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第26話
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翌日の正午過ぎ。私が仕事を片付け、することも無く部屋にあった本を読んでいると、部屋の外から声が聞こえた。
「おやミフェラさん。それは誰の食事ですか?」
「る、ルーズフィルト公爵様…。」
流石はお義父様、もう私の居場所を知ったようだ。そしてタイミング悪くもミフェラが私の食事を持って来る時だった様子。ここはタイミングが良いと言うべきだろうか?
いずれにしろお義父様が来たので計画は次の段階に移る。
「そういえば、最近王太子殿下とミフェラさんが、私の領内で人を攫って行ったと風の噂で聞きましたが…。もしやその噂と関係があるのでは?」
最初からかなり攻めた質問だ。ミフェラは挙動不審になっている。
「え…。ど、何処からそのような噂が…!?」
「誰が言っていたかは知りませんが、既に王国内全ての人が知っていると思いますよ。」
お義父様は私が聞こえていると知った上で話している、私にはそう分かった。
そしてこの言葉が真実であることも…。
私は足枷につながれ、この部屋から出られないようになっている。部屋の扉にも手が触れられない。鍵もかかっているようなので、ヴィアルスがミフェラにしか開けられないだろう。それも全てお義父様は考慮している様子だ。
「それはそうと、最初の質問に戻りますがそれは誰の食事ですか?」
「こ…これは……。」
「あの部屋に持っていこうとしていましたね。閉じ込めたいほど好きな方でもいるのですか?」
「いえ、そういうわけでは…。」
「ならば私が食事を持っていましょう。その間に部屋を開けて下さい。」
「あ、あのっ、ちょっ……。」
「どうぞ開けてください。」
そんな会話が聞こえたと同時に、部屋の扉が開かれた。
自身より身分が高い者に持っていたものを持たせた挙句、扉を開けずに待たせるというのはかなり無礼な行為だ。さすがのミフェラでもそれは理解しているようで、仕方なく開けたと顔に書いている。
一方のお義父様は、目を合わせて笑いかけてきた。様々なことへの安堵が入り交じっているような笑顔だ。
「おと……、ルーズフィルト公爵様。」
「レイシアさん。何故こんな所にいるのですか?」
「それは……」
「わわ、私が隠していたのですっ!平民になったお姉様が心配で、どうすれば良いかとヴィアルス様に相談したら、王城で働かせてやると言って下さって……それで…。」
「確かに、平民は余程の事情がなければ王城に入ることすら許されていないので、レイシアさんをここに匿っていたというのは納得がいきます。」
ミフェラの咄嗟の嘘にしては上手かった。お義父様も言っている通り、この説明が本当ならば納得がいく。そう、本当ならば……。
何をどう考えてもミフェラが嘘を吐いていることに変わりはない。それに何も知らない者だったとしても、ヴィアルスの名を出したのは失策だろう。禁止事項に王太子が関わっていると言っているようなものなのだから。
「姉を心配する妹の気持ち、ご理解くださったようで……」
「ですが、」
「っ…!」
「貴女が問題行動を起こしていることに変わりはありません。足枷を見れば匿っていたと言うことが嘘だと分かります。それにヴィアルス殿下も関わっているとか…。」
「そ、それは!」
必死に言い訳を考えている様子のミフェラ。
今更無駄なことだ。既に計画も最終段階に進んでいる。
「まぁ今回は平民を王城に無断で入れていたということが問題ではないのですがね。」
「……どういう…ことですか……?」
「そのうち分かりますよ。さぁ行きますよレーア。ミフェラさんもついてきてください。」
「え…、今……レーアって…。」
違和感に気付いた様だが、愛称で呼ばれていることに気付かぬ者の方がおかしいだろう。
今は熟考し、後に私と公爵様の関係を知った時に絶望すればいい。1番地獄に落ちて欲しいのはヴィアルスだが、その次はミフェラだ。
使用人達の為にもユシェナート侯爵家を没落させる気はないが、信用は落とさせてもらう。それによって使用人達にも害が及ぶのであれば、その時にどうにかしよう。
ヴィアルス、ミフェラ、ユシェナート侯爵と侯爵夫人、私の獲物はこの4人だ。
私を散々貶めてきた者には、地獄を見てもらう──
「おやミフェラさん。それは誰の食事ですか?」
「る、ルーズフィルト公爵様…。」
流石はお義父様、もう私の居場所を知ったようだ。そしてタイミング悪くもミフェラが私の食事を持って来る時だった様子。ここはタイミングが良いと言うべきだろうか?
