【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
26 / 46

第25話

しおりを挟む
「……笑えませんね。まさかこんなことをなさるとは…。」
「黙れ無能が。…っと、君の前で実の姉に向かってすまないミフェラ。」
「構いませんわ。お姉様が無能なのは事実ですもの。」


……色々と突っ込みどころ満載だが、ここは無視しておくのが良いだろう。
私より無能な人は貴方の隣に居ますよ、とは言えない。というか面倒なので言いたくはない。


「…それで、無能に何か用ですか?」
「ああ、そうだったな。先も言った通り、お前には私やミフェラの仕事を代わりにしてもらう。無能でもそれくらいは出来るだろう。」
「……先程は助力を願っていたのでは…。」
「何か言ったか?」
「いいえ何も。しかし本当によろしいのですか?」
「問題ないと言っている。」
「そうですか。」


王城に着けば、すぐにお義父様へ連絡がいくだろう。既に問題行動は起こしてくれているので、あとは時を待つのみだ。
今回のヴィアルスの行動は誘拐と同義。そして貴族だけでなく平民達もその瞬間を目撃している。噂が回るのはすぐだろう。ルーズフィルト公爵領だけではなく国内中に広まるはず。その前に国王陛下が手を打つかもしれないが…、その時はその時だ。


「着いたぞ。さっさと歩け!」
「……。」


扱いが奴隷のようだ…。
今は強気だが、私がルーズフィルト公爵様の義娘だと知った時、どのような反応をするのか楽しみだ。公爵令嬢を誘拐、それもルーズフィルト公爵様の義娘となれば、問題にならないはずがない。
そしてメアは今、公爵家の使用人達に伝えている頃だろう。


「この部屋で仕事をしておけ。生活も全てここでしろ。食事も持ってこさせるとしよう。」
「仕事は私が1日に2回、運びに来ますわ。お姉様は王城に居ないことになっていますから、私が全てしたということにしておきますわね。あ、それと…、今は私の方が身分が上なので敬語を使って下さいね?」
「……。」


どこまでいっても最低な妹である。私がした仕事を全て自分の手柄にし、信頼回復と評価の向上を狙っているのが見え見えだ。
それにこの部屋で生活も全てしろとは、軟禁して逃がさないつもりだろう。
とりあえず私は机に置かれた書類を片付けていく。1週間以上の量があるようだが、数時間あれば片付く。

終わった頃にミフェラが夕食を持って部屋に入ってきたと思えば、書類を回収して出ていった。
こんなことを続ければ、本当に評価が戻るとでも思っているのだろうか…。いや、思っているからこそやっているのだろう。


「計画通りに進めば、明日には公爵家に戻れるわね。それと同時にヴィアルスは……、ふふっ。楽しみね。……本当に、楽しみね──
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

あなたの妻にはなりません

風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。 彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。 幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。 彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。 悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。 彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。 あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。 悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。 「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

ここはあなたの家ではありません

風見ゆうみ
恋愛
「明日からミノスラード伯爵邸に住んでくれ」 婚約者にそう言われ、ミノスラード伯爵邸に行ってみたはいいものの、婚約者のケサス様は弟のランドリュー様に家督を譲渡し、子爵家の令嬢と駆け落ちしていた。 わたくしを家に呼んだのは、捨てられた令嬢として惨めな思いをさせるためだった。 実家から追い出されていたわたくしは、ランドリュー様の婚約者としてミノスラード伯爵邸で暮らし始める。 そんなある日、駆け落ちした令嬢と破局したケサス様から家に戻りたいと連絡があり―― そんな人を家に入れてあげる必要はないわよね? ※誤字脱字など見直しているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

父の後妻に婚約者を盗られたようです。

和泉 凪紗
恋愛
 男爵令嬢のアルティナは跡取り娘。素敵な婚約者もいて結婚を待ち遠しく思っている。婚約者のユーシスは最近忙しいとあまり会いに来てくれなくなってしまった。たまに届く手紙を楽しみに待つ日々だ。  そんなある日、父親に弟か妹ができたと嬉しそうに告げられる。父親と後妻の間に子供ができたらしい。  お義母様、お腹の子はいったい誰の子ですか?

どうでもいいですけどね

志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」 ‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。 まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。 思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。

処理中です...