過ぎてしまった。そこで私たちは、第三王女と関わった者がおかしくなった原因をずっと探ってきた。そして、行き着いたのが先代の王妃が保有していた原石だった。その原石は、隣国から嫁いでくるときに父王から貰ったものだそうだ。私たちはそれらの回収を急いだ。しかし見つかったのは大きな宝石が一つだけだった。
隣国の者に確認したところ、その原石は傷もなく結構な大きさがあったようでね。大きな宝石が一つと、小さい宝石が数個は作れるという話だった。しかし、今こちらの手元にあるのは大きな宝石が一つだけ。加工した際の残りの宝石はいくつあるのか、そしてその中の一つは第三王女に渡されたと思うが……、その宝石も未だ見つかっていない。
今はその残りの宝石を探しているところなんだ。君たちに話せる内容はここまでだけど、何か気になったことはあるかい?」
アレックスの話を聞いた直後に、考え込んでいる顔のエリザベスが口を開いた。
「隣国の者とは、どなたでしょうか? それと、何故、原因が宝石だと思われたのですか」
「それは、隣国の第二王子だ。この話は第一王子には伝えてはいない。今はこれ以上の事は言えないが、時が来れば皆の耳にも入るだろう。それと、原因だと思った理由だが、第二王子の情報で、その宝石が隣国の秘宝だということが分かった。しかも、隣国は扱いの難しい石だということも分かっていながら、その秘宝をわざわざ嫁ぐ娘に渡した。それは、もう個人間の問題では済まされない……、ということは分かるよね」
「……なるほど、それについては分かりました。後は、宝石について詳しくお聞きしたいのですが、それはエマが来てからでも良いでしょうか」
「そうだね。エマも知っていることがあるかもしれないから、そうしよう。それまでの間、皆少し休憩にしようか」
アレックスとエリザベスの会話が落ち着きを見せたところで休憩となったようだ。休憩と聞き、ルイーズは皆に話しかけた。
「少し外に出てきても良いでしょうか?」
「ルイーズちゃん、エリーちゃんの様子が気になるのね。私も様子を見に行くわ、一緒に行きましょう。」
「はい」
ルイーズとイリスは、エリーが休んでいる医務室へ向かったようだ。
9
お気に入りに追加
160
あなたにおすすめの小説

【完結】空気にされた青の令嬢は、自由を志す
Na20
恋愛
ここはカラフリア王国。
乙女ゲーム"この花束を君に"、通称『ハナキミ』の世界。
どうやら私はこの世界にいわゆる異世界転生してしまったようだ。
これは家族に疎まれ居ないものとして扱われてきた私が自由を手に入れるお話。
※恋愛要素薄目です

公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。

【完結】お荷物王女は婚約解消を願う
miniko
恋愛
王家の瞳と呼ばれる色を持たずに生まれて来た王女アンジェリーナは、一部の貴族から『お荷物王女』と蔑まれる存在だった。
それがエスカレートするのを危惧した国王は、アンジェリーナの後ろ楯を強くする為、彼女の従兄弟でもある筆頭公爵家次男との婚約を整える。
アンジェリーナは八歳年上の優しい婚約者が大好きだった。
今は妹扱いでも、自分が大人になれば年の差も気にならなくなり、少しづつ愛情が育つ事もあるだろうと思っていた。
だが、彼女はある日聞いてしまう。
「お役御免になる迄は、しっかりアンジーを守る」と言う彼の宣言を。
───そうか、彼は私を守る為に、一時的に婚約者になってくれただけなのね。
それなら出来るだけ早く、彼を解放してあげなくちゃ・・・・・・。
そして二人は盛大にすれ違って行くのだった。
※設定ユルユルですが、笑って許してくださると嬉しいです。
※感想欄、ネタバレ配慮しておりません。ご了承ください。

【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。
るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」
色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。
……ほんとに屑だわ。
結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。
彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。
彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。

ひめさまはおうちにかえりたい
あかね
ファンタジー
政略結婚と言えど、これはない。帰ろう。とヴァージニアは決めた。故郷の兄に気に入らなかったら潰して帰ってこいと言われ嫁いだお姫様が、王冠を手にするまでのお話。(おうちにかえりたい編)

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない
朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる