アラサーでクビになった魔王四天王ですが勇者に「結婚しよ」と告白され、溺愛されてるので今は幸せです

歩く、歩く。

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46話 危険なアポイントメント

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 ミネバの指導の下、ミコ達は楽し気に授業を受けている。ナルガは目を細め、微笑ましく見守った。
 ハローも彼女の隣で見学しているが、視線はナルガに向かっていた。子供を前にしたナルガは、とても優しい顔をする。つい見入ってしまい、時折エドウィンに小突かれた。
 途中で司祭が様子を見に来たが、ナルガには気付かなかった。見学中の農婦が魔王四天王だなんて、夢にも思わないだろう。

 授業はつつがなく終了し、外へ出るなり子供達は思い思いに遊び始めた。
 ナルガもミコに手を引かれ、子供達に付き合っている。遠巻きに見ていたハローだが、子供達に誘われ参加することに。

「のどかだな」
「そうだな、平和なものだ。エドウィンは混ざらないのか」
「子守なんざごめんだよ。お前らで勝手にやってろぶっ」

 エドウィンの顔面に泥団子がぶつけられた。悪戯好きなガキ大将の仕業だ。

「……どこの村のクソガキだ、あぁん!?」
「わー鬼が来たー逃げろー!」

 エドウィンは怒って子供を追いかけまわしている。結局彼も子守に参加し、時間が過ぎていった。
 子供と過ごしていると、穏やかな気持ちになる。子供達が遊び疲れてくる頃、ミネバ達が昼食を用意してくれた。

「エドウィン様達もどうぞ。多めに作っていますから」
「ありがとう。ほらエド、機嫌直せよ」
「あのやろー……今度診察に来たら、泣く程苦い薬出してやる」
「子供相手だぞ、陰湿な仕返しはやめておけ」
「そうだぞエド、子供のやった事じゃないか」

 むくれるエドウィンをなだめながら、ハロー達は昼食にありつく。クリームシチューにパンを付けて食べると、柔らかな味がした。

「思えばミネバと食事を囲むのは初めてか」
「確かにそうですね。今日のお昼は私が用意したんですけど、いかがでしょう」
「悪くないな。私は好きだぞ」
「ありがとうございます!」

 ナルガとミネバは随分仲良くなっていた。ハローは小さく笑いながら、パンを齧った。

「ところで、もうそろそろシンギ市場へ向かう時期ですよね」
「ああ、うん。木材の乾燥も終わったしね。今回はミネバも一緒だったっけ」
「はい、物品の買い付けに。すみません、馬車に乗せていただいて」
「いいよ、いつも世話になってるしさ」
「まぁ、それだけじゃないんだがな」

 エドウィンは匙を置き、腕を組んだ。

「今回ミネバには、共犯者として来てもらう。厄介ごとを手伝ってくれた以上、彼女にも結末を知る権利があるからな」
「何を言ってるんだよエド?」
「結論から言うぞ、お前達に会わせたい奴が居る。特にナルガ、お前にとって大事な相手だ」
「王国兵にでも突き出すのか」
「逆だ。お前の指名手配を解けるかもしれない」

 ハローとナルガは息を呑んだ。

「ナルガにとっては酷な相手になる。だけど変な気を起こすなよ、少し我慢すれば、お前は自由の身になれるんだ」
「……一体誰だ。私の指名手配を解除できるほどの権限を持った者など、国の要職にでもついていない限り……」
「エド、まさかあいつか?」

 たった一人だけ、ハローは心当たりがあった。
 いつの間にあいつと連絡を取り合っていた? ナルガと会わせるには、あまりにも危険すぎる相手だ。

「二代目勇者、オクト・ペンタゴン。次のシンギ市場で、会う約束をした」
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