36 / 84
第4章 修道院
2 協力依頼
しおりを挟む「二人とも、五十年前の問題が未だに解決されていないことは知っているわよね? そして、あの問題が原因で、人生に影を落とした人たちが多くいることも。どんなに時が経とうと、どうしても黒い影が付いて回るわ。五十年以上も前の話なのに、高位貴族家では、未だに尾を引いている。私たち三人は、その問題解決のために動いている方々と一緒に、問題の真相を探っているの。生徒会活動という名目があれば、動ける範囲も広まるし、内容も三人だけに留める事ができるでしょう? 先輩方の卒業後、生徒会が三人だけで活動している理由はそのためなの」
「エマ、続きは私が話すわ」
エリザベスは、エマに声をかけると話し始めた。
「どうしても、私たちの世代であの問題を終わらせたいの。二人とも、淑女科に在籍していたから分かるでしょうけど、本来であれば、婚約を結んでいる子たちはもっと多いはずよ。あの問題が、家同士の繋がりを結びづらくさせているの。私たちは、そういう歪みを正したい。でも、私たちもこの女学院を卒業する年になってしまった。もちろん、卒業後も問題が解決するまでこの活動を続けていくつもりよ。でも、学生の方が動きやすい場面もある。これから私たちの後を引き継ぐ生徒会入会予定の後輩たちには、伝えるつもりはないの。そこで、あなたたちに協力してほしいの。もちろん、危険なことをさせるつもりはないわ。どうかしら、お願いできるかしら」
ルイーズとエリーにとっては思いもしない内容だった。二人とも俯きながら考え込んでいる。それから数分後、ルイーズが顔を上げてエリザベスに尋ねた。
「二つほど、伺ってもよろしいでしょうか?」
「ええ、どうぞ」
「まず、その活動は私たちにもできる事なのでしょうか? それに、先輩方の後を引き継ぐ予定の方々に、お話しをされない理由は何でしょうか?」
「この活動は、二人にもできる事よ。もし協力してもらえるなら、外部の方々との関わりは増えるけど、心配しないでほしいの。私たちの活動は、学院長と淑女科の一部の先生、それから修道院長もご存じよ。何か困ったことがあれば、私たち以外にも頼れる人たちがいるわ。だから安心してほしいの。それと……、生徒会を引き継ぐ予定の後輩たちだけど、メンバーの人数が増える予定なの。でも、この活動内容はなるべく少人数に留めたい。そこで、卒業後も頻繁に連絡を取り合うことが可能な二人に、お願いしたいと思ったのよ」
エリザベスの返答を聞いたルイーズは、エリーを見つめながら無言の確認を取る。ルイーズの表情から、気持ちが固まったことを察知したエリーは、小さくため息を吐きながら頷いた。
「私たちに何ができるのか、まだ分かりませんが。そのお話、お引き受けいたします」
「ルーちゃん、ありがとう。エリーも良いのね?」
エマの問いかけに、エリーは頷きながら返事をした。
「よかったわ。それでは早速、修道院に行きましょう。いつが良いかしら」
「できれば、長期休暇前に頼む」
それまで黙って話を聞いていたレアが、エリザベスの提案にすぐさま答えた。
「修道院ですか?」
疑問に思ったルイーズが聞き返すと、エリザベスが答えた。
「ええ、二人はまだ修道院長にお会いしたことはないわよね。これからお会いすることも増えるから、前もってご挨拶しておきましょう」
「分かりました。訪問の際は、よろしくお願いします」
「ありがとう、こちらこそよろしくお願いするわ」
「よろしくたのむ」
ルイーズとエリザベス、そしてレアの三人はお互い顔を見合わせて握手を交わした。そんな三人から少し離れたところでは、エリーとエマが何やら小声で話している。
「三人の行いは素晴らしいと思うわ。でも、ルイーズを危険が伴うようなことに巻き込まないでほしいの」
「危険なことはないわ。それに、エリーもルーちゃんがこの問題の影響を受けていることに、気づいているのよね? ルーちゃん自身が動くことで、どんな影響を受けたか分かるかもしれない。だから、エリーはあの場で反対しなかったし、ルーちゃんの意志に任せたほうが良いと思ったのよね?」
エリーは躊躇いながらもエマに答えた。
「そうね、エマちゃんの言う通りよ。でも、強引には動かないでほしいの。心にどんな負担がかかるか分からないわ」
「分かったわ。ルーちゃんの様子を見ながら動くから、そんなに心配しないで」
表情を緩めたエリーがエマに頷き返した。
その時、その場を仕切るようなエリザベスの声が聞こえてきた。
「それでは、次は修道院への挨拶のときに集まりましょう」
37
あなたにおすすめの小説
学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜
織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。
侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。
学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
妃殿下、私の婚約者から手を引いてくれませんか?
