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家族~ルーデンス旅芸人一座~
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「すみませんシューイチさん!お待たせしました!」
「遅くなってごめんね、お兄ちゃん!」
エナとテレアが宿屋から出てきて、待っていた俺に駆け寄ってくるも、隣でちょこんと腰かけている褐色の少女を見て首をかしげる。
「えっとシューイチさん、その子は?」
「ええと、この子はフリル=フルリルといってさっき」
「……このおにーさんに誘拐されてきました」
エナとテレアの顔が真顔で固定されて固まってしまった。
「してねーよ!!お前さんが迷子になってただけだろうが!?」
「……ナイスツッコミ……グッド」
なんでサムズアップしてるのこの子!?ほんとわけわかんないんだけど!?
このたった数分で、エナやテレアと培ってきた信頼関係を失ってしまうなんてことになったら、俺はもうシエルに土下座して再び異世界転生するしか道はないので本当に勘弁してもらいたい。
「そっそうですよー!シューイチさんがそんなことするわけないじゃないですかー!」
「うっうん!テレアはお兄ちゃんのこと信じてるよ!」
とか言いながら、なんで二人とも俺から距離取ってるんですかね?
「……さすがにやりすぎた……ごめんなさい、今のは冗談」
フリルが二人に近づいていき、誘拐発言を撤回してくれた。
本当に生きた心地がしなかったので本当に本当に勘弁してほしい。
「えっと……私はエナ=アーディスです」
「テレア=シルクスです……」
テレアが早速人見知りを発動し、エナの後ろに隠れてしまった。
「……ちっちっちっち?」
「テレア、猫さんじゃないんだけど……?」
なにをやっているんだか……。
「そういうわけなんで、みんなで街を散策するがてらこの子の家族を探してあげたいと思ってるんだけど」
「前から思ってましたけど、シューイチさんって結構お人よしですよね?」
そうか?俺は結構他人には厳しいつもりだぞ?
「いいですよ?特に目的地もあるわけではないですからね」
「ありがとな、エナ!そんじゃ行くかフリル」
「……っちっちっちっち?」
「にゃ……にゃあ?」
まだやってたのか。
そんなこんなで俺たちは連れ立って街の中を散策していく。
なんていうか国ごとに活気の違いってあるよな?
ライノスは牧歌的な感じののんびりとした活気だったのに対し、マグリドは現代日本のような他人にあまり関わらない閉じたコミュニティの集まりのような活気みたいなものがあふれていた。
ちなみこのリンデフランデはマグリドとは正反対の他人との繋がりがもたらす活気で満ちている。
良く他人とおしゃべりしてる人たちが目につくしな。
「シューイチさんは新しい場所に来るたびに本当に楽しそうにするので、見ていて微笑ましいですよ」
「だって楽しくないか?国それぞれの特徴とかよくわかるしさ!」
基本的に日本から一歩も出た事なかった俺からすれば、とても新鮮な光景だった。
「まあわからなくもないですけどね」
「なっ?そうだろう?」
「……シューイチ子供みたい」
今さっき出会ったばかりの少女に訳知り顔でため息を吐かれた。
お前さんに俺の何がわかるというのだね?
「お兄ちゃん?フリルお姉ちゃんの家族を探すんだよね?それならどんな特徴の人なのかとか聞いておいた方がいいんじゃないかな?」
「それもそうだな……フリル?はぐれてしまった家族の特徴とか教えてくれないか?」
「……全員私とは似ても似つかない」
いきなり探すのを断念せざるを得ない情報をぶち込んでくるのやめてくれませんかね?
「……多分適当に歩いてればそのうち家族の誰かと会えると思う。……沢山いるから」
「フリルの家族ってそんなに沢山いるのか?」
大家族かなにかなのかな?
「フリルお姉ちゃんはこの街に何をしに来てるのかな?」
「……巡業」
「じゅんぎょう?」
巡業ね……テレアの家族って劇団員とかか?
一応相撲業界の用語の一つでもあるが、この世界に相撲文化があるかもどうかも知らないし、おそらくそっちではないだろう。
「あの……もしかしてフリルちゃんって……」
エナが何かに思い立ったらしく口を開こうとしたその瞬間―――
「あーっ!フリルやっと見つけた!!」
いきなり目の前に現れた少年が、俺たちを……フリルを指さしながら叫んだ。
「何やってんだよフリル!みんな心配してるんだぞ!!」
その少年が大声でそう言いながら、俺たちの元に駆け寄ってくる。
「……このおにーさんにゆ―――」
「お前さんちょっと黙ってような?」
とっさにフリルの口を塞いだ俺は、フリルの知り合いらしき少年に質問すべく口を開く。
「えっと……お前さんはフリルの家族?」
「なんだよお前!フリルに手を出したらただじゃおかねーぞ!」
まあ好戦的なことで。
それだけフリルのことを心配してたってことなんだろうけどな。
「とりあえず落ち着いて聞いてくれな?俺たちはフリルが迷子だっていうんで家族を探してたんだよ」
「そっそうだったのか……」
ようやくフリルを見つけたと思ったら、変な奴らが周りにいたせいで気が立っていただけで、落ち着いて話せばわからない相手でなかったようだ。
「まあフリルが突然いなくなるのはいつものことだけど、とりあえず見つけてくれてありがとな!」
「……いつものことなんだからわざわざ探しにこなくてもいいのに」
「こらっ!折角心配して探しに来てくれたのに、その言い方はダメだろ?」
俺に怒られたフリルが、こっちを見上げてから再び少年のほうに向きなおり―――
「……ごめんなさい」
「いっいや……別にいいんだけどさ。無事だったんだし」
素直に謝ったのだった。
口を開けば変な冗談が飛んでくるが、ちゃんと子供らしい素直な部分があるみたいで少し安心した。
「よしよしちゃんと謝れたな?偉いぞフリル」
「……子供扱いはNG」
頭を撫でてやるとぴしゃりと手を払われた。
顔を覗き見ると少し赤くなっていたので照れ隠しなのだろうと判断した。
「それじゃあフリルの家族も見つかったことだし、俺たちは行くよ。じゃあな二人とも」
「あっちょっと待てよ!」
踵を返し歩こうとしたところで少年に呼び止められる。
「オイラの名前はダックスっていうんだ!フリルを見つけてくれたお礼をさせてくれ!」
「お礼って言われてもなぁ」
別にお礼がほしくてフリルの保護をしたわけじゃないんだが。
「そういうわけにはいかないよ!受けた恩を返すのは俺たち家族の掟だ!ちゃんと恩を返さないと俺が怒られちまう!」
どうしたもんかと思い、エナとテレアに顔を向ける。
10秒ほど悩んだ後、エナが名案を思い付いたとばかりに顔を上げて口を開いた。
「それならダックス君?私たちはルーデンス旅芸人一座の公演場所に行きたいと思ってたんですよ!良かったら案内してくれませんか?」
さすがエナだ。確かに名案だなこれは。
俺たちはちょうどそのルーデンス旅芸人一座の公演に興味があったところだからちょうどいい。
エナのその提案を受けたダックスがきょとんとした顔になる。
「なんだ?姉ちゃんたちはオイラたちを見に来たのか?それなら丁度いいや!案内してやるよ!」
いや別にお前さんを見に来たわけじゃ……とここまで思ったところで一つの考えに辿り着く。
「もしかしてフリルとダックスってルーデンス旅芸人一座の関係者?」
「そうみたいですね」
エナがさっき何かに気が付いてたみたいだったけど、このことだったのか。
「え?テレアは全然気が付かなかったよ」
テレアは戦闘関連では抜群の動きの良さを見せるが、こういうときはてんでどんくさい。
まあそれがテレアらしいといえばらしいんだけどね。
「そんじゃ兄ちゃんたち付いてきてくれよ!はぐれんなよ!特にフリル!」
「……子供じゃないんだし」
「いやお前さんはどう見ても子供だからな?」
そう言った俺をムッとした表情で見てくるフリルに笑顔で返しながら、俺たちはダックスの後についてリンデフランデの街を連れ立って歩いて行った。
ほどなくして俺たちは巨大なサーカステントの建てられた場所へとやってきた。
赤と白のストライプで強調された巨大なテントの周辺には、俺の世界でいうところのライオンや象みたいな動物が檻の中で鎮座しており、団員と思われる人たちが芸の練習に励んでいた。
どうやらまだ公演時間までは時間があるみたいだな。
そんな光景を眺めていると練習していた団員の一人が俺たちを見つけて駆け寄ってきた。
「フリル!あんたどこ行ってたの!?全くアンタはいつもふらふらと勝手にどっか行って!」
とても背の高いポニーテールのお姉さんが俺の隣にいたフリルを叱りつける。
俺より頭一つ分大きいせいで思わず見上げてしまう。はっきり言って凄い威圧感だった。
「ラフタ姉ちゃん!この兄ちゃんたちがフリルを見つけてくれたんだ!」
ダックスにラフタと呼ばれたポニーテールのお姉さんが俺たち全員を一瞥する。
「そうだったのか……すまなかったね迷惑かけて!この子すぐに変なこと口走るから相手するの大変だったでしょ?」
「ええそりゃあもう」
威圧感に負けて思わず本音が口を突いて出てきてしまったので、気を悪くさせたかと思いラフタさんお顔を覗き見るも、きょとんした顔をしたのち豪快に笑いだした。
「あっはっはっはっはっは!!正直だねアンタ!いいよいいよそういうの嫌いじゃないよ!!」
「痛い痛い」
言いながら俺の背中をバシバシと叩いてくる。
どうやらラフタさんは見た目通りの豪快な人のようだった。
「アタシはラフタ!このルーデンス旅芸人一座の団員の中で一番の年上ってことで、みんなのまとめ役なんかやらされてんだ!フリルのことを見つけてくれてありがとな!」
豪快に笑いながら自己紹介をしたラフタさんがようやく背中を叩くのをやめてくれた。
背中がひりひりする……。
「お兄ちゃん、大丈夫……?」
あまりも痛そうに見えたのか、テレアが心配してくれる。
その優しさが背中に染みわたるでぇ……。
「この兄ちゃんたち、オイラたちのこと見に来てくれたんだってさ」
「そうかそうか!フリルを保護してくれたお礼だ!入場料おまけしてやるから楽しんで行っておくれよ!」
決してただにするとは言わないあたりがちゃっかりしてるなぁと思った。
「……公演開始まで時間あるみたいだからその辺散歩してくる」
体よく逃げようとしたフリルを、逃さないとばかりにラフタさんが頭をむんずと押さえつける。
「アンタは最後の調整があるだろ?あと勝手にいなくなったことを座長に謝ってきな?」
「……えー?」
フリルがラフタさんに対して抗議の目線を送るも、そんなものはお構いなしとばかりにフリルを強引にテントの中へと連れていった。
さっきも思ったけど豪快な人だなぁ……。
「そんじゃ開演まで時間あるからさ、オイラたちの練習でも見ながら待っててくれよ!あと二時間くらいだからさ!」
そんなこんなで俺たちは開演時間までダックスたちの芸の練習を見学しながら時間を潰すこととなったのだった。
「遅くなってごめんね、お兄ちゃん!」
エナとテレアが宿屋から出てきて、待っていた俺に駆け寄ってくるも、隣でちょこんと腰かけている褐色の少女を見て首をかしげる。
「えっとシューイチさん、その子は?」
「ええと、この子はフリル=フルリルといってさっき」
「……このおにーさんに誘拐されてきました」
エナとテレアの顔が真顔で固定されて固まってしまった。
「してねーよ!!お前さんが迷子になってただけだろうが!?」
「……ナイスツッコミ……グッド」
なんでサムズアップしてるのこの子!?ほんとわけわかんないんだけど!?
このたった数分で、エナやテレアと培ってきた信頼関係を失ってしまうなんてことになったら、俺はもうシエルに土下座して再び異世界転生するしか道はないので本当に勘弁してもらいたい。
「そっそうですよー!シューイチさんがそんなことするわけないじゃないですかー!」
「うっうん!テレアはお兄ちゃんのこと信じてるよ!」
とか言いながら、なんで二人とも俺から距離取ってるんですかね?
「……さすがにやりすぎた……ごめんなさい、今のは冗談」
フリルが二人に近づいていき、誘拐発言を撤回してくれた。
本当に生きた心地がしなかったので本当に本当に勘弁してほしい。
「えっと……私はエナ=アーディスです」
「テレア=シルクスです……」
テレアが早速人見知りを発動し、エナの後ろに隠れてしまった。
「……ちっちっちっち?」
「テレア、猫さんじゃないんだけど……?」
なにをやっているんだか……。
「そういうわけなんで、みんなで街を散策するがてらこの子の家族を探してあげたいと思ってるんだけど」
「前から思ってましたけど、シューイチさんって結構お人よしですよね?」
そうか?俺は結構他人には厳しいつもりだぞ?
「いいですよ?特に目的地もあるわけではないですからね」
「ありがとな、エナ!そんじゃ行くかフリル」
「……っちっちっちっち?」
「にゃ……にゃあ?」
まだやってたのか。
そんなこんなで俺たちは連れ立って街の中を散策していく。
なんていうか国ごとに活気の違いってあるよな?
ライノスは牧歌的な感じののんびりとした活気だったのに対し、マグリドは現代日本のような他人にあまり関わらない閉じたコミュニティの集まりのような活気みたいなものがあふれていた。
ちなみこのリンデフランデはマグリドとは正反対の他人との繋がりがもたらす活気で満ちている。
良く他人とおしゃべりしてる人たちが目につくしな。
「シューイチさんは新しい場所に来るたびに本当に楽しそうにするので、見ていて微笑ましいですよ」
「だって楽しくないか?国それぞれの特徴とかよくわかるしさ!」
基本的に日本から一歩も出た事なかった俺からすれば、とても新鮮な光景だった。
「まあわからなくもないですけどね」
「なっ?そうだろう?」
「……シューイチ子供みたい」
今さっき出会ったばかりの少女に訳知り顔でため息を吐かれた。
お前さんに俺の何がわかるというのだね?
「お兄ちゃん?フリルお姉ちゃんの家族を探すんだよね?それならどんな特徴の人なのかとか聞いておいた方がいいんじゃないかな?」
「それもそうだな……フリル?はぐれてしまった家族の特徴とか教えてくれないか?」
「……全員私とは似ても似つかない」
いきなり探すのを断念せざるを得ない情報をぶち込んでくるのやめてくれませんかね?
「……多分適当に歩いてればそのうち家族の誰かと会えると思う。……沢山いるから」
「フリルの家族ってそんなに沢山いるのか?」
大家族かなにかなのかな?
「フリルお姉ちゃんはこの街に何をしに来てるのかな?」
「……巡業」
「じゅんぎょう?」
巡業ね……テレアの家族って劇団員とかか?
一応相撲業界の用語の一つでもあるが、この世界に相撲文化があるかもどうかも知らないし、おそらくそっちではないだろう。
「あの……もしかしてフリルちゃんって……」
エナが何かに思い立ったらしく口を開こうとしたその瞬間―――
「あーっ!フリルやっと見つけた!!」
いきなり目の前に現れた少年が、俺たちを……フリルを指さしながら叫んだ。
「何やってんだよフリル!みんな心配してるんだぞ!!」
その少年が大声でそう言いながら、俺たちの元に駆け寄ってくる。
「……このおにーさんにゆ―――」
「お前さんちょっと黙ってような?」
とっさにフリルの口を塞いだ俺は、フリルの知り合いらしき少年に質問すべく口を開く。
「えっと……お前さんはフリルの家族?」
「なんだよお前!フリルに手を出したらただじゃおかねーぞ!」
まあ好戦的なことで。
それだけフリルのことを心配してたってことなんだろうけどな。
「とりあえず落ち着いて聞いてくれな?俺たちはフリルが迷子だっていうんで家族を探してたんだよ」
「そっそうだったのか……」
ようやくフリルを見つけたと思ったら、変な奴らが周りにいたせいで気が立っていただけで、落ち着いて話せばわからない相手でなかったようだ。
「まあフリルが突然いなくなるのはいつものことだけど、とりあえず見つけてくれてありがとな!」
「……いつものことなんだからわざわざ探しにこなくてもいいのに」
「こらっ!折角心配して探しに来てくれたのに、その言い方はダメだろ?」
俺に怒られたフリルが、こっちを見上げてから再び少年のほうに向きなおり―――
「……ごめんなさい」
「いっいや……別にいいんだけどさ。無事だったんだし」
素直に謝ったのだった。
口を開けば変な冗談が飛んでくるが、ちゃんと子供らしい素直な部分があるみたいで少し安心した。
「よしよしちゃんと謝れたな?偉いぞフリル」
「……子供扱いはNG」
頭を撫でてやるとぴしゃりと手を払われた。
顔を覗き見ると少し赤くなっていたので照れ隠しなのだろうと判断した。
「それじゃあフリルの家族も見つかったことだし、俺たちは行くよ。じゃあな二人とも」
「あっちょっと待てよ!」
踵を返し歩こうとしたところで少年に呼び止められる。
「オイラの名前はダックスっていうんだ!フリルを見つけてくれたお礼をさせてくれ!」
「お礼って言われてもなぁ」
別にお礼がほしくてフリルの保護をしたわけじゃないんだが。
「そういうわけにはいかないよ!受けた恩を返すのは俺たち家族の掟だ!ちゃんと恩を返さないと俺が怒られちまう!」
どうしたもんかと思い、エナとテレアに顔を向ける。
10秒ほど悩んだ後、エナが名案を思い付いたとばかりに顔を上げて口を開いた。
「それならダックス君?私たちはルーデンス旅芸人一座の公演場所に行きたいと思ってたんですよ!良かったら案内してくれませんか?」
さすがエナだ。確かに名案だなこれは。
俺たちはちょうどそのルーデンス旅芸人一座の公演に興味があったところだからちょうどいい。
エナのその提案を受けたダックスがきょとんとした顔になる。
「なんだ?姉ちゃんたちはオイラたちを見に来たのか?それなら丁度いいや!案内してやるよ!」
いや別にお前さんを見に来たわけじゃ……とここまで思ったところで一つの考えに辿り着く。
「もしかしてフリルとダックスってルーデンス旅芸人一座の関係者?」
「そうみたいですね」
エナがさっき何かに気が付いてたみたいだったけど、このことだったのか。
「え?テレアは全然気が付かなかったよ」
テレアは戦闘関連では抜群の動きの良さを見せるが、こういうときはてんでどんくさい。
まあそれがテレアらしいといえばらしいんだけどね。
「そんじゃ兄ちゃんたち付いてきてくれよ!はぐれんなよ!特にフリル!」
「……子供じゃないんだし」
「いやお前さんはどう見ても子供だからな?」
そう言った俺をムッとした表情で見てくるフリルに笑顔で返しながら、俺たちはダックスの後についてリンデフランデの街を連れ立って歩いて行った。
ほどなくして俺たちは巨大なサーカステントの建てられた場所へとやってきた。
赤と白のストライプで強調された巨大なテントの周辺には、俺の世界でいうところのライオンや象みたいな動物が檻の中で鎮座しており、団員と思われる人たちが芸の練習に励んでいた。
どうやらまだ公演時間までは時間があるみたいだな。
そんな光景を眺めていると練習していた団員の一人が俺たちを見つけて駆け寄ってきた。
「フリル!あんたどこ行ってたの!?全くアンタはいつもふらふらと勝手にどっか行って!」
とても背の高いポニーテールのお姉さんが俺の隣にいたフリルを叱りつける。
俺より頭一つ分大きいせいで思わず見上げてしまう。はっきり言って凄い威圧感だった。
「ラフタ姉ちゃん!この兄ちゃんたちがフリルを見つけてくれたんだ!」
ダックスにラフタと呼ばれたポニーテールのお姉さんが俺たち全員を一瞥する。
「そうだったのか……すまなかったね迷惑かけて!この子すぐに変なこと口走るから相手するの大変だったでしょ?」
「ええそりゃあもう」
威圧感に負けて思わず本音が口を突いて出てきてしまったので、気を悪くさせたかと思いラフタさんお顔を覗き見るも、きょとんした顔をしたのち豪快に笑いだした。
「あっはっはっはっはっは!!正直だねアンタ!いいよいいよそういうの嫌いじゃないよ!!」
「痛い痛い」
言いながら俺の背中をバシバシと叩いてくる。
どうやらラフタさんは見た目通りの豪快な人のようだった。
「アタシはラフタ!このルーデンス旅芸人一座の団員の中で一番の年上ってことで、みんなのまとめ役なんかやらされてんだ!フリルのことを見つけてくれてありがとな!」
豪快に笑いながら自己紹介をしたラフタさんがようやく背中を叩くのをやめてくれた。
背中がひりひりする……。
「お兄ちゃん、大丈夫……?」
あまりも痛そうに見えたのか、テレアが心配してくれる。
その優しさが背中に染みわたるでぇ……。
「この兄ちゃんたち、オイラたちのこと見に来てくれたんだってさ」
「そうかそうか!フリルを保護してくれたお礼だ!入場料おまけしてやるから楽しんで行っておくれよ!」
決してただにするとは言わないあたりがちゃっかりしてるなぁと思った。
「……公演開始まで時間あるみたいだからその辺散歩してくる」
体よく逃げようとしたフリルを、逃さないとばかりにラフタさんが頭をむんずと押さえつける。
「アンタは最後の調整があるだろ?あと勝手にいなくなったことを座長に謝ってきな?」
「……えー?」
フリルがラフタさんに対して抗議の目線を送るも、そんなものはお構いなしとばかりにフリルを強引にテントの中へと連れていった。
さっきも思ったけど豪快な人だなぁ……。
「そんじゃ開演まで時間あるからさ、オイラたちの練習でも見ながら待っててくれよ!あと二時間くらいだからさ!」
そんなこんなで俺たちは開演時間までダックスたちの芸の練習を見学しながら時間を潰すこととなったのだった。
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