40 / 48
40話 ミラーネ編
しおりを挟む
「君は今のシルヴィオを恨んでいるの?違うだろう?今のシルヴィオを愛してもいないだろう?」
ノエル様の言葉になにを言ってるの?と返したいのに……
「わたしが愛したのは……ジルだけよ。シルヴァもシルヴィオもジルではないわ。でも同じ魂を持っている彼らにしか復讐は出来ないの。アリシャだってそうよ。自分は何も知らずにただ愛されて、他人を不幸にしたことなんて全く知らずに生きたわ、でももう二人はいない。だから代わりに復讐したの」
「ねぇ?どんなに復讐をしても君の心は晴れないだろう?君の心は復讐すればするほど闇に堕ちていって満足することはないと思う」
「だったらこの気持ちをどうすればいいの?」
「どうして神は前世の記憶なんて与えたんだろう?今世で新しく生きて幸せになればいいのに。ミラーネ、僕は君に少し同情するよ」
ノエル様の言葉に苛つく。わたしに同情?ふざけないで!何も知らないくせに!
「同情?そんなものいらないわ。今世でわたしは消えることはわかっていたの。黒魔法は禁忌の魔法よ?それを使ったわたしの魂はもうこの世に耐えられない。次に生まれ変わることはないわ、だから今回の復讐が最後なの」
「青い薔薇はアーシャが精霊と作り出したらしい。その青い薔薇が君の黒魔法を解いたんだ」
ノエル様がそう言うと牢の中にいるわたしに青い薔薇を1本差し出した。
足枷をつけられたわたしは青い薔薇なんて受け取るつもりはなく「要らないわ」と横を向いた。
どうせ檻のところまで歩けない。
それに牢の中にいるわたしに花なんて必要ないもの。
「青い薔薇は精霊達が作り出した悪や汚れた心を浄化させてくれるんだ。精霊達が君のために作り出したんだ」
「はあ?精霊はアーシャを愛し子と認めたのよ?」
「うん、だけど精霊達は君をミランダを聖女と認めて君に力を与えたんだ。ミネルバの時の辛く悲しい思いを今度はさせないように、君のことも愛したんだよ、精霊達は。だけど君が復讐に手を染めて精霊達は君のために青い薔薇を咲かせたんだ、復讐をやめさせたくて。でも君には精霊の声は聞こえなくなっていた」
「はっ?精霊が?アーシャに寄り添っていた精霊が?馬鹿馬鹿しい。もうあなた達と話す気になんてなれない。帰って!」
なんだか疲れた。もういい。
もうこの二人とこれ以上話したくない。
「帰れ!帰ってもうここには二度と来ないで!」
わたしは二人に怒鳴りつけた。
二人は静かに立ち去った。
わたしは背を向けたまま牢の石壁をじっと見つめ続けた。
自分の命の終わりが近づいていることはもうわかっている。
復讐をどんなにしても渇いた心はカラカラのまま。
どれくらい時間が経ったのかわからない。同じ体勢に疲れてやっと体を動かした。
薄暗い牢の中はとても静かで今朝なのか夜なのかよくわからない。
窓すらないこの地下牢で唯一のランプの灯りだけが頼り。
でもミネルバだった時に入れられた修道院よりもまだこの地下牢の方がマシだった。
あの修道院は人を人として扱わない、人の尊厳すら与えてはくれなかった。
まともな食事も与えず朝から晩まで仕事をさせて、寝る時は常にいやらしい男達がいつ女を襲おうかと目の色を変えて見ていた。
そんな暮らしの中、心は疲弊して衰弱していく。
わたしが男に襲われなかったのはただ病に冒されていたから。
肺の病気で咳がひどく、移るのを嫌がった男達がわたしに手を出さなかっただけ。
でも体が動くまで働くことはさせられた。
どんなにキツくても、どんなに咳が出ても鞭で打たれ、働いた。
あの二人が幸せに暮らす中、わたしは悪女にさせられ、親にも見捨てられ、誰にも看取られず、朝、冷たくなったまま死んでいた。
わたしの遺体は誰にも引き取られずに修道院のそばにある遺体捨て場に捨てられ土をかけられて終わった。
それはミランダに生まれ変わって聖女の力を得た時、自分の前世のその後をどうしても知りたくて、視てしまった。
だからこの地下牢は人の尊厳を無視したことはしないだけマシだ。
でもアーシャはそんな中、騎士達に犯され死んでいった。
わたしのドス黒い心は、そんなアーシャをいい気味だと思っていたはずなのに、今は、心が痛い。
牢に入れられたから?
ーー違う。わかってる。
それにもうわたしには魔法は使えない。青い薔薇がわたしの黒魔法を消してしまった。そして今も檻のそばにある青い薔薇がわたしの心を浄化している。
でもね、もう遅いの。
自分がしたことを今更反省しても。
だからわたしは悪女として死んでいくわ。
反省なんてしない。
アイシャに謝るつもりもない。
その代わり、わたしはこの世から消えてあげるわ。
ノエル様の言葉になにを言ってるの?と返したいのに……
「わたしが愛したのは……ジルだけよ。シルヴァもシルヴィオもジルではないわ。でも同じ魂を持っている彼らにしか復讐は出来ないの。アリシャだってそうよ。自分は何も知らずにただ愛されて、他人を不幸にしたことなんて全く知らずに生きたわ、でももう二人はいない。だから代わりに復讐したの」
「ねぇ?どんなに復讐をしても君の心は晴れないだろう?君の心は復讐すればするほど闇に堕ちていって満足することはないと思う」
「だったらこの気持ちをどうすればいいの?」
「どうして神は前世の記憶なんて与えたんだろう?今世で新しく生きて幸せになればいいのに。ミラーネ、僕は君に少し同情するよ」
ノエル様の言葉に苛つく。わたしに同情?ふざけないで!何も知らないくせに!
「同情?そんなものいらないわ。今世でわたしは消えることはわかっていたの。黒魔法は禁忌の魔法よ?それを使ったわたしの魂はもうこの世に耐えられない。次に生まれ変わることはないわ、だから今回の復讐が最後なの」
「青い薔薇はアーシャが精霊と作り出したらしい。その青い薔薇が君の黒魔法を解いたんだ」
ノエル様がそう言うと牢の中にいるわたしに青い薔薇を1本差し出した。
足枷をつけられたわたしは青い薔薇なんて受け取るつもりはなく「要らないわ」と横を向いた。
どうせ檻のところまで歩けない。
それに牢の中にいるわたしに花なんて必要ないもの。
「青い薔薇は精霊達が作り出した悪や汚れた心を浄化させてくれるんだ。精霊達が君のために作り出したんだ」
「はあ?精霊はアーシャを愛し子と認めたのよ?」
「うん、だけど精霊達は君をミランダを聖女と認めて君に力を与えたんだ。ミネルバの時の辛く悲しい思いを今度はさせないように、君のことも愛したんだよ、精霊達は。だけど君が復讐に手を染めて精霊達は君のために青い薔薇を咲かせたんだ、復讐をやめさせたくて。でも君には精霊の声は聞こえなくなっていた」
「はっ?精霊が?アーシャに寄り添っていた精霊が?馬鹿馬鹿しい。もうあなた達と話す気になんてなれない。帰って!」
なんだか疲れた。もういい。
もうこの二人とこれ以上話したくない。
「帰れ!帰ってもうここには二度と来ないで!」
わたしは二人に怒鳴りつけた。
二人は静かに立ち去った。
わたしは背を向けたまま牢の石壁をじっと見つめ続けた。
自分の命の終わりが近づいていることはもうわかっている。
復讐をどんなにしても渇いた心はカラカラのまま。
どれくらい時間が経ったのかわからない。同じ体勢に疲れてやっと体を動かした。
薄暗い牢の中はとても静かで今朝なのか夜なのかよくわからない。
窓すらないこの地下牢で唯一のランプの灯りだけが頼り。
でもミネルバだった時に入れられた修道院よりもまだこの地下牢の方がマシだった。
あの修道院は人を人として扱わない、人の尊厳すら与えてはくれなかった。
まともな食事も与えず朝から晩まで仕事をさせて、寝る時は常にいやらしい男達がいつ女を襲おうかと目の色を変えて見ていた。
そんな暮らしの中、心は疲弊して衰弱していく。
わたしが男に襲われなかったのはただ病に冒されていたから。
肺の病気で咳がひどく、移るのを嫌がった男達がわたしに手を出さなかっただけ。
でも体が動くまで働くことはさせられた。
どんなにキツくても、どんなに咳が出ても鞭で打たれ、働いた。
あの二人が幸せに暮らす中、わたしは悪女にさせられ、親にも見捨てられ、誰にも看取られず、朝、冷たくなったまま死んでいた。
わたしの遺体は誰にも引き取られずに修道院のそばにある遺体捨て場に捨てられ土をかけられて終わった。
それはミランダに生まれ変わって聖女の力を得た時、自分の前世のその後をどうしても知りたくて、視てしまった。
だからこの地下牢は人の尊厳を無視したことはしないだけマシだ。
でもアーシャはそんな中、騎士達に犯され死んでいった。
わたしのドス黒い心は、そんなアーシャをいい気味だと思っていたはずなのに、今は、心が痛い。
牢に入れられたから?
ーー違う。わかってる。
それにもうわたしには魔法は使えない。青い薔薇がわたしの黒魔法を消してしまった。そして今も檻のそばにある青い薔薇がわたしの心を浄化している。
でもね、もう遅いの。
自分がしたことを今更反省しても。
だからわたしは悪女として死んでいくわ。
反省なんてしない。
アイシャに謝るつもりもない。
その代わり、わたしはこの世から消えてあげるわ。
1,025
お気に入りに追加
2,452
あなたにおすすめの小説
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。


貴方の運命になれなくて
豆狸
恋愛
運命の相手を見つめ続ける王太子ヨアニスの姿に、彼の婚約者であるスクリヴァ公爵令嬢リディアは身を引くことを決めた。
ところが婚約を解消した後で、ヨアニスの運命の相手プセマが毒に倒れ──
「……君がそんなに私を愛していたとは知らなかったよ」
「え?」
「プセマは毒で死んだよ。ああ、驚いたような顔をしなくてもいい。君は知っていたんだろう? プセマに毒を飲ませたのは君なんだから!」

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。
桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。
それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。
一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。
いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。
変わってしまったのは、いつだろう。
分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。
******************************************
こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏)
7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる