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45話 支離滅裂な光景
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日曜日になると、ラコ村の子供達は教会へ向かう。教会では週に一度、子供達に読み書きや計算を教える日曜学校を開くのだ。
ナルガはハローとエドウィンと連れ立って、子供達の引率をしていた。
この世界の識字率は低く、ハローの居る国も都市部を除くと自分の名前すら書けない大人が多数居る。そのため各地の教会が慈善活動の一環として実施しているのだ。
「中々いい仕組みが出来ているようだ」
ナルガは捨て子で、十歳までまともな教育を受けられなかったから、勉学のありがたみが良く分かる。勉学の機会があるだけ、ラコ村の子供達は恵まれているようだ。
「アリスといっしょだーうーれしいなー」
ミコはナルガの手を繋ぎ、ぶんぶん振り回している。ハローの惨劇を忘れているのは、運がいいと言うべきか。
「日曜学校は楽しいか?」
「うん! 他の村のね、お友達と遊べるから!」
「勉強も大事だけど、他の村との関係を作るのも大切だしね」
「この辺りの村は、それぞれで作れない農作物とか畜産物を交換して支え合ってるからな。関係がこじれれば途端に成り立たなくなる。教会はその橋渡しの役割も持ってるってわけ」
「なるほどな……ミコ、後ろに」
狼の魔物が近づいたのを見て、ナルガは睨みつけた。威圧感に負け、魔物は逃げていく。
教会までの道中で魔物が出てくる事もある。子供達を守るため、ハロー達のような護衛が必要なのだ。
「ラコ村は教会から一番近いから徒歩だけど、遠い所だと送迎の馬車を出してるんだ」
「馬車を出してでも勉学は受けるべきだ、教会は良く分かっているようだな」
ナルガはうんうんと頷いた。そうこうしている内に教会へ到着し、ミネバが出迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました。道中大丈夫でしたか?」
「問題ない。ほらミコ、行ってこい」
「じゃーねー!」
ミコが見えなくなるまで、ナルガは手を振り続けた。
日曜学校か、少し興味があるな。
「授業を見てみますか」
「いいのか? しかし、司祭に私の正体を勘ぐられないだろうか」
「平気だろ別に。僕らも居るし、何より「魔王四天王が辺境の日曜学校で子供達の勉強を見守る」なんて光景、誰が信じると思う?」
確かに、支離滅裂な絵面である。特にナルガは国内では、「冷酷無比な四天王」として知れ渡っている。こんな場所で慈善活動に励むなんて、誰が思うのか。
「それならば入らせてもらうぞ」
「勿論。どうぞこちらへ」
ミネバに案内され、ナルガは小走りに向かった。子供達はどのように励んでいるのだろう。
ナルガはハローとエドウィンと連れ立って、子供達の引率をしていた。
この世界の識字率は低く、ハローの居る国も都市部を除くと自分の名前すら書けない大人が多数居る。そのため各地の教会が慈善活動の一環として実施しているのだ。
「中々いい仕組みが出来ているようだ」
ナルガは捨て子で、十歳までまともな教育を受けられなかったから、勉学のありがたみが良く分かる。勉学の機会があるだけ、ラコ村の子供達は恵まれているようだ。
「アリスといっしょだーうーれしいなー」
ミコはナルガの手を繋ぎ、ぶんぶん振り回している。ハローの惨劇を忘れているのは、運がいいと言うべきか。
「日曜学校は楽しいか?」
「うん! 他の村のね、お友達と遊べるから!」
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「なるほどな……ミコ、後ろに」
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教会までの道中で魔物が出てくる事もある。子供達を守るため、ハロー達のような護衛が必要なのだ。
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「馬車を出してでも勉学は受けるべきだ、教会は良く分かっているようだな」
ナルガはうんうんと頷いた。そうこうしている内に教会へ到着し、ミネバが出迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました。道中大丈夫でしたか?」
「問題ない。ほらミコ、行ってこい」
「じゃーねー!」
ミコが見えなくなるまで、ナルガは手を振り続けた。
日曜学校か、少し興味があるな。
「授業を見てみますか」
「いいのか? しかし、司祭に私の正体を勘ぐられないだろうか」
「平気だろ別に。僕らも居るし、何より「魔王四天王が辺境の日曜学校で子供達の勉強を見守る」なんて光景、誰が信じると思う?」
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