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3部
166話 アマト
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エドウィンの適切な処置もあり、母子ともに予後は順調だった。
翌朝。エドウィンの健康診断を終えた赤子は、ナルガの腕ですやすやと眠っている。ハローはリナルドを抱え、ふやけた顔で家族を眺めていた。
「子供を抱いた女性って、なんで綺麗なんだろな。それがナルガともなると……女神が顕現したみたいだ」
「気色悪いから口閉じろアンポンタン。にしても中々がっちりした赤ん坊だ、体にも特段問題ないし、健康優良児だよ」
「なによりな知らせだ。重ね重ね、世話になるな」
「いえいえ、今後も何かありましたら、お気軽にお問い合わせください」
「なんでミネバが答えるんだよ」
エドウィンは口を尖らせた。そしたら、赤子がぐずり始める。
「腹空かせたのかもな。ミネバ任せた、おら出てくぞアホ亭主」
「え、なんで?」
「授乳の時間だぞ、空気読め。いくら夫の前でも、真昼間から目の前で胸さらけ出すのは控えたいだろが」
「そっか、そうだよね。席外すよ」
「そうしてもらうと助かる」
ナルガはちょっと恥ずかしそうだ。ハローは時折デリカシーが無い。
外に待機している間、ハローはリナルドを背負ってくるくる歩き回った。リナルドはきゃっきゃと楽しんでいたが、思い出したようにハローの頭を叩いた。
「お父さん、赤ちゃんの名前どうするの?」
「忘れてた! どうしよ、何も思い浮かばないよ。……エド」
「僕に縋りつくんじゃないよノータリン。子供の名前くらい自分で考えろ、親が与える最初の誕生日プレゼントだぞ、そんな大事な物を他人任せにすんな」
「プレゼント……そうだよね、ちゃんと俺が決めないと」
ハローはリナルドを下ろし、目を閉じて考えた。
女の子らしくて、かつ誇らしく思える名前。なけなしの知識を総動員して、ある名前がひらめいた。
「これだ! 早速ナルガに」
「まだ授乳中だろが」
エドウィンに首根っこを掴まれ、ハローは盛大に転んだ。前よりエドウィンの腕力が強くなってる。
「筋肉ついたね」
「ずっと鍛えてるからな、お前に比べれば物凄く非力だけどよ」
「こりゃ、頼もしいお父さんになれそうだ」
「なんなきゃダメなんだよ。さて、ミネバ! 終わったか?」
「ええ、丁度今。入っても大丈夫ですよ」
ハローはすぐに駆け込んだ。ナルガは赤子に指を握らせ、鼻歌を歌っていた。
見惚れつつも、ハローはナルガに「名前が決まった」と伝えた。
「アマト、それがこの子の名前だよ」
「良い名だ、意味を教えてくれるか?」
「光の神様の名前だよ。この子は俺達の光だからね、ぴったりな名前だと思うんだけど」
「ふふ、大きな名だな。だが悪くない」
ナルガも気に入ってくれたようで、ハローは満足だ。
アマト・マンチェスター。二人は赤子の名を呼び、未来に思いを馳せた。
翌朝。エドウィンの健康診断を終えた赤子は、ナルガの腕ですやすやと眠っている。ハローはリナルドを抱え、ふやけた顔で家族を眺めていた。
「子供を抱いた女性って、なんで綺麗なんだろな。それがナルガともなると……女神が顕現したみたいだ」
「気色悪いから口閉じろアンポンタン。にしても中々がっちりした赤ん坊だ、体にも特段問題ないし、健康優良児だよ」
「なによりな知らせだ。重ね重ね、世話になるな」
「いえいえ、今後も何かありましたら、お気軽にお問い合わせください」
「なんでミネバが答えるんだよ」
エドウィンは口を尖らせた。そしたら、赤子がぐずり始める。
「腹空かせたのかもな。ミネバ任せた、おら出てくぞアホ亭主」
「え、なんで?」
「授乳の時間だぞ、空気読め。いくら夫の前でも、真昼間から目の前で胸さらけ出すのは控えたいだろが」
「そっか、そうだよね。席外すよ」
「そうしてもらうと助かる」
ナルガはちょっと恥ずかしそうだ。ハローは時折デリカシーが無い。
外に待機している間、ハローはリナルドを背負ってくるくる歩き回った。リナルドはきゃっきゃと楽しんでいたが、思い出したようにハローの頭を叩いた。
「お父さん、赤ちゃんの名前どうするの?」
「忘れてた! どうしよ、何も思い浮かばないよ。……エド」
「僕に縋りつくんじゃないよノータリン。子供の名前くらい自分で考えろ、親が与える最初の誕生日プレゼントだぞ、そんな大事な物を他人任せにすんな」
「プレゼント……そうだよね、ちゃんと俺が決めないと」
ハローはリナルドを下ろし、目を閉じて考えた。
女の子らしくて、かつ誇らしく思える名前。なけなしの知識を総動員して、ある名前がひらめいた。
「これだ! 早速ナルガに」
「まだ授乳中だろが」
エドウィンに首根っこを掴まれ、ハローは盛大に転んだ。前よりエドウィンの腕力が強くなってる。
「筋肉ついたね」
「ずっと鍛えてるからな、お前に比べれば物凄く非力だけどよ」
「こりゃ、頼もしいお父さんになれそうだ」
「なんなきゃダメなんだよ。さて、ミネバ! 終わったか?」
「ええ、丁度今。入っても大丈夫ですよ」
ハローはすぐに駆け込んだ。ナルガは赤子に指を握らせ、鼻歌を歌っていた。
見惚れつつも、ハローはナルガに「名前が決まった」と伝えた。
「アマト、それがこの子の名前だよ」
「良い名だ、意味を教えてくれるか?」
「光の神様の名前だよ。この子は俺達の光だからね、ぴったりな名前だと思うんだけど」
「ふふ、大きな名だな。だが悪くない」
ナルガも気に入ってくれたようで、ハローは満足だ。
アマト・マンチェスター。二人は赤子の名を呼び、未来に思いを馳せた。
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