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26話
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ユリウス殿下の待つ応接室へと一人で向かった。廊下にはわたしを監視する騎士達がいて、わたしの顔を見ると目を逸らす。
わたしがいったい何をしたと言うのかしら?
シルヴィオ様に会って話したいと願っただけ。まるで罪人のような気分。
それでもユリウス殿下の前ではカーテシーをして挨拶をした。
「アイシャ嬢、痩せたね?食事は摂れていないの?」
わたしの顔を見た瞬間、眉根を寄せ心配そうに声をかけてくださる優しいユリウス殿下。
「………動くこともありませんからお腹が空くこともありません」
彼に八つ当たりするのはおかしい。そう思いながらもつい冷たい言葉が出てしまった。
どんどん性格が悪くなる自分に嫌気がさす。
「兄上とミラーネ様の婚約が決まった。来年には式を挙げる。アイシャ嬢がソラリア帝国へと留学すると聞いたんだ」
「わざわざわたしにそんなお話をしにきたんですか?」
執事長のマークが壁際に立っているのだけどとても怖い顔をしていた。
不敬に問われないか心配しているの?
そんなこと関係ないわ。
「すまない……君が学校へ全くこなくなったので心配していたんだ。
兄上との婚約解消はお互い了解のうえ円満に解消されたと聞いているんだけど、違うの?」
ユリウス殿下がなんだか様子がおかしいと感じて、さらに眉根を寄せた。
「円満に解消?そうですか……知りませんでした。わたしは軟禁されています、いつこの屋敷を抜け出すかわからないからと部屋から出してもらえません。常に監視されていますので学校へ行くことも友人にお会いすることもできません」
「お、お嬢様!」
マーク達が焦ってわたしの話を遮ろうとした。
「黙れ!」
ユリウス殿下がマーク達をひと睨みして黙らせた。
冷や汗をかいている我が家の執事達をみてわたしは心の中で少しだけ溜飲が下がる。
どんなに真っ黒黒な心なのかしら?なんだか可笑しくてクスッと笑ってしまった。
「知らなかった、僕が聞いた話と全く違っていたんだね。君は納得してソラリア帝国へ向かうと聞いていたんだ。兄上とミラーネ様は神託が降っただけではなく愛し合って結ばれる。そんな二人を君は祝福したと聞いていたんだ」
「祝福……」
もうこれ以上話を聞きたくない。ユリウス殿下はただ学校に来ないわたしを心配して来ただけらしい。
でもわたしの心はまた真っ黒に染まっていく。
ユリウス殿下が帰られてからわたしは部屋から出ることを拒否した。今までは軟禁状態だった。でもこれからはわたし自ら外には出ないと決めた。
わたしの知らないところで話が進む。
貴族の娘なんて駒でしかない。
わたしには心なんていらない。
お父様はそう思っているのかもしれない。
だったらわたしはもうみんなの前に姿なんて出さない。
ソラリア帝国に行くまでわたしは部屋から一歩も出ないと決めた。
そしてソラリア帝国に行ったら本当に姿を消してしまおうと思った。
捨てられたから、今度はわたしが捨てる。
わたしがいったい何をしたと言うのかしら?
シルヴィオ様に会って話したいと願っただけ。まるで罪人のような気分。
それでもユリウス殿下の前ではカーテシーをして挨拶をした。
「アイシャ嬢、痩せたね?食事は摂れていないの?」
わたしの顔を見た瞬間、眉根を寄せ心配そうに声をかけてくださる優しいユリウス殿下。
「………動くこともありませんからお腹が空くこともありません」
彼に八つ当たりするのはおかしい。そう思いながらもつい冷たい言葉が出てしまった。
どんどん性格が悪くなる自分に嫌気がさす。
「兄上とミラーネ様の婚約が決まった。来年には式を挙げる。アイシャ嬢がソラリア帝国へと留学すると聞いたんだ」
「わざわざわたしにそんなお話をしにきたんですか?」
執事長のマークが壁際に立っているのだけどとても怖い顔をしていた。
不敬に問われないか心配しているの?
そんなこと関係ないわ。
「すまない……君が学校へ全くこなくなったので心配していたんだ。
兄上との婚約解消はお互い了解のうえ円満に解消されたと聞いているんだけど、違うの?」
ユリウス殿下がなんだか様子がおかしいと感じて、さらに眉根を寄せた。
「円満に解消?そうですか……知りませんでした。わたしは軟禁されています、いつこの屋敷を抜け出すかわからないからと部屋から出してもらえません。常に監視されていますので学校へ行くことも友人にお会いすることもできません」
「お、お嬢様!」
マーク達が焦ってわたしの話を遮ろうとした。
「黙れ!」
ユリウス殿下がマーク達をひと睨みして黙らせた。
冷や汗をかいている我が家の執事達をみてわたしは心の中で少しだけ溜飲が下がる。
どんなに真っ黒黒な心なのかしら?なんだか可笑しくてクスッと笑ってしまった。
「知らなかった、僕が聞いた話と全く違っていたんだね。君は納得してソラリア帝国へ向かうと聞いていたんだ。兄上とミラーネ様は神託が降っただけではなく愛し合って結ばれる。そんな二人を君は祝福したと聞いていたんだ」
「祝福……」
もうこれ以上話を聞きたくない。ユリウス殿下はただ学校に来ないわたしを心配して来ただけらしい。
でもわたしの心はまた真っ黒に染まっていく。
ユリウス殿下が帰られてからわたしは部屋から出ることを拒否した。今までは軟禁状態だった。でもこれからはわたし自ら外には出ないと決めた。
わたしの知らないところで話が進む。
貴族の娘なんて駒でしかない。
わたしには心なんていらない。
お父様はそう思っているのかもしれない。
だったらわたしはもうみんなの前に姿なんて出さない。
ソラリア帝国に行くまでわたしは部屋から一歩も出ないと決めた。
そしてソラリア帝国に行ったら本当に姿を消してしまおうと思った。
捨てられたから、今度はわたしが捨てる。
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