149 / 190
泥色の夏 二
しおりを挟む
「あっ……、ああっーー」
ここ数日、仁とは会話らしい会話はしていない。仁の唇からもれるのは、むなしい拒絶の声や、悲鳴のような声だけだ。
「い、いやだ、もう嫌だ……」
望はその言葉を鼻で笑った。
「いや、いやって、言いながら、仁さん、もう三回目じゃないですか?」
自分の言葉にひどく毒がこもっていることも自覚している。
「ほら、べたべただ。はしたない人だな、こんなに濡らして」
濡れた手を、これみよがしに仁の鼻先に突き出してやる。
仁の白い頬が赤く染まり、目に朝露のような涙をためて望を悲しげに睨む。うるんだ瞳は色をうしなって、薄暗い座敷のなかで青くすら見えた。
「も、もぉ、止めてくれ」
力なく首を振りながら仁が儚い抵抗をするのを、望はせせら笑った。
「駄目だ。あなたは俺を拒むことはできない。あなたは俺の‶贄〟なのだから」
仁は苦しげに眉を寄せるが、目には諦めと絶望がこもっている。
「ほら。今度は四つん這いになって……、いや、四つん這いになれよ」
「ああ……!」
仁は細い両手で顔をおおう。
それでも抗うことはできないようで、おずおずと言われたとおりの姿勢を取り、望を喜ばせた。
白い肌がぬめるように薄暗い世界のなかで白くほんのり光る。廃水のなかにあっても真珠は光るものだと教えられたようだ。
しなやかな仁の裸体を眺めて望は感嘆し、身をかがめて仁の尻にやさしく接吻を落とす。
「きれいだ……」
その声に仁は恥じ入るように四肢をふるわせる。
「ほら、」
望は、せかすように右の尻たぶを叩いた。
「うう……」
ここ数日で、どうするかは仁に教え込んである。
屈辱に震えながらも、仁は左脚をやや上げ、望のこのむ格好をする。
宴の席で強いた、犬が小用を足すときの姿勢だ。
望は舌なめずりしながら、目の前で誇り高い男が死ぬほど恥ずかしい行為をしているのを見つめていた。
ここ数日、仁とは会話らしい会話はしていない。仁の唇からもれるのは、むなしい拒絶の声や、悲鳴のような声だけだ。
「い、いやだ、もう嫌だ……」
望はその言葉を鼻で笑った。
「いや、いやって、言いながら、仁さん、もう三回目じゃないですか?」
自分の言葉にひどく毒がこもっていることも自覚している。
「ほら、べたべただ。はしたない人だな、こんなに濡らして」
濡れた手を、これみよがしに仁の鼻先に突き出してやる。
仁の白い頬が赤く染まり、目に朝露のような涙をためて望を悲しげに睨む。うるんだ瞳は色をうしなって、薄暗い座敷のなかで青くすら見えた。
「も、もぉ、止めてくれ」
力なく首を振りながら仁が儚い抵抗をするのを、望はせせら笑った。
「駄目だ。あなたは俺を拒むことはできない。あなたは俺の‶贄〟なのだから」
仁は苦しげに眉を寄せるが、目には諦めと絶望がこもっている。
「ほら。今度は四つん這いになって……、いや、四つん這いになれよ」
「ああ……!」
仁は細い両手で顔をおおう。
それでも抗うことはできないようで、おずおずと言われたとおりの姿勢を取り、望を喜ばせた。
白い肌がぬめるように薄暗い世界のなかで白くほんのり光る。廃水のなかにあっても真珠は光るものだと教えられたようだ。
しなやかな仁の裸体を眺めて望は感嘆し、身をかがめて仁の尻にやさしく接吻を落とす。
「きれいだ……」
その声に仁は恥じ入るように四肢をふるわせる。
「ほら、」
望は、せかすように右の尻たぶを叩いた。
「うう……」
ここ数日で、どうするかは仁に教え込んである。
屈辱に震えながらも、仁は左脚をやや上げ、望のこのむ格好をする。
宴の席で強いた、犬が小用を足すときの姿勢だ。
望は舌なめずりしながら、目の前で誇り高い男が死ぬほど恥ずかしい行為をしているのを見つめていた。
1
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる