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第1章 勇者を探して
第6話 魔法
しおりを挟む騒ぎを聞き付けて、村人達が松明を手にゾロゾロと出てきた。
皆、倒れているゴブリンの群れを見て絶句している様だ。
その時、老人が声を掛けてきた。
(どういう事か、説明して貰えるかの?)
私は、自分が聖女である事を明かし、ゴブリンの群れがこの村に攻め入ろうとしていた事、この男が独りでやっつけた事を話した。
(それはそれは、本当にありがとうございます。)
そう言って、老人は深々と頭を下げた。
聞けば、老人は村長との事で、村長のお家に招き、食事を頂いた。
途中に置いて着た馬と荷物は、若い衆が取って来てくれた。
(最近、この辺りでは ゴブリンの被害が出ているのですじゃ。 ついこの前は 近くの村が襲われて大きな被害が出たところでしたのじゃ。)
聞けば、近々、領主が兵士を派遣してくれる事になっていたと言う。
そんな話しを村長と話している間、男は黙々と料理を食べていた。
夜もだいぶ更け、準備してくれた部屋で別々に休んだ。
翌朝、目が覚めると外で、ブンブンと音がしている。
音に誘われる様に外に出てみると、男が上半身裸で素振りをしていた。
後ろから、こっそりと近づき、黙ってその様子を見つめる。
鍛えられた肉体、あちこちには無数の刀傷。そんな様子に見惚れていると、振り向きもせずに、男が言った。
【なあ、魔法っていうやつを、教えてくれよ。】
こっそりと近づいたのに、とっくに気付かれていたようだ。
「判ったわ。両手を前に出して。ちょっと、ちゃんと服を着て!」
男は、服を着ると、目をキラキラさせながら、両手を前に、出した。
「それにしても、変わった服よね。」
【着物がそんなに珍しいか?】
「まあいいわ。目を閉じて魔力の流れを感じて」
私は、男の前に立ち、両手をつなぐ。
そして、右手から左手にゆっくりと魔力を流す。
これは、魔力量を測るテストだ。
魔力が少ないと流した魔力が左手に戻ってこない。逆に魔力量が多い、少しの魔力でも戻って来る。
魔力を持たない者だと、身体への負担が大きい2で、少量の魔力から始めるのが常識なのだ。
「え、どういう事?」
少量の魔力を流し込んだはずなのに、倍以上になって、左手に魔力が返って来た。
ゆっくりと手を離すと
「魔力はあるみたいだから、素質は大丈夫よ。」
【おお、そうか】
無邪気に喜んでいる。
「じゃあ、どれかひとつ、実際にやって見ましょう。」
【どんなのが、あるんだ。この前みたいな、薪に火を着ける実用的なのもいいけど、何かカッコいいのが良いな。
さあ、早く教えてくれよ。】
まるで子どもにせがまれている気分だ。
おまけに、饒舌になってるし、キャラ変わりすぎだよ。
私は、魔法の種類が、火、水、土、風、光の5つであり、それぞれに様々な魔法がある事などを説明した。
【そりゃ変だ。光があるなら、闇があるはずだ。】
「貴方の言う通りよ。でもね、闇魔法なんて誰も使えないわ。あと魔法の種類は、本当は7つあるの。もう一つは、神聖魔法よ。これも誰も使えないわ。」
「さあ、どれにする。初期の魔法ひとつだけ、教えて上げるわ。」
男は、腕を組み真剣に悩み始めた。
それにしても、闇魔法に気付くなんて、意外と鋭いのかも。
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