アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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165話 陣痛

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 身重のため、ナルガは現在全ての仕事を止めている。
 と言うより、仕事をしようとすると周囲が止めてくるのだ。ハローはともかく、ミコとリナルドにまで両手を広げられては、ナルガと言えど黙らざるを得ない。

『なんかあったらすぐに僕を呼べ、夜中だろうが飛んで行ってやる』

 とはエドウィンの弁だ。怠けているようで心苦しいものの、周りが協力的だと安心するのもまた事実。それに、

「ナルガ! 一旦戻って来たよ!」
「お前な、仕事はどうした」
 こんな感じに、ハローが頻繁に村と仕事場を往復してどうしようもないため、ナルガは無理せず、静かに過ごしていた。

 ……まぁ、愛されていると思うべきか。
 心配性な夫と義息子に苦笑し、夕飯の献立でも考える事にした。
 でもって、夕飯の後。ハローは難しい顔で座り込み、紙とにらめっこしていた。

「お父さん、何してるの?」
「子供の名前を考えてるんだけど……中々いいのが浮かばなくてね」
「男か女かもわからんのだぞ」

「だから両方考えてるんだ。男の子だったら逞しく、女の子だったら美しく育ってほしいからね。あーでも、男の子はともかく、女の子だと反抗期になったら……お父さんを遠ざけるようになるんだろうか。想像したら気が重くなるな……」

 未来を想って落ち込むハローに、ナルガとリナルドは呆れた。誰よりも子供を待ち望んでいるのはいいけれど。
 ハローは一旦切り上げ、リナルドを膝に乗せた。暫し父子でじゃれあっていると、リナルドが言った。

「ねぇお母さん、なんでお父さんと結婚したの?」
「どうした急に?」
「お父さんは毎日お母さんが好きって言ってるけど、お母さんは言わないから。お父さんの事、お母さんは好き?」

 確かに、ナルガはあまり人前でハローへの好意を示さない。リナルドが疑問に思うのもむべなるかな。
 ハローも緊張の面持ちで答えを待っている。ナルガは唇に指を当てると、優しく微笑んだ。

「ああ、好きだ。私の傍に居て、見ていてくれる。共に居てほっと出来る所に惹かれたんだ」
「ほっとするの?」
「そうだ。こんな答えでどうだ?」
「俺もほっとしたよ」

 ふにゃりとしたハローにナルガは肩を竦めた。途端、腹部が痛み出した。
 どんどん痛みが強くなってくる。この感覚、まさか。

「は、ハロー……エドを、呼んでくれ……どうやら、来たようだ……!」
「え、陣痛来たの!? 大変だ! リナルド、母さん頼む! エドーっ! ナルガが! ナルガがーっ!」

 ハローは大急ぎで飛び出し、エドウィンの下へ向かった。
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