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第1章 勇者を探して
第11話 聖女と勇者
しおりを挟む私達は、地面にめり込んだワイバーンを前に佇んていた。
【どうするって、とりあえず埋めとくか?】
「放置する訳にもいかないわね。此処から半日程進んだところに少し大きな街が有ったよね。そこの冒険者ギルドに引き取ってもらえないかな?」
(わかりました。私がひとっ走りして来ます。)
そう言って、マリーナは馬で走り去った。
はあ、今日はここで野宿か、そう言って男を睨む。男は、我関せずといったふうに、座り込んで杖でワイバーンを突いていた。
【追い払うだけにすれば良かった】
何か呟いている。
「いつの間に、あんな魔法を習得してたの?」
【ああ、あれか初めてやってみたらできた。】
あ~、始まりました。ハチャメチャな話が、本当にこの男には常識が通じない。
「練習も無しにいきなり使える訳無いじゃない。」
【練習はやってたよ。魔力って奴を極限まで絞ってだが。】
ふと、森で見た葉っぱを切る練習を思い出した。
この話はここで打ち切った。もうすぐ日が沈む、野宿の準備をしないと。
夜になりボーっと焚き火の炎を眺めていると、男が話し掛けてきた。
【なあ、そういえば、何でルトって街に行くんだ? 故郷なのか?】
「勇者を探す為です。」
私は勇者について話始めた。
この世界には、聖女、勇者、賢者の3人が居ること。
ただし、いつの時代にもいるわけではなく、数百年に一度現れるのだと。
この3人が現れる時、世界に危機が訪れる。いや、世界に危機が訪れる時、3人が現れるのだ。
聖女は勇者を探し、勇者は賢者を探し、賢者は聖女を探す。
伝承に伝わる詩の一節だ。
「実際、世界にどんな危機が訪れようとしているのか? 誰もわからないわ
でも、聖女となったからには、使命は果たすつもりよ。」
【でもよお、何でお嬢さんが聖女なんだ? 何で聖女って判ったんだ?】
「この杖よ、この杖は、聖女にしか使えないらしいの。でも、私はこの杖を使うことができた。それだけの事よ。」
【で、お目当ての勇者ってのは、どうやって見分けるんだ。何か目印でも有るのか?】
「わからない。勇者を見分ける方法なんて、何も言い伝えられていないもの。
でも、ルトに居るって事よだけは、はっきりしている。勇者はいつもルトに現れるから。」
【なるほど、そんじゃ、賢者はどうなんだ。居場所は判るのか?】
「それが、賢者については何も残されて居ないの。全く何も。でも、伝承通りなら、聖女を探すらしいからそのうちに賢者の方からやってくるでしょう。」
「さあ、もう寝ましょう。誰かさんのせいで明日も忙しく成りそうだしね。じゃあ警戒をお願いね。」
私は、横になり目を閉じた。勇者は本当にルトに現れるのだろうか?
もし居るとして、見つけられるだろうか?
でも、どんな人なのだろうか?
そんな事を考えているうちに、いつしか深い眠りへと、落ちていった。
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