13 / 159
ヌーッティ危機一髪
2.あんこときなこ
しおりを挟む
ヌーッティは一人で月見団子を食べていた。
もぐもぐもぐもぐ食べている。
真っ白な団子はほんのりお餅の味がして素朴な旨味があった。ヌーッティはこの味が好きであった。ヌーッティは団子を絶えず両方の手で取り、片方ずつ口へと運ぶ。
そこへ丸い陶器の器を抱え持ったトゥーリが駆け寄って来た。
「ヌーッティ! あんこを持ってきたよ。こしあんだよ」
ヌーッティは食べる手を止めずに、顔を上げてトゥーリを見た。
「ほぐほ? ほんへはへはいってははったふー?(訳・あんこ? なんで食べたいってわかったヌー?)」
口に団子を含みながらヌーッティは尋ねた。
「きなこもあるよ。食べる?」
トゥーリはにっこり微笑んだ。
「はへふふー!(食べるヌー!)」
そう答えるとトゥーリは元来た方へ走って行き、今度はきなこが入った赤色のバットを持って来た。
「いっぱい食べてね」
ヌーッティの目が輝いた。
いつもならこういう時、絶対トゥーリは怒るのに、何故か今日に限っては優しいとヌーッティは思った。その上、ヌーッティの思いを汲むかのようにあんこやきなこを持って来てくれたのである。
「はんへひょうはひゃひゃひいふー?(なんで今日は優しいヌー?)」
不思議な面持ちでヌーッティはトゥーリに尋ねてみた。
トゥーリは笑顔をヌーッティへ向けて、
「だってヌーッティのことだもん。わかるよ。今度は大根おろしで食べる?」
ヌーッティの頬が紅潮した。
「ふー!(ヌー!)」
ヌーッティの口の端からよだれが右腕の上に垂れた。
温かいような感触があった。
ヌーッティは床に置かれたススキの束に気が付いた。
むくりと起き上がった。
「団子……?」
きょろきょろとヌーッティは辺りを見回すと、視線の先、窓の下に台に置かれた団子があった。
窓の外には茜色に染まった空が広がっていた。
「……夢だヌー」
目を擦りながら、ヌーッティは残念そうに呟いた。
ヌーッティはアキにススキを飾ってくるよう頼まれて、団子を見ているうちに寝てしまったことを思い出した。
起き上がったヌーッティは床の上に放置されたススキを手に取ると、団子の横の花瓶に飾りつけた。
ヌーッティの手が自然と団子に伸びる。
そこへ、
「ヌーッティ! 早く手伝いに来て!」
別の部屋にいるトゥーリがヌーッティを呼んだ。
「今行くヌー!」
返事をしたヌーッティはドアへ駆けて行った。
ドアの前で振り返り、窓の方を見たヌーッティの顔は何か決心をしたような表情が浮かんでいた。
こうして時間はあっという間に経ち、空に月が昇り、お月見が始まる。
もぐもぐもぐもぐ食べている。
真っ白な団子はほんのりお餅の味がして素朴な旨味があった。ヌーッティはこの味が好きであった。ヌーッティは団子を絶えず両方の手で取り、片方ずつ口へと運ぶ。
そこへ丸い陶器の器を抱え持ったトゥーリが駆け寄って来た。
「ヌーッティ! あんこを持ってきたよ。こしあんだよ」
ヌーッティは食べる手を止めずに、顔を上げてトゥーリを見た。
「ほぐほ? ほんへはへはいってははったふー?(訳・あんこ? なんで食べたいってわかったヌー?)」
口に団子を含みながらヌーッティは尋ねた。
「きなこもあるよ。食べる?」
トゥーリはにっこり微笑んだ。
「はへふふー!(食べるヌー!)」
そう答えるとトゥーリは元来た方へ走って行き、今度はきなこが入った赤色のバットを持って来た。
「いっぱい食べてね」
ヌーッティの目が輝いた。
いつもならこういう時、絶対トゥーリは怒るのに、何故か今日に限っては優しいとヌーッティは思った。その上、ヌーッティの思いを汲むかのようにあんこやきなこを持って来てくれたのである。
「はんへひょうはひゃひゃひいふー?(なんで今日は優しいヌー?)」
