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2部
128話 姉弟剣
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満月の夜が明ける頃、オクトは都で一番の鍛冶師を訪ねていた。手に入れた刀身を調べて貰っていたのだ。
鍛冶師に結果を聞いてみると、彼はぼりぼり後頭部を掻き、
「勇者様、どこでこんな物を拾ったんです? 大したもんですよこいつは」
「と言いますと?」
「この剣に使われてるのは、今じゃ加工どころか製造すら出来ない超特殊金属ですよ。これが使われてる製品は世界にたった一つしかないです」
「……それは」
「勇者様の聖剣ですね」
やはりそうか。オクトは顔をしかめた。
「こいつには魔力を貯蔵する性質がありまして、聖剣には光の魔力が宿っていますが、この剣にはどうも闇の魔力が宿っていたみたいですね。それも超高濃度の魔力が」
高濃度の闇の魔力。やはりこの刀身は、リナルドが持っていた剣の一部で間違いない。
「聖剣との関係は、分かりますか?」
「調べた感じ、聖剣と繋がっているのは確かのようですな。どうやらどんなに離れていても、魔力を相互に供給できる術式が込められていたようです」
「なんでそんな術式が?」
「憶測になってしまいますが……この剣は、バランスをとるための物だったんじゃないですかね。何しろ聖剣に込められた魔力は凄まじくて、ちょっとでも扱いを誤れば暴発する危険がある代物です。そこで二振りの剣をリンクさせて、対となる魔力を宿して循環させる事で、剣の力を安定させていた。そんな所でしょうかね」
「成程……参考にさせていただきます。この件、他言無用でお願いしますよ」
「承知しました、まぁまぁの額も頂きましたしね。勇者様のお役に立てたのなら光栄です」
鍛冶場を後にし、オクトは自宅に戻った。
遺跡で得た手記に書かれていた通り、折れた剣は、聖剣の力を安定させるために造られた、対となる剣だ。
最悪の答え合わせにオクトは青ざめる。手記を開き、狂人が編み出した最悪の製法をおさらいした。
「“武具に魂を宿す事で魔力を安定させる事は出来た、しかし今度は魔力が膨大になりすぎて、溢れた魔力によって武具自体が自爆してしまう事態が起きてしまった。そこで、対となる力を持った武具を別途用意し、リンクさせて余剰魔力を循環させる。さすれば武具から魔力が溢れなくなり、力を留められる”」
昨日、解読できた所だ。鍛冶師が調べた、聖剣と刀身の関係性とも合致している。この錬金術師が造っていたのは、オクトの剣とリナルドの剣……。
「“光の剣は「聖剣」、闇の剣は「魔剣」と名付けよう。二振りの剣を繋ぐには、同じ血を引く魂の持ち主、つまり兄弟か姉妹が望ましい。特に男女の血縁者ならばなおの事良い。幸いにも、人売りから都合の良い検体を手に出来た。同調をより促すために、検体に苦痛を与えよう。苦痛を通して両者の繋がりをより深い物へと昇華させ、同時に剣の核となる、無尽機関も体に埋め込むとしよう”……!」
おぞましい実験が綴られた、狂気の文章の先に記された名を、オクトは震える指でなぞった。
「“副作用で自我が、剣に意志が宿るやもしれぬが……武具の完成に比べれば些末事だ……まずは試験として、魔剣を造るとしよう。こいつに宿すは男の検体、名前は……”」
名前は……リナルド。齢五つの幼子だ。
鍛冶師に結果を聞いてみると、彼はぼりぼり後頭部を掻き、
「勇者様、どこでこんな物を拾ったんです? 大したもんですよこいつは」
「と言いますと?」
「この剣に使われてるのは、今じゃ加工どころか製造すら出来ない超特殊金属ですよ。これが使われてる製品は世界にたった一つしかないです」
「……それは」
「勇者様の聖剣ですね」
やはりそうか。オクトは顔をしかめた。
「こいつには魔力を貯蔵する性質がありまして、聖剣には光の魔力が宿っていますが、この剣にはどうも闇の魔力が宿っていたみたいですね。それも超高濃度の魔力が」
高濃度の闇の魔力。やはりこの刀身は、リナルドが持っていた剣の一部で間違いない。
「聖剣との関係は、分かりますか?」
「調べた感じ、聖剣と繋がっているのは確かのようですな。どうやらどんなに離れていても、魔力を相互に供給できる術式が込められていたようです」
「なんでそんな術式が?」
「憶測になってしまいますが……この剣は、バランスをとるための物だったんじゃないですかね。何しろ聖剣に込められた魔力は凄まじくて、ちょっとでも扱いを誤れば暴発する危険がある代物です。そこで二振りの剣をリンクさせて、対となる魔力を宿して循環させる事で、剣の力を安定させていた。そんな所でしょうかね」
「成程……参考にさせていただきます。この件、他言無用でお願いしますよ」
「承知しました、まぁまぁの額も頂きましたしね。勇者様のお役に立てたのなら光栄です」
鍛冶場を後にし、オクトは自宅に戻った。
遺跡で得た手記に書かれていた通り、折れた剣は、聖剣の力を安定させるために造られた、対となる剣だ。
最悪の答え合わせにオクトは青ざめる。手記を開き、狂人が編み出した最悪の製法をおさらいした。
「“武具に魂を宿す事で魔力を安定させる事は出来た、しかし今度は魔力が膨大になりすぎて、溢れた魔力によって武具自体が自爆してしまう事態が起きてしまった。そこで、対となる力を持った武具を別途用意し、リンクさせて余剰魔力を循環させる。さすれば武具から魔力が溢れなくなり、力を留められる”」
昨日、解読できた所だ。鍛冶師が調べた、聖剣と刀身の関係性とも合致している。この錬金術師が造っていたのは、オクトの剣とリナルドの剣……。
「“光の剣は「聖剣」、闇の剣は「魔剣」と名付けよう。二振りの剣を繋ぐには、同じ血を引く魂の持ち主、つまり兄弟か姉妹が望ましい。特に男女の血縁者ならばなおの事良い。幸いにも、人売りから都合の良い検体を手に出来た。同調をより促すために、検体に苦痛を与えよう。苦痛を通して両者の繋がりをより深い物へと昇華させ、同時に剣の核となる、無尽機関も体に埋め込むとしよう”……!」
おぞましい実験が綴られた、狂気の文章の先に記された名を、オクトは震える指でなぞった。
「“副作用で自我が、剣に意志が宿るやもしれぬが……武具の完成に比べれば些末事だ……まずは試験として、魔剣を造るとしよう。こいつに宿すは男の検体、名前は……”」
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