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2話
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「何故?」
わたしはたくさん彼に言いたい言葉があった。
わたしが何をしたと言うの?
地下牢へどうして入れられなければいけないの?
あなたはそんなにわたしのことが嫌いなの?
精霊たちが殿下のそばから離れていく。わたしのそばに来て悲しそうな顔をしているわ。
わたしの頬を優しく撫でる精霊たち。代わりに泣いてくれるの?
キラキラした涙がとても綺麗だった。
連れてこられた地下牢には窓すらなかった。
トイレと毛布が一枚置かれているだけ。
「入れ」
わたしは罪人ではない。何度訴えても誰目聞く耳を持ってはくれない。
引き摺られ牢の中へと投げ入れられた。
そしてわたしは絶望の中地下牢で一人すごすことになった。
固い石の上に座り、眠くなれば石の上に横になって眠るしかない。
朝と夜、パンと水が運ばれてきた。
看守すらいない独房。
音のない世界は精霊たちがそばにいてくれなければ気が狂ってしまうかもしれない。
食べ物を運んできてくれる女性に「お父様に会いたい」と声をかけるも返事もしてくれない。
どのくらいの時間が経ったのか、お父様は会いにきてもくれない。
殿下の冷たい目を思い出すと体が震えてしまう。
わたしが何をしたと言うのだろう?婚約者として過ごした。彼に相応しくあろうと努力した。
ただそれだけだったのに。
なのに彼はミランダ様を選んだ。
ミランダ様は聖女の力を発現されて、神官長様の養女になったお方。
王城に何度も登城されて聖力で陛下のご病気を治された。
白銀の長い髪、色白の美しい顔立ち。殿下はすぐにミランダ様に夢中になった。
何度となくお二人に苦言を申し出たこともあった。
わたしが婚約者であることを。お二人が仲睦まじく過ごしたいのであれば婚約解消をしてからにして欲しいと。
なのにお二人は聞く耳を持たなかった。
そんなある日聖女様を襲った悲劇。
ううん、悲劇だったのかしら?ただ彼女に刃物を持った男が襲い掛かろうとした。それを周りの白騎士達が止めた。
そしてその男はわたしが命令したのだと言い自らの命を絶ったのだ。
わたしは聖女を殺そうとした犯人に仕立て上げられた。証言をした男は自決してしまい、いくら違うと言っても誰もわたしの話など聞いてくれなかった。
わたしはお父様にすら見捨てられてしまったみたい。
大好きだったお父様。お父様だけはわたしを見捨てないと思っていたのに。
殿下たちに断罪され婚約破棄をされたわたしにお父様は一度も会いにきてはくれない。
牢の中での生活は公爵令嬢として過ごしたわたしにはとても辛いものだった。
何もないジメジメした牢の中はカビ臭く息をするのも辛い。
食欲も落ちてしまった。
風呂にも入れずお手入れすらできない髪はボサボサで服も下着も着替えることができず痩せ細りもうまともに力すら入らない。
このまま誰にも会わずに死んでいくのかもしれない。
精霊たちの悲しそうな顔がわたしを見守る。
精霊に愛されているわたし。だけど精霊たちにはわたしを助ける力はない。
わたしの腕には呪いの手錠をかけられている。
精霊たちが近寄れないようにするためだ。それでも力の強い精霊がわたしを心配して少し離れたところで見守ってくれている。
みんなの声すら聞こえない、最近は頭がぼんやりして目も霞み始めた。
死が近づいているのがわかる。
そんなある日、殿下がミランダ様と共に地下牢へとやってきた。
二人はとても楽しそうにわたしの姿を見ていた。
「アーシャ、少しは反省したのか?僕の大切なミランダを襲わせようとするなんて、人として最低なことだと思わないのか?」
「アーシャ様、あなたは精霊に愛された愛し子だと言われているのに、人を殺めようとするなんて。なんて恐ろしい方なの?」
悲しみを堪えながらミランダ様はわたしを見た。
なのに目はわたしを嘲笑うかのように一瞬ニヤッと嗤った。
やっぱり、わたしは嵌められたのね?ミランダ様は殿下の婚約者であるわたしが邪魔だったのね。
もう何も答えたくない。わたしはずっと黙って二人から言われる言葉を聞いていた。
「お前は返事すらできないのか?」
苛立つ殿下に向けてわたしは微笑んだ。
「なっ!なんだその気持ち悪い笑顔は?」
殿下は不快そうにわたしを見て舌打ちする。
それでもわたしは何も話さなかった。
ううん、もう何を言っても無駄なのだと。諦めてしまったの。
「ねぇもう行きましょう。こんな汚いところにいたくないわ」
甘えるミランダ様を愛おしそうに見つめる殿下。
「ああ、なんだかとても臭いし、こんな小汚い女が僕の婚約者だったなんて、ほんと僕は見る目がなかったよ」
そう吐き捨てて殿下は去ろうとした。
そして────殿下は振り返って言った。
「この女を好きにしていいぞ」
騎士たちはニヤッと笑った。
ミランダ様はクスクス笑いながらわたしを見た。
「あら?純潔を白騎士に捧げられるなんて名誉なことだわ。ねっ?アーシャ様」
牢の中で逃げる場所なんてない。
「や、やめて!わたしは何日もお風呂に入っていないわ!汚いからやめて!」
嫌だ!いやだ!いくらなんでも犯されるなんて嫌!
白騎士たちはそんなわたしの抵抗などなかったかのように次々にわたしを犯していく。
わたしの心は壊れていく。
なんでこんなことになったの?
そんな日々が何日続いたのだろう。
精霊たちがわたしを見て泣いていた。
わたしは身も心も穢されてもう生きていくことすら嫌になった。
身体中が痛い。抵抗したため頬を叩かれ、数人に地面に押し付けられた。
代わる代わる男たちがわたしを犯していく。
口にはタオルを入れられて声すら出せない。舌を切って死ぬことすらできない。
早く誰かわたしを殺して!
光すら入らない地下牢で男たちに弄ばれてただ横になるだけのわたし。
わたしが何をしたと言うのでしょう?
わたしが殿下を好きになったのがいけなかったのかしら?
二人に苦言を言ったことがここまでの罰を受けなければいけないことだったの?
お父様……わたしはお父様に最後にお会いしたかった。
わたしは数日男たちに犯されて裸の状態でボロボロになって死んだ。
わたしの死後、わたしは………
わたしはたくさん彼に言いたい言葉があった。
わたしが何をしたと言うの?
地下牢へどうして入れられなければいけないの?
あなたはそんなにわたしのことが嫌いなの?
精霊たちが殿下のそばから離れていく。わたしのそばに来て悲しそうな顔をしているわ。
わたしの頬を優しく撫でる精霊たち。代わりに泣いてくれるの?
キラキラした涙がとても綺麗だった。
連れてこられた地下牢には窓すらなかった。
トイレと毛布が一枚置かれているだけ。
「入れ」
わたしは罪人ではない。何度訴えても誰目聞く耳を持ってはくれない。
引き摺られ牢の中へと投げ入れられた。
そしてわたしは絶望の中地下牢で一人すごすことになった。
固い石の上に座り、眠くなれば石の上に横になって眠るしかない。
朝と夜、パンと水が運ばれてきた。
看守すらいない独房。
音のない世界は精霊たちがそばにいてくれなければ気が狂ってしまうかもしれない。
食べ物を運んできてくれる女性に「お父様に会いたい」と声をかけるも返事もしてくれない。
どのくらいの時間が経ったのか、お父様は会いにきてもくれない。
殿下の冷たい目を思い出すと体が震えてしまう。
わたしが何をしたと言うのだろう?婚約者として過ごした。彼に相応しくあろうと努力した。
ただそれだけだったのに。
なのに彼はミランダ様を選んだ。
ミランダ様は聖女の力を発現されて、神官長様の養女になったお方。
王城に何度も登城されて聖力で陛下のご病気を治された。
白銀の長い髪、色白の美しい顔立ち。殿下はすぐにミランダ様に夢中になった。
何度となくお二人に苦言を申し出たこともあった。
わたしが婚約者であることを。お二人が仲睦まじく過ごしたいのであれば婚約解消をしてからにして欲しいと。
なのにお二人は聞く耳を持たなかった。
そんなある日聖女様を襲った悲劇。
ううん、悲劇だったのかしら?ただ彼女に刃物を持った男が襲い掛かろうとした。それを周りの白騎士達が止めた。
そしてその男はわたしが命令したのだと言い自らの命を絶ったのだ。
わたしは聖女を殺そうとした犯人に仕立て上げられた。証言をした男は自決してしまい、いくら違うと言っても誰もわたしの話など聞いてくれなかった。
わたしはお父様にすら見捨てられてしまったみたい。
大好きだったお父様。お父様だけはわたしを見捨てないと思っていたのに。
殿下たちに断罪され婚約破棄をされたわたしにお父様は一度も会いにきてはくれない。
牢の中での生活は公爵令嬢として過ごしたわたしにはとても辛いものだった。
何もないジメジメした牢の中はカビ臭く息をするのも辛い。
食欲も落ちてしまった。
風呂にも入れずお手入れすらできない髪はボサボサで服も下着も着替えることができず痩せ細りもうまともに力すら入らない。
このまま誰にも会わずに死んでいくのかもしれない。
精霊たちの悲しそうな顔がわたしを見守る。
精霊に愛されているわたし。だけど精霊たちにはわたしを助ける力はない。
わたしの腕には呪いの手錠をかけられている。
精霊たちが近寄れないようにするためだ。それでも力の強い精霊がわたしを心配して少し離れたところで見守ってくれている。
みんなの声すら聞こえない、最近は頭がぼんやりして目も霞み始めた。
死が近づいているのがわかる。
そんなある日、殿下がミランダ様と共に地下牢へとやってきた。
二人はとても楽しそうにわたしの姿を見ていた。
「アーシャ、少しは反省したのか?僕の大切なミランダを襲わせようとするなんて、人として最低なことだと思わないのか?」
「アーシャ様、あなたは精霊に愛された愛し子だと言われているのに、人を殺めようとするなんて。なんて恐ろしい方なの?」
悲しみを堪えながらミランダ様はわたしを見た。
なのに目はわたしを嘲笑うかのように一瞬ニヤッと嗤った。
やっぱり、わたしは嵌められたのね?ミランダ様は殿下の婚約者であるわたしが邪魔だったのね。
もう何も答えたくない。わたしはずっと黙って二人から言われる言葉を聞いていた。
「お前は返事すらできないのか?」
苛立つ殿下に向けてわたしは微笑んだ。
「なっ!なんだその気持ち悪い笑顔は?」
殿下は不快そうにわたしを見て舌打ちする。
それでもわたしは何も話さなかった。
ううん、もう何を言っても無駄なのだと。諦めてしまったの。
「ねぇもう行きましょう。こんな汚いところにいたくないわ」
甘えるミランダ様を愛おしそうに見つめる殿下。
「ああ、なんだかとても臭いし、こんな小汚い女が僕の婚約者だったなんて、ほんと僕は見る目がなかったよ」
そう吐き捨てて殿下は去ろうとした。
そして────殿下は振り返って言った。
「この女を好きにしていいぞ」
騎士たちはニヤッと笑った。
ミランダ様はクスクス笑いながらわたしを見た。
「あら?純潔を白騎士に捧げられるなんて名誉なことだわ。ねっ?アーシャ様」
牢の中で逃げる場所なんてない。
「や、やめて!わたしは何日もお風呂に入っていないわ!汚いからやめて!」
嫌だ!いやだ!いくらなんでも犯されるなんて嫌!
白騎士たちはそんなわたしの抵抗などなかったかのように次々にわたしを犯していく。
わたしの心は壊れていく。
なんでこんなことになったの?
そんな日々が何日続いたのだろう。
精霊たちがわたしを見て泣いていた。
わたしは身も心も穢されてもう生きていくことすら嫌になった。
身体中が痛い。抵抗したため頬を叩かれ、数人に地面に押し付けられた。
代わる代わる男たちがわたしを犯していく。
口にはタオルを入れられて声すら出せない。舌を切って死ぬことすらできない。
早く誰かわたしを殺して!
光すら入らない地下牢で男たちに弄ばれてただ横になるだけのわたし。
わたしが何をしたと言うのでしょう?
わたしが殿下を好きになったのがいけなかったのかしら?
二人に苦言を言ったことがここまでの罰を受けなければいけないことだったの?
お父様……わたしはお父様に最後にお会いしたかった。
わたしは数日男たちに犯されて裸の状態でボロボロになって死んだ。
わたしの死後、わたしは………
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