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46話
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ミラーネ様が処刑された。
わたしはその後実は寝込んでしまった。
またアリシャだった頃の夢を見た。
わたしの自分勝手な行動がミラーネ様の人生を台無しにした。
謝っても謝りきれない。だけど、今のわたしではどうしようもなかった。
ミラーネ様の魂は消えてなくなったかもしれないけど、新しい魂として次は生まれ変わって幸せになってほしい。
そう考えていると不思議に精霊達がそばに来てくれて優しくわたしに触れてきてくれる。
『大丈夫』
『ミネルバ、まもる』
そう言って慰めてくれる。
精霊達はミラーネ様ではなくミネルバを守ると言ってくれる。
わたしにはわからないけどミネルバ、ミランダ、ミラーネ、それぞれの魂は同じだけど人格は違っているのだと思う。
そして精霊達はミネルバを守りたいみたい。
ただ、ずっと同じ過去の苦しみに囚われて復讐することでしか人生を歩めなかったミラーネ様。
その原因であるわたしとシルヴィオ殿下。
二人で会うことになったのはシルヴィオ殿下からの申し入れだった。
わたし達は二人っきりで話すことにした。
もちろん完全に二人になることは問題になるので、周囲には侍女や護衛騎士達もいる。
だけど話し声だけは遮断された。
ここは周囲の壁がガラス張りになっていて見張ることができる。だからもしも何かあってもすぐに部屋の中に入ることができた。
シルヴィオ殿下は部屋で待っていた。
「申し訳ございません、お待たせ致しました」
一礼をしてお詫びを言うと困った顔をして殿下が「早めに来たんだ」と言ってくれた。
「アイシャ嬢には色々と迷惑をかけてしまった。すまなかった」
いつも自信に満ち溢れている殿下が元気がない。思わず「えっ?」と聞き返してしまった。
「君は前世の記憶が……ないと訊いている」
「はい、夢の中で見たのですがわたし自身は全く記憶がありません。ただ、青い薔薇を見ると不思議に心が落ち着くのですが、とても悲しくて辛くなる時もあります。多分前世のわたしの気持ちがそうさせているのだと思いますが、わたし自身は何も思い出せません」
正直に言うと殿下の顔を見るといまだに怖かったり、息苦しくなったりと落ち着かない。流石に不敬になるのでそれは言わないけど。
「僕には、前世の記憶があるんだ。ただ、きっかけであったジルの記憶はなかった。だからどうしてそこまでミラーネが僕と君に固執するのか最初はわからなかったんだ」
「わたしは夢の中で見たので、自分自身としてではないけど、第三者的に見てなんとなくわかります。そしてとても自分勝手な恋をアリシャとジルはしたのだと思います」
キッパリそう言うと殿下も頷いた。
「過去は……もう変えられない。だけどこれからの自分の行動は変えていける。反省して悔やんで、それでも生きていくしかない。僕は、ジルでもシルヴァでもなくシルヴィオだから」
この人もとても悔やんでいるのだろう。
自分だけど自分がしたわけではない過去に。
どんなに向き合っても前世のことなので今を変えることはできない。
それに今回のミラーネ様の事件はシルヴィオ殿下は被害者であって加害者ではない。
全てミラーネ様の独断で行ったこと。
前世のことがきっかけとは言え、それは『今』の世界では理由にはならない。
わたしと殿下の婚約解消も再婚約はしないことも、もう終わった話。
「僕は、ミラーネが罪を償ったらその後どうするかを決めていたんだ」
殿下の顔に迷いはない。
「僕は王族を抜け、神殿に入り神のもと祈りを捧げて暮らそうと思っているんだ」
「………はい」
なんとなくそう思っていた。
ミラーネ様の魂は今も消えずに彷徨っている気がする。
「君にも詫びなければいけない。シルヴァの時、君に酷いことをして死なせた」
「アーシャは牢の中で死んだらしいのですが、それは殿下のせいではなくただ牢生活に耐えられなくて衰弱してしまった、それだけのことです」
「衰弱?そ、それは……」
殿下が言いどもった。
「何か?」(おかしいことを言ったかしら?)
「…………いや、そのきっかけは僕だから……本当にすまなかった」
深々と頭を下げるシルヴィオ殿下。
「殿下、わたし記憶がないんです。ですから殿下のこともミラーネ様のことも恨むことはありません」
精霊達が何故か周りでバタバタと激しく動いている。
ーーもう帰りたいのかな?
