【完結】ルイーズの献身~世話焼き令嬢は婚約者に見切りをつけて完璧侍女を目指します!~

青依香伽

文字の大きさ
上 下
41 / 84
第4章 修道院

7 修道院へ行く ⑤

しおりを挟む
 
 外に出た二人は、先ほど怪我をした男性の座っていたベンチに向かっていた。

「良かった。ここにいた男性は医務室に行ったのよね」
「そうね。怪我をしたのは顔だけのようだし、自力で医務室に行けたと思うわ」

 男性の座っていたベンチに腰掛け、二人は先ほどの会話を思い返しているようだ。楽しみにしていた修道院訪問で、まさかこんな話しを聞くことになるとは思っていなかったルイーズ。今は、疑問に思った内容を一旦手放し、エリーと向き合って話したいと思ったようだ。

「エリー、さっきの話を聞いてから、小さい頃の事を思い出していたの。エリーも、私に変化や違和感のようなものを感じていたのかしら?」

「……目の色に、違和感を覚えたときがあったの。その頃、私と話したことや約束していたことを忘れていた時があったわ。あの頃は、目の色や記憶も自分の思い過ごしなのか、勘違いなのか分からなかった。姉たちや母に聞いても、何も分からなくて……只々不安だった。ルイーズに何かあったんじゃないかって怖かったの。私、何も言えなくて、何もできなくて本当にごめんなさい」

「エリー、ありがとう。私がそんな状態なのに、いつも側にいてくれたわ。エリーとの思い出も、取り戻せたら良いのだけど……自分自身、まだ混乱しているのかな。少しずつでも、回復できるように努力するわ。だから、思い出せるまで待っていてくれるかしら?」

「もちろんよ。思い出せなくても、ルイーズと変わらずにこうして一緒に過ごすことができるだけで、私は幸せよ」

 ルイーズの変化に気づきながら、何も分からない状態で共に過ごしてきたエリーは、継続的な不安を抱えていたのだろうか。もしそうならば、心労的な負担も大きかっただろう。

 その後、修道院長室に戻るためにベンチから立ち上がった時、エリーが前のめりに倒れた。ルイーズは、近くを通りかかった人に助けを求めて、エリーを連れて医務室に向かった。

 エリーに外傷はなく、そのまま眠り続けているため、ベッドで休ませることになったようだ。知らせを受けたエマが、すぐさま医務室に来て、ルイーズと付き添いを変わり、ルイーズに修道院長室に向かうように伝えた。


 ♦


 ルイーズとエリーが休憩で外へ出た後、修道院長室にはどうやら外部の人間が来ていたようだ。ドアの前に立たされている男性が三人、エリザベスからお小言を言われている。

 この三人、市井に訪れる際に着用するような衣服だが、容姿が整い過ぎているため、高貴な雰囲気が崩せていない。その中の一人は、顔にガーゼを貼っているため、少し悪目立ちをしているようだ。

「殿下、遅かったですね」
「すまない。ここへは早くに着いていたんだが、どうやらトラブルがあったようでな」

 エリザベスが、中央に立つ男性に話しかけた。

「そうでしたか。こちらも色々あって、休憩していたところです。今日ご紹介させていただく、ブラン家のご令嬢が戻るまで、お話させていただきたいのですが、よろしいですか」

「ああ、よろしく頼む」

 エリザベスは、頷きながら男性たちにソファーへ座るように促し、ルイーズとエリーとした会話の内容を話し始めた。

「それは間違いなく、影響を受けているな」

「ええ、でもブラン家にそのような力があったこと、殿下はご存じでしたか?」

「いや、初めて聞いた。ご家族は表沙汰にせず、力のこともご令嬢のことも、守って来たのではないか?」

その時、ドアが三回ノックされた。

「失礼いたします。ルイーズ・ブランです」
「どうぞ、入って」

部屋の中からはイリスの返事が聞こえた。ルイーズが部屋の中に入ると、エリザベスがドアを開けた所で出迎えてくれたようだ。

「ルーちゃん、エリーのことは聞いているわ。多分、今まで疑問に感じていたことが分かって、安堵のあまり気が緩んだのではないかしら。だから、エリーのことはエマに任せて。あまり心配しないで」

「はい」

ルイーズの返事を聞くと、エリザベスはルイーズの背中に手を添えて、彼らの元に連れて行った。

「ルーちゃん、こちらの方々が先ほど話した協力関係にある方たちよ」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた
恋愛
「君の望み通り、君との婚約解消を受け入れるよ」  色とりどりの春の花が咲き誇る我が伯爵家の庭園で、沈痛な面持ちで目の前に座る男の言葉を、私は内心冷ややかに受け止める。  ……ほんとに屑だわ。 結果はうまくいかないけど、初恋と学園生活をそれなりに真面目にがんばる主人公のお話です。 彼はイケメンだけど、あれ?何か残念だな……。という感じを目指してます。そう思っていただけたら嬉しいです。 彼女視点(side A)と彼視点(side J)を交互にあげていきます。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

私の容姿は中の下だと、婚約者が話していたのを小耳に挟んでしまいました

山田ランチ
恋愛
想い合う二人のすれ違いラブストーリー。 ※以前掲載しておりましたものを、加筆の為再投稿致しました。お読み下さっていた方は重複しますので、ご注意下さいませ。 コレット・ロシニョール 侯爵家令嬢。ジャンの双子の姉。 ジャン・ロシニョール 侯爵家嫡男。コレットの双子の弟。 トリスタン・デュボワ 公爵家嫡男。コレットの婚約者。 クレマン・ルゥセーブル・ジハァーウ、王太子。 シモン・ノアイユ 辺境伯家嫡男。コレットの従兄。 ルネ ロシニョール家の侍女でコレット付き。 シルヴィー・ペレス 子爵令嬢。 〈あらすじ〉  コレットは愛しの婚約者が自分の容姿について話しているのを聞いてしまう。このまま大好きな婚約者のそばにいれば疎まれてしまうと思ったコレットは、親類の領地へ向かう事に。そこで新しい商売を始めたコレットは、知らない間に国の重要人物になってしまう。そしてトリスタンにも女性の影が見え隠れして……。  ジレジレ、すれ違いラブストーリー

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結】ヒーローとヒロインの為に殺される脇役令嬢ですが、その運命変えさせて頂きます!

Rohdea
恋愛
──“私”がいなくなれば、あなたには幸せが待っている……でも、このまま大人しく殺されるのはごめんです!! 男爵令嬢のソフィアは、ある日、この世界がかつての自分が愛読していた小説の世界である事を思い出した。 そんな今の自分はなんと物語の序盤で殺されてしまう脇役令嬢! そして、そんな自分の“死”が物語の主人公であるヒーローとヒロインを結び付けるきっかけとなるらしい。 どうして私が見ず知らずのヒーローとヒロインの為に殺されなくてはならないの? ヒーローとヒロインには悪いけど……この運命、変えさせて頂きます! しかし、物語通りに話が進もうとしていて困ったソフィアは、 物語のヒーローにあるお願いをする為に会いにいく事にしたけれど…… 2022.4.7 予定より長くなったので短編から長編に変更しました!(スミマセン) 《追記》たくさんの感想コメントありがとうございます! とても嬉しくて、全部楽しく笑いながら読んでいます。 ですが、実は今週は仕事がとても忙しくて(休みが……)その為、現在全く返信が出来ず……本当にすみません。 よければ、もう少しこのフニフニ話にお付き合い下さい。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

婚約者様は大変お素敵でございます

ましろ
恋愛
私シェリーが婚約したのは16の頃。相手はまだ13歳のベンジャミン様。当時の彼は、声変わりすらしていない天使の様に美しく可愛らしい少年だった。 あれから2年。天使様は素敵な男性へと成長した。彼が18歳になり学園を卒業したら結婚する。 それまで、侯爵家で花嫁修業としてお父上であるカーティス様から仕事を学びながら、嫁ぐ日を指折り数えて待っていた── 設定はゆるゆるご都合主義です。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

処理中です...