いずれにしろお義父様が来たので計画は次の段階に移る。
「そういえば、最近王太子殿下とミフェラさんが、私の領内で人を攫って行ったと風の噂で聞きましたが…。もしやその噂と関係があるのでは?」
最初からかなり攻めた質問だ。ミフェラは挙動不審になっている。
「え…。ど、何処からそのような噂が…!?」
「誰が言っていたかは知りませんが、既に王国内全ての人が知っていると思いますよ。」
お義父様は私が聞こえていると知った上で話している、私にはそう分かった。
そしてこの言葉が真実であることも…。
私は足枷につながれ、この部屋から出られないようになっている。部屋の扉にも手が触れられない。鍵もかかっているようなので、ヴィアルスがミフェラにしか開けられないだろう。それも全てお義父様は考慮している様子だ。
「それはそうと、最初の質問に戻りますがそれは誰の食事ですか?」
「こ…これは……。」
「あの部屋に持っていこうとしていましたね。閉じ込めたいほど好きな方でもいるのですか?」
「いえ、そういうわけでは…。」
「ならば私が食事を持っていましょう。その間に部屋を開けて下さい。」
「あ、あのっ、ちょっ……。」
「どうぞ開けてください。」
そんな会話が聞こえたと同時に、部屋の扉が開かれた。
自身より身分が高い者に持っていたものを持たせた挙句、扉を開けずに待たせるというのはかなり無礼な行為だ。さすがのミフェラでもそれは理解しているようで、仕方なく開けたと顔に書いている。
一方のお義父様は、目を合わせて笑いかけてきた。様々なことへの安堵が入り交じっているような笑顔だ。
「おと……、ルーズフィルト公爵様。」
「レイシアさん。何故こんな所にいるのですか?」
「それは……」
「わわ、私が隠していたのですっ!平民になったお姉様が心配で、どうすれば良いかとヴィアルス様に相談したら、王城で働かせてやると言って下さって……それで…。」
「確かに、平民は余程の事情がなければ王城に入ることすら許されていないので、レイシアさんをここに匿っていたというのは納得がいきます。」
ミフェラの咄嗟の嘘にしては上手かった。お義父様も言っている通り、この説明が本当ならば納得がいく。そう、本当ならば……。
何をどう考えてもミフェラが嘘を吐いていることに変わりはない。それに何も知らない者だったとしても、ヴィアルスの名を出したのは失策だろう。禁止事項に王太子が関わっていると言っているようなものなのだから。
「姉を心配する妹の気持ち、ご理解くださったようで……」
「ですが、」
「っ…!」
「貴女が問題行動を起こしていることに変わりはありません。足枷を見れば匿っていたと言うことが嘘だと分かります。それにヴィアルス殿下も関わっているとか…。」
「そ、それは!」
必死に言い訳を考えている様子のミフェラ。
今更無駄なことだ。既に計画も最終段階に進んでいる。
「まぁ今回は平民を王城に無断で入れていたということが問題ではないのですがね。」
「……どういう…ことですか……?」
「そのうち分かりますよ。さぁ行きますよレーア。ミフェラさんもついてきてください。」
「え…、今……レーアって…。」
違和感に気付いた様だが、愛称で呼ばれていることに気付かぬ者の方がおかしいだろう。
今は熟考し、後に私と公爵様の関係を知った時に絶望すればいい。1番地獄に落ちて欲しいのはヴィアルスだが、その次はミフェラだ。
使用人達の為にもユシェナート侯爵家を没落させる気はないが、信用は落とさせてもらう。それによって使用人達にも害が及ぶのであれば、その時にどうにかしよう。
ヴィアルス、ミフェラ、ユシェナート侯爵と侯爵夫人、私の獲物はこの4人だ。
私を散々貶めてきた者には、地獄を見てもらう──
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