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27話 シルヴィオ編
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「兄上!」
いきなりユリウスが俺とミラーネが話をしているところにやって来た。
「どうした?そんな顔をして?」
嫌な予感がする。
いまユリウスに要らない言葉を喋らせるわけにはいかない。
あと少しなんだ。あと少し。
「アイシャ嬢のことです!」
やはり。
ユリウスはアイシャに対して特別な感情を抱いている。同情なのか愛情なのか、本人も分かってはいないみたいだが、アイシャ嬢のことになると俺に対してもムキになってくる。
「今ここで話すことではない。俺は今ミラーネと話しているところだ、邪魔するな」
「あら?どうして?シルヴィオの元婚約者のアイシャ嬢のこと聞いてみたいわ」
心配そうな顔をするミラーネ。
ふざけるな、全てお前の悪巧みのくせに!
「……ミラーネ様……申し訳ありません。あなたがいる場所で話すことではありませんでした」
ユリウスは頭に血がのぼっていたのかミラーネのことが見えていなかった。
ハッとなり慌ててミラーネに頭を下げた。
「いいのよ。わたしもアイシャ様のことは気になっていたの。最近は王城でも学校でも見かけないし……もしかして婚約解消のことで落ち込んでいるのかしら?」
俺はミラーネにバレないようにユリウスに目線を合わせこれ以上話さないように『黙れ』と睨みつけた。
俺の目線に慌てて言い訳を始めた。
「あっ、いえ、そうですね。落ち込んでいるんじゃないかと心配しているんです」
「まぁ、やっぱり。シルヴィオのことをとても慕っていたものね。いくら神託が降りたからと言って彼女からしたら受け入れられないと思うわ。わたしだって、神託でなければシルヴィオと無理やり婚約しようなんて思わなかったもの」
「そうですよね、神託ですから」
ユリウスはさっきまでの勢いが少しおさまってきたようだ。
俺は今ミラーネに気分を害するのも困るし、アイシャのことで色々探られたくない。
「ミラーネ、行こう。庭のガゼホにお茶の用意をしている。二人でゆっくり過ごそう」
俺はミラーネの腰に手を添えてエスコートする。
「そうね、シルヴィオとゆっくりお茶を飲みたいわ」
甘える声でミラーネが返事をした。そして俺の体にそっと体を預けてきた。
振り払いたい。
そう思っても今はできない。
俺はミラーネの魔法にかかっている。
『ミラーネを愛している』フリをしなければ。
グッと我慢をしてミラーネに優しく問いかける。
「ミラーネは確かチョコケーキが好きだだよね?」
「わたしは生クリームの方が好きよ」
「そうだったかな?」
ーーチョコケーキが好きなのはアイシャだった。
アイシャの美味しそうに食べるあの笑顔を俺はもう見ることはできない。
そう思うと隣にいるミラーネを憎々しくしか思えない。
前世でこの女を愛し、アーシャを酷い目に合わせ死に追いやった俺はまたアイシャを悲しませている。
だがミラーネの魔の手から逃れるにはソラリア帝国へ追いやることがアイシャのためなんだ。
あと少し、あと少しすればアイシャはソラリア帝国へと旅立つ。
友人であるソラリア帝国の公爵子息であるノエルにアイシャのことを頼んでいた。
あいつなら必ずアイシャを守ってくれるはずだ。
それまで俺はこの女の魔法にかかったフリをする。
そしてこの女は隙をみて殺す。もう二度とアイシャに近寄らせないために。
そしてこの女のせいで魔法にかかった者達を救うために。まずはアイシャの身の安全を確保してからだが。
それが俺が唯一できるアーシャへの贖罪なんだと思う。
いきなりユリウスが俺とミラーネが話をしているところにやって来た。
「どうした?そんな顔をして?」
嫌な予感がする。
いまユリウスに要らない言葉を喋らせるわけにはいかない。
あと少しなんだ。あと少し。
「アイシャ嬢のことです!」
やはり。
ユリウスはアイシャに対して特別な感情を抱いている。同情なのか愛情なのか、本人も分かってはいないみたいだが、アイシャ嬢のことになると俺に対してもムキになってくる。
「今ここで話すことではない。俺は今ミラーネと話しているところだ、邪魔するな」
「あら?どうして?シルヴィオの元婚約者のアイシャ嬢のこと聞いてみたいわ」
心配そうな顔をするミラーネ。
ふざけるな、全てお前の悪巧みのくせに!
「……ミラーネ様……申し訳ありません。あなたがいる場所で話すことではありませんでした」
ユリウスは頭に血がのぼっていたのかミラーネのことが見えていなかった。
ハッとなり慌ててミラーネに頭を下げた。
「いいのよ。わたしもアイシャ様のことは気になっていたの。最近は王城でも学校でも見かけないし……もしかして婚約解消のことで落ち込んでいるのかしら?」
俺はミラーネにバレないようにユリウスに目線を合わせこれ以上話さないように『黙れ』と睨みつけた。
俺の目線に慌てて言い訳を始めた。
「あっ、いえ、そうですね。落ち込んでいるんじゃないかと心配しているんです」
「まぁ、やっぱり。シルヴィオのことをとても慕っていたものね。いくら神託が降りたからと言って彼女からしたら受け入れられないと思うわ。わたしだって、神託でなければシルヴィオと無理やり婚約しようなんて思わなかったもの」
「そうですよね、神託ですから」
ユリウスはさっきまでの勢いが少しおさまってきたようだ。
俺は今ミラーネに気分を害するのも困るし、アイシャのことで色々探られたくない。
「ミラーネ、行こう。庭のガゼホにお茶の用意をしている。二人でゆっくり過ごそう」
俺はミラーネの腰に手を添えてエスコートする。
「そうね、シルヴィオとゆっくりお茶を飲みたいわ」
甘える声でミラーネが返事をした。そして俺の体にそっと体を預けてきた。
振り払いたい。
そう思っても今はできない。
俺はミラーネの魔法にかかっている。
『ミラーネを愛している』フリをしなければ。
グッと我慢をしてミラーネに優しく問いかける。
「ミラーネは確かチョコケーキが好きだだよね?」
「わたしは生クリームの方が好きよ」
「そうだったかな?」
ーーチョコケーキが好きなのはアイシャだった。
アイシャの美味しそうに食べるあの笑顔を俺はもう見ることはできない。
そう思うと隣にいるミラーネを憎々しくしか思えない。
前世でこの女を愛し、アーシャを酷い目に合わせ死に追いやった俺はまたアイシャを悲しませている。
だがミラーネの魔の手から逃れるにはソラリア帝国へ追いやることがアイシャのためなんだ。
あと少し、あと少しすればアイシャはソラリア帝国へと旅立つ。
友人であるソラリア帝国の公爵子息であるノエルにアイシャのことを頼んでいた。
あいつなら必ずアイシャを守ってくれるはずだ。
それまで俺はこの女の魔法にかかったフリをする。
そしてこの女は隙をみて殺す。もう二度とアイシャに近寄らせないために。
そしてこの女のせいで魔法にかかった者達を救うために。まずはアイシャの身の安全を確保してからだが。
それが俺が唯一できるアーシャへの贖罪なんだと思う。
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