不思議な面持ちでヌーッティはトゥーリに尋ねてみた。
トゥーリは笑顔をヌーッティへ向けて、
「だってヌーッティのことだもん。わかるよ。今度は大根おろしで食べる?」
ヌーッティの頬が紅潮した。
「ふー!(ヌー!)」
ヌーッティの口の端からよだれが右腕の上に垂れた。
温かいような感触があった。
ヌーッティは床に置かれたススキの束に気が付いた。
むくりと起き上がった。
「団子……?」
きょろきょろとヌーッティは辺りを見回すと、視線の先、窓の下に台に置かれた団子があった。
窓の外には茜色に染まった空が広がっていた。
「……夢だヌー」
目を擦りながら、ヌーッティは残念そうに呟いた。
ヌーッティはアキにススキを飾ってくるよう頼まれて、団子を見ているうちに寝てしまったことを思い出した。
起き上がったヌーッティは床の上に放置されたススキを手に取ると、団子の横の花瓶に飾りつけた。
ヌーッティの手が自然と団子に伸びる。
そこへ、
「ヌーッティ! 早く手伝いに来て!」
別の部屋にいるトゥーリがヌーッティを呼んだ。
「今行くヌー!」
返事をしたヌーッティはドアへ駆けて行った。
ドアの前で振り返り、窓の方を見たヌーッティの顔は何か決心をしたような表情が浮かんでいた。
こうして時間はあっという間に経ち、空に月が昇り、お月見が始まる。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
声優召喚!
白川ちさと
児童書・童話
星崎夢乃はいま売り出し中の、女性声優。
仕事があるって言うのに、妖精のエルメラによって精霊たちが暴れる異世界に召喚されてしまった。しかも十二歳の姿に若返っている。
ユメノは精霊使いの巫女として、暴れる精霊を鎮めることに。――それには声に魂を込めることが重要。声優である彼女には精霊使いの素質が十二分にあった。次々に精霊たちを使役していくユメノ。しかし、彼女にとっては仕事が一番。アニメもない異世界にいるわけにはいかない。
ユメノは元の世界に帰るため、精霊の四人の王ウンディーネ、シルフ、サラマンダー、ノームに会いに妖精エルメラと旅に出る。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
魔法のステッキ
ことは
児童書・童話
小学校5年生の中川美咲が今、夢中になっているもの。それはバトントワリングだ。
父親の転勤により、東京のバトン教室をやめなければならなくなった美咲。だが、転校先の小学校には、放課後のバトンクラブがあるという。
期待に胸を膨らませていた美咲だが、たった三人しかいないバトンクラブはつぶれる寸前。バトンの演技も、美咲が求めているようなレベルの高いものではなかった。
美咲は、バトンクラブのメンバーからの勧誘を断ろうとした。しかし、クラブのみんなから、バトンクラブの先生になってほしいとお願いされ……。
【表紙イラスト】ノーコピーライトガール様からお借りしました。
https://fromtheasia.com/illustration/nocopyrightgirl
知ったかぶりのヤマネコと森の落としもの
あしたてレナ
児童書・童話
ある日、森で見つけた落としもの。
動物たちはそれがだれの落としものなのか話し合います。
さまざまな意見が出ましたが、きっとそれはお星さまの落としもの。
知ったかぶりのヤマネコとこわがりのネズミ、食いしんぼうのイノシシが、困難に立ち向かいながら星の元へと落としものをとどける旅に出ます。
全9話。
※初めての児童文学となりますゆえ、温かく見守っていただけましたら幸いです。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる