【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
45 / 84
第4章 修道院

11 辺境へのお誘い

しおりを挟む

「そうだわ、エリーから聞いたのだけど、レアに良いこと教えてあげる」

「何だ?」

「ルーちゃん、乗馬を習いたいそうよ。エリーから、誰か適任者がいたら紹介してあげてほしいって、前から頼まれていたのよ。でも、ご家族には言えないらしいから、安全な場所で安全な指導をお願いしたいのだけど、レアどうかしら?」

「いつからでも良いぞ」

 即答のレアに、笑いが零れるエマ。その隣では、レアを直視していたリオンが俯き様に何やら考え込んでいるようだ。

 その様子を見ていたエリザベスが、エマの服の袖を引きながら小声で話し掛ける。

「エマ、何を考えているの? 御家族に知らせないなんて駄目よ」

「それは大丈夫よ。リザ、見て。二人とも乗り気よ。きっとこれがきっかけで、状況がまた変わるわ。それに、ルーちゃんもエリーも、知りたいはずよ。私だったら、守られてるだけなんていやだわ。二人に無理強いするつもりはないけど、やりたいと思うことはやらせてあげたいし、知りたいのなら教えてあげたい」

「もう、エマ……」

 エマの言い分に、言葉を失い何も言い返せないエリザベスを見て、キースとアレックスが声を掛けた。

「良いんじゃないか。これからのことを考えたら、できることは多いほうが良い。様々な状況に対応できた方が安心だ。ご両親だって、いつでもどこでも守れるわけじゃないんだ」

「そうだね」

 二人からも同じような言葉を聞いたエリザベスは、目を閉じてから頷いた。


 ♦


 自分のいない間に、そんな話がされているとは知らないルイーズが、イリスと一緒に修道院室へ戻って来た。

「休憩ありがとうございました。医務室でエリーの様子を見ることもできて安心しました」

「そう、それは良かったわ」

 ルイーズの穏やかな表情を見て安堵したエリザベスが、話しだそうとしたその時、レアが待ちかねたようにルイーズに話し掛けた。

「ルーちゃん、乗馬の話を聞いた。私なら、予定が合えばいつでも教えてあげられるがどうだろうか」

 レアの突然の提案に驚きはあるが、嬉しそうな表情のルイーズ。

「本当に良いのですか? もちろん、私がレアさんの予定に合わせますので、よろしくお願いします」

 ルイーズの返事を聞いて、満足そうに微笑みながら頷くレア。

「でも、私の馬だと大きくて落ち着きがないんだ。ルーちゃんに合った馬は……屋敷に戻れば、静かな馬に乗ることもできるんだが……どうだろうか、長期休暇は私と一緒に辺境に行かないか? あそこなら、思う存分練習もできるぞ」

「私が行ってもよろしいのですか? ……でも、先ずは両親に相談してみます。返事はそれからでも良いでしょうか?」

「ああ、もちろんだ」

「ありがとうございます。今夜にでも話してみます」

 笑顔で頷き合うレアとルイーズ。それを横目に見ていたリオンが、アレックスを凝視している。その視線に気づいたアレックスは、苦笑いしながらリオンに告げた。

「君は学生じゃないから、長期休暇はないよ」

 アレックスの言葉に納得できないリオンは、キースを見やるや否や言葉を発した。

「以前から頼んでいた休暇申請を取らせてくれ」

「……そうだな。この半年、休みという休みを取っていないしな。アレックス、辺境の様子も気になる。それに、辺境伯家の嫡男を長い期間こちらに留めているんだ。一度戻った方が良いだろう」

「それを言われると……そうだね、リオンからも休暇願いが出ていたしね」

 リオンは二人の言葉を聞くと、後ろにいるレアに振り向きざまに伝えた。

「レア、俺も護衛としてついていく」

「兄上も帰れるのか! そうか、リリーが喜ぶぞ。あとはルーちゃんが一緒に行ければ言うことないな」
「……ああ、そうだな」

 リオンの帰省を喜ぶレアと、そんなレアに優しいまなざしを向けるリオン。

 そんな二人とは離れたところで、アレックスとエマが宝石について話していた。

「先ずは実物を見せてください。宝物庫にでも保管してるんですか?」

「こうなるから、宝石の話はまだしたくなかったんだ。今は厳重に管理している。見せるのは無理だよ。何が起こるか分からないものを見せるわけにはいかない」

「それでは、もう少しこちらで宝石について調べてみます。確証はありませんが、気になることがあるので」

「わかった。それなら今は、宝石について語るのはやめておこう」

「そうですね」

 二人の間で何やら確約が取り交わされたようだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

処理中です...