アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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56話 満腹の獣

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 ぱちぱちと燃える焚火を前に、ウルチはほくそ笑んでいた。

 脱獄後、彼は鍛錬と人手の確保、情報収集を同時並行で行っていた。

 十年の獄中生活で鈍った体を鍛え直し、その過程で野盗を言葉巧みに仲間にし、情報屋を介してハローの事を探った。



 全盛期には遠く及ばないが、とりあえずハローと戦いになる程度にはキレが戻った。野盗どもはすっかりウルチに心酔し、忠誠を誓っている。ハローの居場所もとうに割れ、奴の事細かな状況を知る事が出来た。



 しかしまぁ、雑兵ばかりだな。



 脱獄の際に利用した兵士とはとうに別れている。王国兵や冒険者は厳正に管理されており、迂闊に使うと足が付いてしまうからだ。

 死人扱いされているのは、ウルチにとって最大のアドバンテージだ。それをむざむざ手放すなど愚かの極み。となれば使える手駒は、身分のない野盗どもに限られてしまう。



 幸い、野盗の中にはそれなりに腕の立つ者が居るし、雑魚にも使いようがある。ボードゲームだと思えばいい。駒を上手く動かせば、必ずやキングを討ち取れるのだ。

 焚火に枯れ枝を放り込み、ウルチは壊れた笑みを浮かべた。



「ハロー・マンチェスター……!」



 貴様には、死んだ方がましだと思う程の苦痛を与えてやる。

 ウルチの目的はハローを殺す事にあらず。ハローの心を壊し、再び地獄に落とす事。奴の心に絶望を刻み込み、二度と戻れぬ煉獄へ突き落してやろう。



「そのためならば、我が命すらくれてやる……貴様を堕とすのに我が命を捧げても、くかかっ、何も惜しくない、本望だ!」



 ウルチは立ち上がり、配下達に拳を振り上げた。



「我が同胞どもよ、決起の時だ! 我が悲願成就のために、うぬらの命を我に捧げよ!」



 配下達は杯を掲げ、契りの酒を酌み交わす。ウルチは満足げに目を細めて、大杯を飲み下した。
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