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2部
129話 姉
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ナルガが妊娠してから、ハローの生活はより鮮やかになっていた。
家事の殆どをこなし、仕事の成果も向上して、家族サービスも欠かさない。生まれてくる新しい家族のために、それはもう駆けずり回っていた。
「おいハロー、そんなに張り切ってはバテるぞ。まだ腹が膨らんでいないから、家事くらい出来る」
「全っ然バテないよ、むしろ楽しくて仕方ないんだ。それに……旦那として嫁に恰好つけたいし。妻にはモテたいんだ」
「お前な……もういい好きにしろ、だが多少は仕事を寄越してもらうぞ」
ナルガは物凄く照れていた。妊娠をきっかけに、二人の仲はより深まっていた。
加えて、リナルドへ向けられる愛情も、より大きな物になっていた。
ハローは毎日リナルドを抱きしめ、抱っこして、時間が空いたら遊び相手を務めた。ナルガもリナルドへの愛情表現を欠かさず行っていて、リナルドは幸せで溺れそうになっていた。
同時に、こんなに幸せでいいのだろうかと、リナルドは不安を感じていた。
自分が幸せを感じる度に、少女の顔が浮かんでくる。名前を知らない少女を思い浮かべる度に、大きな罪悪感が湧き出てくるのだ。
僕だけが幸せになるなんて許されない。罪悪感のせいで、未だに笑う事も出来ない。
いつも遊んでくれるミコにも、優しくしてくれるハローとナルガにも、申し訳なくて胸が苦しくなる。幸せが苦痛になって、リナルドは少しずつ追い詰められていた。
ハローとナルガが忙しい隙に、一人で木の下に座り込み、あの少女に思いを馳せる。リナルドにとって大事な人のはずなのに、思い出そうとすると強い拒否反応が出てしまう。
「誰なんだろ……あの人……」
「あの人って?」
ミコに顔を覗き込まれ、リナルドはびっくりした。
「なんでもないよ、ミコもどうしたの?」
「リナルドを探しに来たの! アリスが美味しいの作ったから呼んでこいって!」
どうやらミコは、昼食時に遊びに来たようだ。ミコはリナルドの手を取って、ぐいぐい引っ張ってくる。勢いが良すぎて、リナルドは転んでしまった。
その拍子に、手が離れた。
『やだ! やだ! やめて! リナルドを返して!』
そしたら、あの少女の声が響いた。
脳裏に、少女の顔が浮かんでくる。いつも優しく微笑んでいたはずの少女は、泣いていた。屈強な兵士に腕を掴まれて、身動きが取れずにいる。
リナルドは必死に少女へ腕を伸ばして、助けを求めていた。でも、僕はこの後……この後……!
「あ……うあ……やだ……やだ! やだぁぁぁぁぁっ!」
リナルドは頭を抱え、悲鳴を上げた。体中が痛くなって、リナルドは悶絶し、激しく嘔吐した。
「リナルド? リナルド!? アリス! リナルドが大変!」
「何? おい、おいリナルド!?」
ナルガが駆け付け、抱き上げた。リナルドは泡をふいて痙攣し、
「たす、け……て……おね……ちゃ……」
気を失った。
家事の殆どをこなし、仕事の成果も向上して、家族サービスも欠かさない。生まれてくる新しい家族のために、それはもう駆けずり回っていた。
「おいハロー、そんなに張り切ってはバテるぞ。まだ腹が膨らんでいないから、家事くらい出来る」
「全っ然バテないよ、むしろ楽しくて仕方ないんだ。それに……旦那として嫁に恰好つけたいし。妻にはモテたいんだ」
「お前な……もういい好きにしろ、だが多少は仕事を寄越してもらうぞ」
ナルガは物凄く照れていた。妊娠をきっかけに、二人の仲はより深まっていた。
加えて、リナルドへ向けられる愛情も、より大きな物になっていた。
ハローは毎日リナルドを抱きしめ、抱っこして、時間が空いたら遊び相手を務めた。ナルガもリナルドへの愛情表現を欠かさず行っていて、リナルドは幸せで溺れそうになっていた。
同時に、こんなに幸せでいいのだろうかと、リナルドは不安を感じていた。
自分が幸せを感じる度に、少女の顔が浮かんでくる。名前を知らない少女を思い浮かべる度に、大きな罪悪感が湧き出てくるのだ。
僕だけが幸せになるなんて許されない。罪悪感のせいで、未だに笑う事も出来ない。
いつも遊んでくれるミコにも、優しくしてくれるハローとナルガにも、申し訳なくて胸が苦しくなる。幸せが苦痛になって、リナルドは少しずつ追い詰められていた。
ハローとナルガが忙しい隙に、一人で木の下に座り込み、あの少女に思いを馳せる。リナルドにとって大事な人のはずなのに、思い出そうとすると強い拒否反応が出てしまう。
「誰なんだろ……あの人……」
「あの人って?」
ミコに顔を覗き込まれ、リナルドはびっくりした。
「なんでもないよ、ミコもどうしたの?」
「リナルドを探しに来たの! アリスが美味しいの作ったから呼んでこいって!」
どうやらミコは、昼食時に遊びに来たようだ。ミコはリナルドの手を取って、ぐいぐい引っ張ってくる。勢いが良すぎて、リナルドは転んでしまった。
その拍子に、手が離れた。
『やだ! やだ! やめて! リナルドを返して!』
そしたら、あの少女の声が響いた。
脳裏に、少女の顔が浮かんでくる。いつも優しく微笑んでいたはずの少女は、泣いていた。屈強な兵士に腕を掴まれて、身動きが取れずにいる。
リナルドは必死に少女へ腕を伸ばして、助けを求めていた。でも、僕はこの後……この後……!
「あ……うあ……やだ……やだ! やだぁぁぁぁぁっ!」
リナルドは頭を抱え、悲鳴を上げた。体中が痛くなって、リナルドは悶絶し、激しく嘔吐した。
「リナルド? リナルド!? アリス! リナルドが大変!」
「何? おい、おいリナルド!?」
ナルガが駆け付け、抱き上げた。リナルドは泡をふいて痙攣し、
「たす、け……て……おね……ちゃ……」
気を失った。
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