昭和幻想鬼譚

文月 沙織

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泥色の夏 三

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 もちろんこの姿勢を強要すると仁は嫌がってかなり抗ったが、情交の終わりには、かならずこの格好で終わるように力ずくで教えこんだのだ。最初の夜は勇が手伝い、その後は牛雄を呼びよせ、手伝わせた。牛雄の助勢は、仁にはかなりこたえたようだ。
 気位たかい仁にとって、牛雄のような野人に自由をうばわれ、恥ずかしい姿を見られることは耐えられないようだ。最初に牛雄に組み伏せられたときの仁の驚愕ぶりは、さすがの望もあとで少し後ろめたくなった。
 だが、屈辱にもだえればもだえるほど仁の美は増すので、その美しい姿を見るために望は悪魔に魂を売った。
 牛雄を呼ぶと脅すだけで仁は屈辱に震えながらもみずから服を脱ぎ、望に命じられるままに辛い行為をするまでになった。
 今も――。
「ううっ……うっ……! くぅ……!」
 苦悶の呻き声をあげながら、仁は片足を取られた不安定な体勢で望を受けいれる。
 望は仁の身体を侵略していた。
 少年の欲望と本能のままに、禁忌の行為に没頭する。もはやためらいはない。
「ほら、」
 せかすように言うと、仁が首を横に振るのがわかる。
 笑いながら、望はさらに言う。
「ほら! 遂けよ」
 わざと乱暴な言葉をつかってみた。仁の嗚咽が耳に甘く響いてくる。
 腰をさらに激しくうちつける。
 だが、どれほど痛めつけられても、仁は強情で頑固なところがある。
 それが意地となって、仁をぎりぎりまで反抗させるのだろう。
「ほら、強情はらずに、さっさと遂けよ。遂けったら!」
 今度は臀部をはつってやる。
 パシン、と小気味よい音がした。
「ああっ、ああっ、あっ、あっ」
 しばしの攻防戦の果てに、仁は降伏するしかない状況まで昇りつめていた。
「はぁっ――」
 ひときわ高い声をあげ、仁はあられもなく弾けた。
 そんな仁の無様な様子を見つめ、自分の口からもれる笑い声を望は他人の声のように聞いていた。
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