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The Ugly Duckling

medical examination 4/17

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「はよー!!」

 けれど、言葉は、勢いよく開いた扉の音に阻まれた。

「あれ? あー。兄貴また翡翠さんにセクハラしてただろ!」

 リビングのドアからはキッチンは見えない。だから、紅二が二人の視界に入ってくる前に、一青は翡翠を離した。いや、それでも、手は握ったままだった。繋がれた指を通して、昨夜から溜まっていた魔光が一青へと流れていく。

「セクハラ? スキンシップだろが。わりーかよ」

 翡翠の肩を抱いて、ぐい。と、抱きよせて、一青が言う。
 完全に開き直っている。さっきまでの真剣な顔が嘘のようなドヤ顔でまるで紅二に見せつけているみたいだ。

「うあ。開き直ったよ。
 ん? てか…わ。なになに? 翡翠さんメシ作ってくれたの? すげー。ごーか!」

 一青とのやり取りなんてすっかり忘れました。とでもいうようにキラキラした笑顔で紅二は言った。カウンタの向こうから身を乗り出して、キッチンを覗いて、目を輝かせている。

「マジで? うまそー❤」

 朝から屈託ない笑顔で喜んでくれる紅二に、嬉しくなって翡翠もつられて微笑む。

「あと、オムレツだけ作ったら、ご飯にしよう? 顔洗っておいで」

「はあい!」

 翡翠の言葉に素直に返事をして、紅二は洗面所に走り出した。
 素直で、天真爛漫で、子供らしくて可愛い。その姿を見送ってから、翡翠はオムレツの準備を始めた。

「紅二君はいい子だな」

 かしゃかしゃと音をさせて玉子を泡立てながら、翡翠は言う。

「ん。自慢の弟。緋色にそっくりで誰にでも好かれる」

 横に立って翡翠の手元を見つめながら一青は言った。『見本を見せて』と言ったのはまんざら嘘ではないらしい。

「あー。紅二には内緒な? 調子に乗るから」

 苦笑して一青は言った。二人の関係は翡翠には本当に羨ましかった。信頼しあって、大切にしあって、時にはふざけ合ったり、喧嘩したりもするんだろう。でも、きっと、決して終わることなんてない関係だと思う。

「俺……も」

 一青のプロポーズを受け入れたら、紅二は翡翠にとっても弟ということになるんだろうか。そうなったら、きっと楽しい。そうなれたらいいと思う。
 思うと、また、腹の奥がずくん。と、痛んだ。
 だから、翡翠は、言葉の先を飲み込んだ。
 まだ、時間はあるはずだ。もう少しだけ、待っていてほしい。
 汚れた自分を曝け出す覚悟ができるまで。

「翡翠さ~ん! 顔洗ってきた! 飯にしよ~!!」

 ダイニングに戻ってきた紅二に一青は苦笑して、翡翠はほっと安堵の吐息を漏らした。
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