「………記憶がない……のは幸せなことかもしれない。新しい世界を生きていけるから。精霊達が君を守ってくれたのかな。ミラーネも同じように記憶がなければ幸せだったのかもしれない。だけど僕は……僕には必要だった。自分の愚かさを忘れるわけにはいかない。一生忘れずに肝に銘じ生きていくつもりだ」
「殿下、もうお会いすることはないと思いますがお身体を大切になさってください」
以前より痩せ細ってとても疲れて見える。
「君も幸せに暮らして欲しい」
わたしが部屋を去る時。
「ずっとずっと君だけ……愛していたんだ」
と小さな声で殿下はわたしに向けて言った。
わたしはその言葉を聞き取ることはなく、殿下ともう二度と会うことのない別れをした。
わたしはその後実は寝込んでしまった。
またアリシャだった頃の夢を見た。
わたしの自分勝手な行動がミラーネ様の人生を台無しにした。
謝っても謝りきれない。だけど、今のわたしではどうしようもなかった。
ミラーネ様の魂は消えてなくなったかもしれないけど、新しい魂として次は生まれ変わって幸せになってほしい。
そう考えていると不思議に精霊達がそばに来てくれて優しくわたしに触れてきてくれる。
『大丈夫』
『ミネルバ、まもる』
そう言って慰めてくれる。
精霊達はミラーネ様ではなくミネルバを守ると言ってくれる。
わたしにはわからないけどミネルバ、ミランダ、ミラーネ、それぞれの魂は同じだけど人格は違っているのだと思う。
そして精霊達はミネルバを守りたいみたい。
ただ、ずっと同じ過去の苦しみに囚われて復讐することでしか人生を歩めなかったミラーネ様。
その原因であるわたしとシルヴィオ殿下。
二人で会うことになったのはシルヴィオ殿下からの申し入れだった。
わたし達は二人っきりで話すことにした。
もちろん完全に二人になることは問題になるので、周囲には侍女や護衛騎士達もいる。
だけど話し声だけは遮断された。
ここは周囲の壁がガラス張りになっていて見張ることができる。だからもしも何かあってもすぐに部屋の中に入ることができた。
シルヴィオ殿下は部屋で待っていた。
「申し訳ございません、お待たせ致しました」
一礼をしてお詫びを言うと困った顔をして殿下が「早めに来たんだ」と言ってくれた。
「アイシャ嬢には色々と迷惑をかけてしまった。すまなかった」
いつも自信に満ち溢れている殿下が元気がない。思わず「えっ?」と聞き返してしまった。
「君は前世の記憶が……ないと訊いている」
「はい、夢の中で見たのですがわたし自身は全く記憶がありません。ただ、青い薔薇を見ると不思議に心が落ち着くのですが、とても悲しくて辛くなる時もあります。多分前世のわたしの気持ちがそうさせているのだと思いますが、わたし自身は何も思い出せません」
正直に言うと殿下の顔を見るといまだに怖かったり、息苦しくなったりと落ち着かない。流石に不敬になるのでそれは言わないけど。
「僕には、前世の記憶があるんだ。ただ、きっかけであったジルの記憶はなかった。だからどうしてそこまでミラーネが僕と君に固執するのか最初はわからなかったんだ」
「わたしは夢の中で見たので、自分自身としてではないけど、第三者的に見てなんとなくわかります。そしてとても自分勝手な恋をアリシャとジルはしたのだと思います」
キッパリそう言うと殿下も頷いた。
「過去は……もう変えられない。だけどこれからの自分の行動は変えていける。反省して悔やんで、それでも生きていくしかない。僕は、ジルでもシルヴァでもなくシルヴィオだから」
この人もとても悔やんでいるのだろう。
自分だけど自分がしたわけではない過去に。
どんなに向き合っても前世のことなので今を変えることはできない。
それに今回のミラーネ様の事件はシルヴィオ殿下は被害者であって加害者ではない。
全てミラーネ様の独断で行ったこと。
前世のことがきっかけとは言え、それは『今』の世界では理由にはならない。
わたしと殿下の婚約解消も再婚約はしないことも、もう終わった話。
「僕は、ミラーネが罪を償ったらその後どうするかを決めていたんだ」
殿下の顔に迷いはない。
「僕は王族を抜け、神殿に入り神のもと祈りを捧げて暮らそうと思っているんだ」
「………はい」
なんとなくそう思っていた。
ミラーネ様の魂は今も消えずに彷徨っている気がする。
「君にも詫びなければいけない。シルヴァの時、君に酷いことをして死なせた」
「アーシャは牢の中で死んだらしいのですが、それは殿下のせいではなくただ牢生活に耐えられなくて衰弱してしまった、それだけのことです」
「衰弱?そ、それは……」
殿下が言いどもった。
「何か?」(おかしいことを言ったかしら?)
「…………いや、そのきっかけは僕だから……本当にすまなかった」
深々と頭を下げるシルヴィオ殿下。
「殿下、わたし記憶がないんです。ですから殿下のこともミラーネ様のことも恨むことはありません」
精霊達が何故か周りでバタバタと激しく動いている。
ーーもう帰りたいのかな?
「………記憶がない……のは幸せなことかもしれない。新しい世界を生きていけるから。精霊達が君を守ってくれたのかな。ミラーネも同じように記憶がなければ幸せだったのかもしれない。だけど僕は……僕には必要だった。自分の愚かさを忘れるわけにはいかない。一生忘れずに肝に銘じ生きていくつもりだ」
「殿下、もうお会いすることはないと思いますがお身体を大切になさってください」
以前より痩せ細ってとても疲れて見える。
「君も幸せに暮らして欲しい」
わたしが部屋を去る時。
「ずっとずっと君だけ……愛していたんだ」
と小さな声で殿下はわたしに向けて言った。
わたしはその言葉を聞き取ることはなく、殿下ともう二度と会うことのない別れをした。
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