【完結】裏切られたあなたにもう二度と恋はしない

39話 ミラーネ編

「君の魔法がなぜ解けてしまったのかわるかな？」

　ノエル様が優しい声でわたしに聞いてきた。

　この人は精霊に愛されているのね。アーシャもたくさんの精霊に愛されていたわ。
　その精霊達を閉じ込めたのはわたしだけど。

　ふと思い出す。

「ねぇ、シルヴィオ、あなたは覚えていないジルだった頃の話をしてもいいかしら？」

　わたしはノエル様の言葉を無視した。だって魔法が今更解けたことを考えても仕方がないもの。

　わたしはもうすぐ処刑されるだろうから。



　それよりもアイシャを犯させたのはシルヴァだと告げてショックを受けるシルヴィオに話しかけた。そっちの方がわたしにとっては大切なことだから。

　このまま死んで終わるなんて嫌。全てを吐き出してやる！




　わたしは話し始めた。







　アリシャはとても自己中心的でみんなを味方につける人だった。

　ミネルバだったわたしを全て悪者にした。
　もちろんわたしが嫉妬に駆られ意地悪もしたし罵倒もした。
　でも最初はただ、アリシャに婚約者がいる男性とあまり親しくするのはいかがなものかと注意していただけだった。

　それなのにわたしから酷いことを言われたとジルに言って、わたしはジルに罵倒されたり睨まれたりし始めた。
　婚約者であるわたしを憎み始めたの。

　婚約者の目の前でイチャイチャする二人はよくて、それを注意した婚約者のわたしは悪者？

　クラスメイトまでわたしを悪女のように言って、二人の愛を邪魔する酷い奴だと言われ始めたわ。

　ううん、言われただけではない。

　わたしは皆に無視され、教室にいることすらできないくらい精神的に追い詰められた。

　そしてお父様からは婚約が解消されればわたしにはもう価値はないと言われた。

　それもジルやアリシャ、クラスメイトのおかげで、悪女という不名誉な言葉までついて回ったの。

　あなた達は自分たちが幸せで自分たちが楽しければよかったのかもしれないわ。

　じゃあ、わたしは？

　やけになってどうせ悪女と言われ、何もしていないのに嫌がらせをしていると言われたなら本当に意地悪をしてもいいんじゃない？とわたしは思ったわ。

　だから本当にアリシャに意地悪をしたわ。

　おかげでわたしは本当に悪女になったの。


　アリシャのカバンを捨てたり、アリシャの友人を脅したり、アリシャの家族を襲わせた。

　

　でも本当に悪女なのは、無垢なままジルに恋をして、自分は何も悪くないとジルに守られたアリシャじゃないの？
　そして婚約者のわたしを捨て自分だけの幸せを選んだジルじゃないのかしら？

　わたしはただ婚約者としての立場を守ろうとしただけだわ。もし婚約破棄されればわたしはお父様に見捨てられる。
　そうなれば修道院へ入れられるか後妻として年上の貴族の誰かに嫁がされるかしか残っていなかった。

　わたしの人生を滅茶苦茶にしたのはジル……シルヴィオの前世なの。



　





　わたしは打ちひしがれるシルヴィオにさらに追い打ちをかけた。

「あなたはいつも自分が……自分だけが大事なの。偽善者なの」


「ミラーネ嬢、もうその辺で止めようか？前世のことを現世のシルヴィオに責めてもなにも変わらないよ。だってシルヴィオはシルヴィオであって、シルヴァでもジルでもないんだ」

「一緒じゃない？なにが違うというの？」