ハートリオ
恋愛
茶髪茶目のポッチャリ令嬢ロサ。
イケメン達を翻弄するも無自覚。
ロサには人に言えない、言いたくない秘密があってイケメンどころではないのだ。
そんなロサ、長年の婚約者が婚約を解消しようとしているらしいと聞かされ…
剣、馬車、ドレスのヨーロッパ風異世界です。
御脱字、申し訳ございません。
1話が長めだと思われるかもしれませんが会話が多いので読みやすいのではないかと思います。
楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
3回目の人生は、悪役令嬢を辞めて引きこもります~一歩も出ずに国を救ったら、なぜか「聖女」として崇められ最強の男たちが部屋を包囲してくる件~
放浪人
恋愛
公爵令嬢エリザベートは、1度目は悪役令嬢として断罪され処刑、2度目は改心して聖女となり国に尽くしたが過労死……という悲惨な最期を遂げた。 記憶を持ったまま3度目の人生が始まった瞬間、彼女は固く決意する。 「もう絶対に働きません! 今世は部屋から一歩も出ず、睡眠と趣味に命をかけます!」
最強の拒絶結界『絶対領域』で部屋に籠城し、婚約破棄イベントも夜会も全て無視して惰眠を貪ろうとするエリザベート。 しかし、彼女の「働きたくない」一心からの行動――適当な農業アドバイスや、安眠妨害への容赦ない迎撃――が、周囲には「国を憂う深慮遠謀」「慈愛に満ちた奇跡」として超好意的に解釈されてしまう!?
ヤンデレ化した元婚約者の王太子、物理で愛を語る脳筋騎士団長、効率厨の隣国王子、さらには古代の引きこもり少年までをも巻き込み、事態は国家規模の大騒動へ。 部屋ごと空を飛んで戦場を浄化し、パジャマ姿で古代兵器を操り、地下牢をスイートルームに変えながら、エリザベートは究極の安眠を手に入れることができるのか? 塩対応すればするほど愛され、逃げれば逃げるほど伝説になる、最強引きこもり令嬢の勘違いドタバタ溺愛ファンタジー、ここに完結!
婚約破棄されたトリノは、継母や姉たちや使用人からもいじめられているので、前世の記憶を思い出し、家から脱走して旅にでる!
山田 バルス
恋愛
この屋敷は、わたしの居場所じゃない。
薄明かりの差し込む天窓の下、トリノは古びた石床に敷かれた毛布の中で、静かに目を覚ました。肌寒さに身をすくめながら、昨日と変わらぬ粗末な日常が始まる。
かつては伯爵家の令嬢として、それなりに贅沢に暮らしていたはずだった。だけど、実の母が亡くなり、父が再婚してから、すべてが変わった。
「おい、灰かぶり。いつまで寝てんのよ、あんたは召使いのつもり?」
「ごめんなさい、すぐに……」
「ふーん、また寝癖ついてる。魔獣みたいな髪。鏡って知ってる?」
「……すみません」
トリノはペコリと頭を下げる。反論なんて、とうにあきらめた。
この世界は、魔法と剣が支配する王国《エルデラン》の北方領。名門リドグレイ伯爵家の屋敷には、魔道具や召使い、そして“偽りの家族”がそろっている。
彼女――トリノ・リドグレイは、この家の“戸籍上は三女”。けれど実態は、召使い以下の扱いだった。
「キッチン、昨日の灰がそのままだったわよ? ご主人様の食事を用意する手も、まるで泥人形ね」
「今朝の朝食、あなたの分はなし。ねえ、ミレイア? “灰かぶり令嬢”には、灰でも食べさせればいいのよ」
「賛成♪ ちょうど暖炉の掃除があるし、役立ててあげる」
三人がくすくすと笑うなか、トリノはただ小さくうなずいた。
夜。屋敷が静まり、誰もいない納戸で、トリノはひとり、こっそり木箱を開いた。中には小さな布包み。亡き母の形見――古びた銀のペンダントが眠っていた。
それだけが、彼女の“世界でただ一つの宝物”。
「……お母さま。わたし、がんばってるよ。ちゃんと、ひとりでも……」
声が震える。けれど、涙は流さなかった。
屋敷の誰にも必要とされない“灰かぶり令嬢”。
だけど、彼女の心だけは、まだ折れていない。
いつか、この冷たい塔を抜け出して、空の広い場所へ行くんだ。
そう、小さく、けれど確かに誓った。
この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
真実の愛のお相手様と仲睦まじくお過ごしください
LIN
恋愛
「私には真実に愛する人がいる。私から愛されるなんて事は期待しないでほしい」冷たい声で男は言った。
伯爵家の嫡男ジェラルドと同格の伯爵家の長女マーガレットが、互いの家の共同事業のために結ばれた婚約期間を経て、晴れて行われた結婚式の夜の出来事だった。
真実の愛が尊ばれる国で、マーガレットが周囲の人を巻き込んで起こす色んな出来事。
(他サイトで載せていたものです。今はここでしか載せていません。今まで読んでくれた方で、見つけてくれた方がいましたら…ありがとうございます…)
(1月14日完結です。設定変えてなかったらすみません…)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる