マジメ御曹司を腐の沼に引き摺り込んだつもりが恋に堕ちていました

田沢みん

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21、予期せぬ再会

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 待ちに待った金曜日。
 その日は仕事が終わってから透がアパートまで迎えに来てくれて、一緒にタクシーで彼のアパートまで向かった。


 ロングアイランドシティの透の職場から約18分。
 マンハッタンのミッドタウンイーストでひときわ目立つ48階建ての建物の30階に彼は住んでいた。

 位置関係で言うと、東から順に、クインパスの入っているビル、朝哉夫妻のペントハウス、ヨーコのアパート、透のアパート、そしてクインパス研究開発センターと工場……という並びになる。

ーーワオ……想像以上にハイセンス!

 朝哉の住んでいる建物も豪華だったけれど、こちらも負けず劣らず高級感に溢れている。

 24時間常駐のドアマンとコンシェルジュは勿論、ルーフトップのプールにフィットネスセンター。
 天井までの高さの大きなガラス窓に囲まれたラウンジは、まるで天空に浮かんでいるみたい。
 眼下に広がる光の絨毯を見つめていると、このままスッと吸い込まれて行くような感覚に陥ってしまう。


 クインパスの社員は交通費と住居手当が支給されているけれど、住居は家族の人数や役職に応じて支給金額が決まっている。
 それだけではここまでのアパートを借りられないはずだから、差額分を自己負担しているということになる。

 透がそれなりの蓄えがあると言っていたのは、あながち嘘ではないのだろう。


 建物の中を一通り案内されてから部屋に入ると、表の通りのデリで買ってきた惣菜で簡単に夕食を済ませた。
 透が「料理する時間が勿体ない」と言い張ったからだ。

 ヨーコも数日ぶりに早く抱き合いたかったから、彼の意見に頷いた。


「シャワーを一緒に浴びない?」
「良いデス……ヨ」

 洗面台の前でお互い競うように服を脱がせあい、その場で激しく舌を絡ませ合った。
 数日ぶりのキスは甘くて濃厚で、頭の芯まで痺れさせた。
 一気に理性が失われて行く。

 明日は朝からデートの予定だから、セックスは1回で済ませて翌日に備えようと約束していたのだけれど……シャワールームで立ったまま素股で1回、浴槽で舌で1回イかされて、最後にベッドルームに運ばれた時には、既に身体中トロトロに蕩けさせられていた。

 それでもクイーンサイズのベッドで激しく愛されれば快感にうち震え、透をギュウッと締め付けた。
 細い声を上げて絶頂を迎えると、身も心も幸福感に満たされて、ピッタリと抱き合って眠ったのだった。



 土曜日は晴天で、澄み渡るマンハッタンの空の下、2人手を繋いで歩いた。
 タイムズスクエアで写真を撮りまくり、5thアベニューではハイブランドの店を見て回った。

「ついでに婚約指輪を買っちゃう?」

 ハリーウインストンの前で立ち止まって瞳を覗き込まれたけれど、それはまだ気が早いと断った。

 しばらくすると、

「本当にいらない? 婚約指輪が駄目なら結婚指輪を先に買っておく?」
「それこそ早すぎデスヨ!」

「だけど、何かヨーコが身につけるものを贈りたいんだ。俺の独占欲を満足させてよ」

 ワンコがクンクン甘えるように上目遣いで見つめられて、ヨーコが選んだのは日本のブランド、ミキモトだった。

 2人でソファーに座って紅茶を飲みながら選んだのは、ピンク真珠のピアスとペンダント。10ミリサイズだから存在感がある。
 アコヤ真珠の優しい丸みと柔らかい光沢。ヨーコはパールが大好きだ。

 透の母国であり、ヨーコにとっては第二の故郷。 彼からもらう初めての宝石が日本の品だったことが、とても誇らしく嬉しく思えた。

 遅めのお寿司ランチの後は、いよいよブロードウェイミュージカルの観劇だ……と歩き出した時……。


「えっ、ヨーコ?」

 たった今すれ違ったアメリカ人男性が、立ち止まって振り向いた。

ーーえっ?

 急に名前を呼ばれ、透と共に足を止める。
 こちらも振り返り、そして……。

「嘘……デショ……」


『俺の彼女なんだろ。ヤラせろよ』

『なんだよ、エロ本好きだって言うから簡単にヤらせてくれると思ったのに、騙されたよ』

『野郎同士のセックスなんてアブノーマルにも程があるだろ。何を今更清純ぶってるんだよ』


「イアン……どうして……」

 あの日の記憶が蘇り、目の前の景色がグラリと揺れた。
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