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第3章 侍女科
11 Lノート
しおりを挟む侍女科にきてから半年ほどの月日が流れ、新しい環境にもようやく慣れてきたルイーズ。
まだ学ぶことは山ほどあるが、一つ一つ学んだことを身につけて、確実に自分のものにしているようだ。こんな順調に進んでこれたのも、先生や友人たちの協力があってこそだとルイーズも思っているのだろう。
ルイーズは、今までLノートに書き綴ったページを見返していた。
最新のページに目を留めると、合同授業のお茶会での出来事を思い出しているようだ。お茶会では、自分が淹れる紅茶の味に納得できず、給仕当番を外してもらった。背中を押してくれたエリーとクレア、そしてミアの三人にも断りを入れた。
「私って、頑固なのかしら……。こだわりって言えば聞こえは良いけど、侍女になったら、そんなこと言ってはいられないわよね。丁寧に迅速に、作業をこなしたいとは思うけど……」
侍女の仕事は、限られた時間内にこなさなければいけない作業も多い。しかし、ルイーズとしては〈適当なものを出したくない〉という気持ちが強いのだろう。
「三人は、香りも味も良いって言ってくれたわ……。それから、味の好みは人それぞれだとも言っていたわね。これからは、一つの味に拘らず、色々な味も知るべきよね。それに慣れてきたら、茶葉のブレンドも上手にできるようになりたいわ。それから……、あの時は、実践の場で試す機会を逃してしまったわね。……次こそは、必ず行動しましょう」
普段ならば当たり前のように思えることでも、没頭していると気づきにくいこともあるようだ。
今回もLノートには新たな課題が書き込まれていく。紅茶に関しては、自分の中で折り合いをつけたようだ。
それからまた、Lノートの中でも気になる課題に視線を向けるルイーズ。
〈馬車通学→自分以外の家族が使用するときはモーリスが往復(お父様は乗馬も可能)〉
やはり、自力で通える方法がないか考えているのだろう。御者のモーリスに相談した時、『これから環境が変わるのだから、慣れるまではこのままで様子を見ましょう』と言われたが、侍女科にも慣れてきた今、どうしても考えてしまうようだ。
「お父様やモーリスに、乗馬の練習がしたいとお願いしても、きっと反対されるわよね。誰か教えてくれる人はいないかしら」
侍女科に移ってから、急に活発になったルイーズ。侍女科の活動的で積極的な仲間たちに感化されたのか、それとも元々の性格なのか。淑女科にいた時であれば、乗馬をするなんてことは思いもしなかったのではないだろうか。新しい経験や知識を通じて、確実に視野が広がっているようだ。ルイーズにとっては、きっと良い変化なのだろう。
「そうだわ。明日はお休みだし、皆に私の淹れた紅茶を飲んでもらおうかしら」
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