38 / 48
38話 ミラーネ編
しおりを挟む
「あははははははっ」
どうしてわたしはここにいるの?
あと少しでシルヴィオと結婚できたのに。
あと少しでアイシャを壊せたのに。
シルヴィオとの幸せな結婚生活を永遠にアイシャに見せつけてわたしの復讐は終わらせる予定だった。
わたしの魔法があれば周りの人たちをうまく操れる。
アイシャを惨めにさせる。
それだけで溜飲が下がる。
そしてアイシャが苦しめば苦しむほどシルヴィオを死ぬ直前に苦しめることができたのに。
わたしはシルヴィオが生を終わらせるその時にアイシャの前世やシルヴィオの前世の話をするつもりだった。
死ぬ時に後悔すればいい。
苦しんで死ねばいい。
今回は肉体的な苦しみを与えないで心の苦しみだけを二人に与えるつもりだった。
二人の苦しむ姿を見て満足して復讐は終わらせるつもりだった。
なのに、少しずつわたしの魔法が効かなくなっていった。
周りの反応がおかしい。
みんながわたしを敬いわたしを大切に扱い、わたしを尊い、わたしを愛してくれたのに。
何故?
わからない。
わたしの魔法は完璧だったはず。
アイシャが背中を刺された時、あんなに必死でシルヴィオが助けに行った。
でもあの時はそれを違和感と感じなかった。
何故?
何故なの?
わたしは今地下牢に閉じ込められている。
足枷をつけられて自由に動き回ることができない。
そんなわたしのところへやってきたのは……
「シルヴィオ?そしてあなたはノエル様?」
ノエル様はわたしに、にこりと微笑んだ。
「やっと君から精霊達が解放されて飛び回っているよ。まぁ君には見えないだろう?」
「精霊?」
ーーそう言えば精霊を檻の中に閉じ込めたのは……
ミランダの時だったかしら?
あの鬱陶しい精霊達がいなくなってせいせいしたわ。
そう言えばミラーネになってほとんど精霊達を感じなくなった。
ミランダの頃はわかったのに。
「精霊達の声が聞こえないだろう?ミランダの時君は聖女として生まれたんだね?精霊達が君がミネルバの時にあまりにも可哀想だと死を悲しんだんだ。だから君に聖女としての力を与えた。そして君を幸せにしようとしたんだ」
「ふん、違うわ。精霊達はアイシャ様を愛し子として選んだ。わたしは聖女にはなったけど聖女だから愛されただけで本当のわたしは誰にも愛されなかったわ」
「精霊達は確かにアイシャ嬢を愛し子して選んだ。でも、そのせいで不幸になったミネルバの死を悲しんだんだ」
「何故ノエル様がそんなことがわかるの?作り話はよしてちょうだい」
「精霊達の愛し子は他にもいる。それが僕。そして精霊達が昔話をしてくれる」
「精霊達が何をしてくれると言うの?わたしはとても不幸だった。ミネルバの時もミランダの時も。愛する人に愛されない、あの二人のせいでわたしはずっと不幸なの」
「ミネルバの時は確かに二人のせいで不幸になったと思う。それは否定しない」
「ええ、この目の前のシルヴィオがジルだった時、わたしのことなんて全く考えず勝手に恋をした。恋をするのは仕方がないわ。でも婚約者を蔑ろにして不幸にしても全く良心の呵責も感じることがない人たちだったわ。自分達だけが幸せならそれでよかったのよ」
シルヴィオがすまなそうに頭を下げた。
「ミラーネ……すまない。シルヴァの時の記憶はある。だけどその前の記憶はない。ノエルに教えてもらうまで君はただ酷い人間でしかなかった。だけど俺自身が蒔いた種だったんだな」
「話を聞いただけじゃ信じられないでしょう?」
わたしはシルヴィオを見て鼻で笑った。
実際に受けた人間にしかあの苦しみはわからないもの。
「でも、アーシャにしたことは許せない」
ーーそれはそうよね?
でもね?
「シルヴィオ、実際に命令したのはあなたよ?わたしはそこまであなたを操っていないわ。あなたがアーシャを犯すように騎士達に命令したの。ボロボロになるまで犯し続けて殺したのは前世のシルヴァよ?」
「…………お…れ……?」
「いやぁね、自分は被害者で何も悪いことはしていないと思っていたの?」
わたしは可笑しくて笑いが込み上げてきた。
全てわたしが悪いと思っているの?
ええ、もちろん、わたしは壊れた。
ええ、もちろん、わたしが一番おかしいのはわかってる。
だけどシルヴァ、あなただって、わたしと同じ種類の人間なの。
真っ当な人間だなんて思わないで欲しいわ。
「あははははははっ」
わたしは笑いが止まらなかった。
どうしてわたしはここにいるの?
あと少しでシルヴィオと結婚できたのに。
あと少しでアイシャを壊せたのに。
シルヴィオとの幸せな結婚生活を永遠にアイシャに見せつけてわたしの復讐は終わらせる予定だった。
わたしの魔法があれば周りの人たちをうまく操れる。
アイシャを惨めにさせる。
それだけで溜飲が下がる。
そしてアイシャが苦しめば苦しむほどシルヴィオを死ぬ直前に苦しめることができたのに。
わたしはシルヴィオが生を終わらせるその時にアイシャの前世やシルヴィオの前世の話をするつもりだった。
死ぬ時に後悔すればいい。
苦しんで死ねばいい。
今回は肉体的な苦しみを与えないで心の苦しみだけを二人に与えるつもりだった。
二人の苦しむ姿を見て満足して復讐は終わらせるつもりだった。
なのに、少しずつわたしの魔法が効かなくなっていった。
周りの反応がおかしい。
みんながわたしを敬いわたしを大切に扱い、わたしを尊い、わたしを愛してくれたのに。
何故?
わからない。
わたしの魔法は完璧だったはず。
アイシャが背中を刺された時、あんなに必死でシルヴィオが助けに行った。
でもあの時はそれを違和感と感じなかった。
何故?
何故なの?
わたしは今地下牢に閉じ込められている。
足枷をつけられて自由に動き回ることができない。
そんなわたしのところへやってきたのは……
「シルヴィオ?そしてあなたはノエル様?」
ノエル様はわたしに、にこりと微笑んだ。
「やっと君から精霊達が解放されて飛び回っているよ。まぁ君には見えないだろう?」
「精霊?」
ーーそう言えば精霊を檻の中に閉じ込めたのは……
ミランダの時だったかしら?
あの鬱陶しい精霊達がいなくなってせいせいしたわ。
そう言えばミラーネになってほとんど精霊達を感じなくなった。
ミランダの頃はわかったのに。
「精霊達の声が聞こえないだろう?ミランダの時君は聖女として生まれたんだね?精霊達が君がミネルバの時にあまりにも可哀想だと死を悲しんだんだ。だから君に聖女としての力を与えた。そして君を幸せにしようとしたんだ」
「ふん、違うわ。精霊達はアイシャ様を愛し子として選んだ。わたしは聖女にはなったけど聖女だから愛されただけで本当のわたしは誰にも愛されなかったわ」
「精霊達は確かにアイシャ嬢を愛し子して選んだ。でも、そのせいで不幸になったミネルバの死を悲しんだんだ」
「何故ノエル様がそんなことがわかるの?作り話はよしてちょうだい」
「精霊達の愛し子は他にもいる。それが僕。そして精霊達が昔話をしてくれる」
「精霊達が何をしてくれると言うの?わたしはとても不幸だった。ミネルバの時もミランダの時も。愛する人に愛されない、あの二人のせいでわたしはずっと不幸なの」
「ミネルバの時は確かに二人のせいで不幸になったと思う。それは否定しない」
「ええ、この目の前のシルヴィオがジルだった時、わたしのことなんて全く考えず勝手に恋をした。恋をするのは仕方がないわ。でも婚約者を蔑ろにして不幸にしても全く良心の呵責も感じることがない人たちだったわ。自分達だけが幸せならそれでよかったのよ」
シルヴィオがすまなそうに頭を下げた。
「ミラーネ……すまない。シルヴァの時の記憶はある。だけどその前の記憶はない。ノエルに教えてもらうまで君はただ酷い人間でしかなかった。だけど俺自身が蒔いた種だったんだな」
「話を聞いただけじゃ信じられないでしょう?」
わたしはシルヴィオを見て鼻で笑った。
実際に受けた人間にしかあの苦しみはわからないもの。
「でも、アーシャにしたことは許せない」
ーーそれはそうよね?
でもね?
「シルヴィオ、実際に命令したのはあなたよ?わたしはそこまであなたを操っていないわ。あなたがアーシャを犯すように騎士達に命令したの。ボロボロになるまで犯し続けて殺したのは前世のシルヴァよ?」
「…………お…れ……?」
「いやぁね、自分は被害者で何も悪いことはしていないと思っていたの?」
わたしは可笑しくて笑いが込み上げてきた。
全てわたしが悪いと思っているの?
ええ、もちろん、わたしは壊れた。
ええ、もちろん、わたしが一番おかしいのはわかってる。
だけどシルヴァ、あなただって、わたしと同じ種類の人間なの。
真っ当な人間だなんて思わないで欲しいわ。
「あははははははっ」
わたしは笑いが止まらなかった。
1,189
お気に入りに追加
2,448
あなたにおすすめの小説

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです
きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」
5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。
その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

──いいえ。わたしがあなたとの婚約を破棄したいのは、あなたに愛する人がいるからではありません。
ふまさ
恋愛
伯爵令息のパットは、婚約者であるオーレリアからの突然の別れ話に、困惑していた。
「確かにぼくには、きみの他に愛する人がいる。でもその人は平民で、ぼくはその人と結婚はできない。だから、きみと──こんな言い方は卑怯かもしれないが、きみの家にお金を援助することと引き換えに、きみはそれを受け入れたうえで、ぼくと婚約してくれたんじゃなかったのか?!」
正面に座るオーレリアは、膝のうえに置いたこぶしを強く握った。
「……あなたの言う通りです。元より貴族の結婚など、政略的なものの方が多い。そんな中、没落寸前の我がヴェッター伯爵家に援助してくれたうえ、あなたのような優しいお方が我が家に婿養子としてきてくれるなど、まるで夢のようなお話でした」
「──なら、どうして? ぼくがきみを一番に愛せないから? けれどきみは、それでもいいと言ってくれたよね?」
オーレリアは答えないどころか、顔すらあげてくれない。
けれどその場にいる、両家の親たちは、その理由を理解していた。
──そう。
何もわかっていないのは、パットだけだった。

そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し

【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

悪役令嬢の涙
拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる