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泥色の夏 一
しおりを挟むその年の夏は、望にとっては特別な季節となった。
誰にとってもひとつの季節は特別なものなのだろうし、十代の少年ならその後の人生を変えるような意味を持つ場合もあるが、望にとってはこの夏は、ことさら特別なものだった。
世の中は大きく変わりはじめていたが、そのことを大勢の人は知らないままに、いつもの夏のようにひたすら暑がり、汗をながし、木陰に涼をもとめたり西瓜や氷菓などを味わい、暑さに愚痴をいいながらも、花火や海水浴など夏の醍醐味をたのしみ、そうして季節は過ぎていっていた。
相馬望の夏の一日も、過ぎていく。
「はぁっ……」
仁の白い肉体が、波間から浮きあがった人魚のように、閉ざされた和室の薄闇のなかでしなり、あえぐ。
望は仁の股間に顔をうずめていた。
八畳の広い和室も、閉め切っているせいで男二人の体温でいっそう熱がこもって暑い。二人ともほとんどむきだしの身体に汗をはりつかせている。
「ううっ……! うう……」
四肢を突っ張るようにして、かすかに左脚を曲げて身をよじり、迫りくる快楽にあらがい、すこしでも己を手放す瞬間を伸ばそうともがく仁の姿を直接見れないのが望には物足りない。
(今度、勇叔父にたのんで写真を撮ってもらおうかな)
そういういかがわしい場面を撮る専門の写真屋、もしくは裏稼業でそういうものも取る写真屋がいると聞いたことがある。
もちろん仁は嫌がるだろうが、かまわない。嫌がって泣くなら、その姿もぜひ写真に収めて楽しむつもりだ。それをあとで仁に見せてやったら、仁はますます嫌がるだろう。そして、望はますます楽しくなる。
そんなことばかりを考えるように、望はなっていた。
仁の繊細な中心を口にほおばりながら、ときに口をはなし、舌で裏側を舐めあげる。すると、仁はまさに犯される女のような悲痛な声をあげる。
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