37 / 159
ヌーッティは背中で語りたい!
1.ヌーッティの悩み
しおりを挟む
最近、小熊の妖精ヌーッティはあるドラマにハマっている。そのドラマは「赤の眼のクマ」というタイトルで、森を放浪する孤高な主人公のクマのヨルマが様々な動物や人間たちからの依頼を請け負い、彼らの抱える問題を解決していくという物語である。タイトルは、ヨルマの身体的特徴である赤い眼から取って付けられた。そして、ヌーッティが最も惹かれたのはヨルマの持つ雰囲気であった。ヨルマは口数は少ないものの、依頼された仕事は見事に完遂させる。また、ヨルマが森の中、1人で酒を飲む場面をかっこいいと思ったヌーッティは、それを真似て、おやつのたびに黙ってミルクを飲むようになった。トゥーリとアキからは若干不気味がられていた。
そんなヌーッティがヨルマの行動で1番真似したいことがあった。それは、
「『クマなら黙って背中で語れ』っていう場面をヌーも再現したいヌー!」
アキの部屋の机の上にに座っているヌーッティは、真正面にいる赤リス姿の風の精霊アレクシに相談をした。
「唐突に一体何なんだい?」
アレクシはヌーッティに尋ねると、手に持っている冷凍のブルーベリーを一口かじった。
「ヌーも背中で何か語りたいヌー。でも、どうすればいいのかわからないから、かっこいいことを知ってそうなアレクシに相談してるヌー」
ヌーッティは真剣な面持ちであった。アレクシは口に含んだブルーベリーを飲み込む。
「人選は間違っていないね。ぼくを選んで正解さ。ところで、きみは『背中で語る』の意味を知っているのかい?」
アレクシはハンカチで手と長い髭を拭きながら尋ねた。
「わからないから訊いてるヌー。アレクシは知ってるヌー?」
首を傾げてヌーッティは尋ね返した。
「もちろん知っているさ。きみさえ良ければ、ぼくが手伝ってあげようか?」
それを聞いてヌーッティの顔がぱっと明るくなった。ヌーッティはアレクシの両手をがしっと取った。
「手伝って欲しいヌー!」
ヌーッティからの返答を聞いたアレクシはにやりと笑みを浮かべた。
「すぐに準備するからちょっと後ろを向いていてくれないかい?」
「了解ヌー!」
弾んだ声色で返事をしたヌーッティは、アレクシの指示通り、アレクシに背を向けた。するとアレクシは机の上を走り、材料を揃えた。
そして数分後。
アレクシは額の汗を左手の甲で拭うと、
「さあ、もういいよ。これできみも『背中で語るクマ』の仲間入りだ!」
ヌーッティの背中をぽんっと叩いた。
「ヌーは背中で語ってるヌー?」
頬を赤く染めながらヌーッティはアレクシに尋ねた。
「ああ、ものすごく語っている……ぷっ!」
アレクシが吹き出すように笑った。
「どうしたヌー?」
「ちょ、ちょっとした思い出し笑いさ。さあ、外を歩いておいで。周りから『あのクマ、背中で語っている!』って思われること間違いなしさ!」
ヌーッティは振り向きアレクシを見た。アレクシはお腹を抱えて笑い、悶えていた。それを見たヌーッティは不可思議に思ったが、今はそれよりも、
「出かけてくるヌー!」
背中で語るヌーッティ自身を見せたいがために、アレクシをその場に残し、部屋を出て行った。
階段を降り、廊下を走り、キッチンまでやって来るとヌーッティは中へ入った。そこには、小人の女の子トゥーリとオコジョ姿の雪の精霊リュリュが、キッチン中央の作業台の上で話をしていた。ヌーッティは何の言葉も発することなく、2人のいる作業台の上によじ登った。ヌーッティが2人に会おうとした理由は、もちろん背中で語っているヌーッティ自身を見せたいからであった。
「ヌーッティ、どうしたの?」
気づいたトゥーリがヌーッティに声をかけた。
「またお菓子のつまみ食いですか?」
リュリュが無言で横を通るヌーッティへ尋ねた。
ヌーッティは堂々とした歩みで2人のわきを通って、彼女たちに背中を見せた。
「あっ!」
2人の声が聞こえてヌーッティは笑みを浮かべた。心の中で喜びの声を上げるヌーッティの後ろで、トゥーリとリュリュは困惑の色を顔に浮かべていた。
そんなヌーッティがヨルマの行動で1番真似したいことがあった。それは、
「『クマなら黙って背中で語れ』っていう場面をヌーも再現したいヌー!」
アキの部屋の机の上にに座っているヌーッティは、真正面にいる赤リス姿の風の精霊アレクシに相談をした。
「唐突に一体何なんだい?」
アレクシはヌーッティに尋ねると、手に持っている冷凍のブルーベリーを一口かじった。
「ヌーも背中で何か語りたいヌー。でも、どうすればいいのかわからないから、かっこいいことを知ってそうなアレクシに相談してるヌー」
ヌーッティは真剣な面持ちであった。アレクシは口に含んだブルーベリーを飲み込む。
「人選は間違っていないね。ぼくを選んで正解さ。ところで、きみは『背中で語る』の意味を知っているのかい?」
アレクシはハンカチで手と長い髭を拭きながら尋ねた。
「わからないから訊いてるヌー。アレクシは知ってるヌー?」
首を傾げてヌーッティは尋ね返した。
「もちろん知っているさ。きみさえ良ければ、ぼくが手伝ってあげようか?」
それを聞いてヌーッティの顔がぱっと明るくなった。ヌーッティはアレクシの両手をがしっと取った。
「手伝って欲しいヌー!」
ヌーッティからの返答を聞いたアレクシはにやりと笑みを浮かべた。
「すぐに準備するからちょっと後ろを向いていてくれないかい?」
「了解ヌー!」
弾んだ声色で返事をしたヌーッティは、アレクシの指示通り、アレクシに背を向けた。するとアレクシは机の上を走り、材料を揃えた。
そして数分後。
アレクシは額の汗を左手の甲で拭うと、
「さあ、もういいよ。これできみも『背中で語るクマ』の仲間入りだ!」
ヌーッティの背中をぽんっと叩いた。
「ヌーは背中で語ってるヌー?」
頬を赤く染めながらヌーッティはアレクシに尋ねた。
「ああ、ものすごく語っている……ぷっ!」
アレクシが吹き出すように笑った。
「どうしたヌー?」
「ちょ、ちょっとした思い出し笑いさ。さあ、外を歩いておいで。周りから『あのクマ、背中で語っている!』って思われること間違いなしさ!」
ヌーッティは振り向きアレクシを見た。アレクシはお腹を抱えて笑い、悶えていた。それを見たヌーッティは不可思議に思ったが、今はそれよりも、
「出かけてくるヌー!」
背中で語るヌーッティ自身を見せたいがために、アレクシをその場に残し、部屋を出て行った。
階段を降り、廊下を走り、キッチンまでやって来るとヌーッティは中へ入った。そこには、小人の女の子トゥーリとオコジョ姿の雪の精霊リュリュが、キッチン中央の作業台の上で話をしていた。ヌーッティは何の言葉も発することなく、2人のいる作業台の上によじ登った。ヌーッティが2人に会おうとした理由は、もちろん背中で語っているヌーッティ自身を見せたいからであった。
「ヌーッティ、どうしたの?」
気づいたトゥーリがヌーッティに声をかけた。
「またお菓子のつまみ食いですか?」
リュリュが無言で横を通るヌーッティへ尋ねた。
ヌーッティは堂々とした歩みで2人のわきを通って、彼女たちに背中を見せた。
「あっ!」
2人の声が聞こえてヌーッティは笑みを浮かべた。心の中で喜びの声を上げるヌーッティの後ろで、トゥーリとリュリュは困惑の色を顔に浮かべていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
魔法少女はまだ翔べない
東 里胡
児童書・童話
第15回絵本・児童書大賞、奨励賞をいただきました、応援下さった皆様、ありがとうございます!
中学一年生のキラリが転校先で出会ったのは、キラという男の子。
キラキラコンビと名付けられた二人とクラスの仲間たちは、ケンカしたり和解をして絆を深め合うが、キラリはとある事情で一時的に転校してきただけ。
駄菓子屋を営む、おばあちゃんや仲間たちと過ごす海辺の町、ひと夏の思い出。
そこで知った自分の家にまつわる秘密にキラリも覚醒して……。
果たしてキラリの夏は、キラキラになるのか、それとも?
表紙はpixivてんぱる様にお借りしております。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
猫のお知らせ屋
もち雪
児童書・童話
神代神社に飼われている僕、猫の稲穂(いなほ)は、飼い主の瑞穂(みずほ)ちゃんの猫の(虫の)お知らせ屋になりました。
人間になった僕は、猫耳としっぽがあるからみずほちゃんのそばにいつもいられないけれど、あずき先輩と今日も誰かに為に走ってる。花火大会、お買い物、盆踊り毎日楽しい事がたくさんなのです!
そんな不思議な猫達の話どうぞよろしくお願いします
魔法のステッキ
ことは
児童書・童話
小学校5年生の中川美咲が今、夢中になっているもの。それはバトントワリングだ。
父親の転勤により、東京のバトン教室をやめなければならなくなった美咲。だが、転校先の小学校には、放課後のバトンクラブがあるという。
期待に胸を膨らませていた美咲だが、たった三人しかいないバトンクラブはつぶれる寸前。バトンの演技も、美咲が求めているようなレベルの高いものではなかった。
美咲は、バトンクラブのメンバーからの勧誘を断ろうとした。しかし、クラブのみんなから、バトンクラブの先生になってほしいとお願いされ……。
【表紙イラスト】ノーコピーライトガール様からお借りしました。
https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl
知ったかぶりのヤマネコと森の落としもの
あしたてレナ
児童書・童話
ある日、森で見つけた落としもの。
動物たちはそれがだれの落としものなのか話し合います。
さまざまな意見が出ましたが、きっとそれはお星さまの落としもの。
知ったかぶりのヤマネコとこわがりのネズミ、食いしんぼうのイノシシが、困難に立ち向かいながら星の元へと落としものをとどける旅に出ます。
全9話。
※初めての児童文学となりますゆえ、温かく見守っていただけましたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる