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到着~フリルが来りて~
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地獄のような夕食タイムが終わり、今日はこのままこの休憩スペースで一泊することなった俺たちは、早速テントを張り順番に見張りをすることにして休むこととなった。
ちなみにテレアは見張りの役目から除外してある。さすがにまだ子供だし辛いだろうと俺とエナで相談しそう判断をくだした。
二人で相談する横で、テレアは自分にだって見張りはできると最後まで主張していたが、今はすっかり眠気に負けてテントの中ですやすやと寝息を立てて眠っている。
折角なのでこの時間を利用して、ヤクトさんにもらった手紙の内容をかいつまんでエナに話す。
「なんとも今後の旅に不安の影を落とすような話ですね」
「ほんとにな」
それについてはエナと全く同意見だ。
この先絶対また何か面倒ごとに巻き込まれる予感がひしひしとするからなぁ。
「そういやエナに聞きたいんだけど、カルマ教団ってどんな連中なの?」
「カルマ教団……ですか……」
エナの表情が怒りとも悲しみとも取れない微妙な感じになるのを見て、地雷を踏んでしまったと直感した。
「あーいや、話したくないなら自分で調べるから大丈夫だよ」
「……いえ大丈夫です。多分この世界を旅していくなら避けては通れないと思いますから」
エナがここまで難色を示すとは……よほど厄介な連中なんだろうなぁ。
「カルマ教団の話をする前にまずは邪神カルマについて話さないといけません」
「もうその邪神ってワードだけですべて察せられるわ」
絶対ろくでもない教団だろそいつら。
「まあ折角なんで聞いてください……大昔この世界に破壊と混沌をもたらすべく邪神カルマが降臨したんですが、それに対抗するために創造主様は二人の大天使をこの世界に遣わせました。そして千年にも渡る戦いの後、二人の大天使は邪神カルマを封印することに成功したんですよ」
ゲームかなにかでよく聞く昔話だが、この世界では本当に起こったことなんだろうな。
エナの話は続いていく。
「邪神カルマの封印は今この時まで一度も解かれたことはありませんが、そのカルマ教団というのは、一度この世界は邪神カルマによって無に帰すことで浄化させなければ真の平和は訪れない!……という思想をもつ破壊的な宗教団体です」
想像通りろくでもない教団だった。
絶対にかかわりたくない連中だが、ヤクトさんの調べではリドアードの一件にはカルマ教団の影がチラついてるとのことだし、おそらく絶対にどこかでがっつり関わることになるんだろうなぁ……今から気が重い。
「あの教団はここ何年か世界各地で支部を設立して勢力を拡大しつつあるんですよね……多分リンデフランデにも支部があると思います」
「もしかしてライノスやマグリドにもあった?」
「はい、ありましたね」
うわーやな感じ。
「ごめんなさい……まさかあの教団が裏で関わっているって思わなかったので、言ってませんでした」
「いや、別にそれはエナのせいじゃないんだから大丈夫だ。むしろその教団のことを今この場で知ることが出来て良かったよ、本当は口に出すのも嫌だったろうに……ありがとうなエナ?」
「いえ……」
俺がお礼をいうと、エナは複雑な表情で頷いた。
エナのこの態度を見るに、おそらくエナはカルマ教団と何らかの因縁があるんだろうな。
「本当はわかってるんですよ……私のことをちゃんとシューイチさんに話さないといけないんだって……でも私……本当のことを話して距離を置かれるのが怖いんです……」
「いいよいいよ、エナが話せるときになったら話してくれればさ!話してくれないからってエナのことは嫌いにならないし、話してくれたとしてもエナのことを嫌いになることはないと思うからさ?」
この世界に来てエナに出会って散々世話になってるのに、どうしてエナのことを嫌いになろうか?
むしろ好感しか抱いてないからな俺は?
もちろんエナだけではなくテレアにも同じことが言えるのだが。
「今日はもう見張りはいいからさ、テレアのそばについててあげてよ?あの子明るく振舞ってるけどあれで結構寂しいはずだからさ」
「えっ?でも……」
「いいからいいから!今日のところは見張りは俺に任せて?ほらほら」
渋るエナの背中を押してテントに強引に押し込んだ。
我ながらかなり強引だったけど、まあこれもエナの為だ。
馬を率先して引いてくれてたし、今日はゆっくり休んでもらってまた明日頑張ってもらおう。
それにほら、夜更かしは美容の天敵というらしいからな。
「あの、シューイチさん」
そんなことを思いながら折り畳み式簡易パイプ椅子に腰かけようとしたところで、テントから顔だけ出したエナが俺を呼んだので、そちらに振り返った。
「なんだ?見張りなら変わってあげないからな?」
「いえそうじゃなくて……その……」
いまいちエナの要領が得ない。
顔を少し赤らめて「あの……その……」と繰り返す。
10秒ほどそうしていただろうか、ようやく赤い顔を上げて―――
「わっ私もシューイチさんが何度全裸になったとしても、嫌いにはなりませんからね?」
―――と言ってテントに引っ込んでしまった。
「……なんだそりゃ」
その様子があまりにもおかしくて、俺は薄く笑いながら独り言のようにそう呟いたのだった。
その後も特に危ないこともなく順調に馬車での旅は続いていき……。
「おーここがリンデフランデか!」
予定通り4日で最初の目的地リンデフランデに到着できたのだ。
「なんだかキラキラしてるね」
「これ夜になると凄いですよ?キラキラしすぎて目が痛いくらいになりますから」
遠くに見える大きな建物はカジノだろうか?
一攫千金のドリームチャンスが渦巻く魔性の賭博場……男なら一度ビックチャンスをつかんでみたいが、多分今回は行くことはないんだろうな。俺も言うほど興味があるわけでもないし。
そんなことを思いながら改めて周囲を見渡す。
俺のいた世界でいうところのインドのような街並みが広がっている。
道行く人たちもどことなくサリーのような服装の人たちが多く目につく。
それなのに、カジノのある方角に行くにつれラスベガスのような煌びやかな風景に段々と変わっていくのが、とても印象深かった。
「早速宿を取りましょう!今日は久々にベッドで寝られますよー!」
「美味しいごはんも食べられるかな?」
少なくともエナの作る物よりは美味しいものが食べられると思うぞ?とは口に出して言うことはなかった。
これあんまりつつくとエナが一気に不機嫌になるからな?
「折角来たんだし、宿を取って一休みしたら少し見て回らないか?」
「テレアも見てみたい!」
「そうですね……私も興味がないと言えば嘘になりますから、三人で見て回りましょうか?」
そうと決まればまず宿を探さないとな。
ちなみに旅に必要な路銀は少ないがヤクトさんからもらっている。
本当は断ったのだが、半ば強引に渡されてしまったのだ。
「本当はもっと渡せれば良かったんだけど」と言っていたが、もらえるだけでありがたいのに、これ以上とかとんでもない話である。
ほどなくして俺たちは宿を取ることができ、いったんそれぞれの部屋で一休みした後で宿の前で集合する運びとなった。
ちなみに俺は一人部屋なのに対し、エナとテレアは同室だった。
なんだか申し訳ないが、エナもテレアも普通に仲がいいので問題ないばかりか、むしろ部屋代が一つ浮くとエナが言っていたので、あまり気にしないことにした。
「しかしマグリドとはまた違った景色だよなぁ」
まるで田舎から都会にきたおのぼりさんのごとく、キョロキョロと町並みを見渡す。
日本にいたころ、高校の同級生から海外旅行に行った時の話を聞いたんだが、曰く「あまりにも現実離れしすぎててなんだか異世界に来たみたいだった」と言ってた。
そいつも今の俺みたいな心境になっていたのだろうか?
そんなことを考えていると不意に服のすそを引っ張られる。
俺にこういうアクションをする相手は一人しかいない。
「最初に来たのはテレアか?エナは一緒じゃないのか?」
「……誰?」
「いやそっちこそ誰?」
振り向くとそこには全然知らない女の子が俺の服のすそを掴んで首をかしげていた。
「……私をご存じでない?」
「全くご存じでないな」
なにせこの世界に来てまだ日が浅いんでねぇ。
しかし、可愛い声なんだけどぼそぼそと喋る子だな。
容姿をざっと確認したところ、褐色肌なのか俺よりも大分濃い肌色をしていて、長い緑髪を左右でお団子にしつつ、余った髪がそのお団子から垂れ下がっているちょっと特徴的な髪型だ。
「……人をじろじろと見るのは変態だと聞き及んだ」
「失礼な」
「……変態?」
「指をさすな指を」
何なんだこの子は?
独特のリズムで会話してくるから微妙にやりずらい。
「……実は迷子になってしまいまして」
「ほう?今さっきこの国に到着したばかりの俺を頼るとはいい度胸だ?」
「……なんだ」
そう言ってすそから手を離し、俺の横を通り過ぎようとする少女を俺は引き留めた。
「イヤイヤちょっと待って!迷子なんだろ?」
「……そういう設定」
設定なの!?
「残念ながら俺はこの国に詳しくはないけど、今からここに来る仲間がそこそこ詳しい人間だから、もしかしたら案内できるかもしれないし、少し待っててくれよ」
「……そういうことなら」
そう言って俺の顔を見上げた後、テケテケと隣に歩いてきてちょこんと座りこんだ。
もしかして疲れてるんだろうか?
「……今の可愛いしぐさで男のハートを鷲掴みできると聞いてたんだけど……どう?」
「どうもせんわ!」
思わず突っ込んでしまったが、ほんとこの子なんなの?
「おおぉー……」
なんだか目を輝かせながら感動してるし。
相手をしてるだけでどっと疲れてくる……。
「俺は葉山宗一だ。お前さんは?」
「……フリル=フルリル」
「フリルね……俺のことはシューイチさんとか気軽に呼んでくれていいよ」
「……シューイチ?」
いきなり呼び捨てとは恐れ入る。
別にいいんだけどね。
「……シューイチはここに何しに来たの?」
手持無沙汰にでもなったのか、フリルが質問を投げかけてきた。
「俺……というか俺たちは旅をしてる最中でな?今はエルサイムってところに向かってるんだけど、その途中にあるこの国に休憩がてら立ち寄ってるんだ」
「……奇遇、私も世界中を旅してる」
「へぇ?一人で?」
「……そんなわけない」
ですよねー。
「……家族と来てるんだけど、一人で散歩してたら自分がどこにいるのかわらなくなってた」
「どこに出しても恥ずかしくない迷子だな」
「……うん」
そう言って少し不安そうな顔をするフリル。
さっきから変な言動ばかりだが、もしかしたら不安を紛らわせる為の物なのかもしれないな。
「……今みたいな不安そうな顔をしておけば男はいちころだって聞いたんだけど……どう?」
「だからどうもせんっちゅーに!!」
なんか変な子に絡まれてしまったなぁ……エナたち早く来てくれないかなぁ?
ちなみにテレアは見張りの役目から除外してある。さすがにまだ子供だし辛いだろうと俺とエナで相談しそう判断をくだした。
二人で相談する横で、テレアは自分にだって見張りはできると最後まで主張していたが、今はすっかり眠気に負けてテントの中ですやすやと寝息を立てて眠っている。
折角なのでこの時間を利用して、ヤクトさんにもらった手紙の内容をかいつまんでエナに話す。
「なんとも今後の旅に不安の影を落とすような話ですね」
「ほんとにな」
それについてはエナと全く同意見だ。
この先絶対また何か面倒ごとに巻き込まれる予感がひしひしとするからなぁ。
「そういやエナに聞きたいんだけど、カルマ教団ってどんな連中なの?」
「カルマ教団……ですか……」
エナの表情が怒りとも悲しみとも取れない微妙な感じになるのを見て、地雷を踏んでしまったと直感した。
「あーいや、話したくないなら自分で調べるから大丈夫だよ」
「……いえ大丈夫です。多分この世界を旅していくなら避けては通れないと思いますから」
エナがここまで難色を示すとは……よほど厄介な連中なんだろうなぁ。
「カルマ教団の話をする前にまずは邪神カルマについて話さないといけません」
「もうその邪神ってワードだけですべて察せられるわ」
絶対ろくでもない教団だろそいつら。
「まあ折角なんで聞いてください……大昔この世界に破壊と混沌をもたらすべく邪神カルマが降臨したんですが、それに対抗するために創造主様は二人の大天使をこの世界に遣わせました。そして千年にも渡る戦いの後、二人の大天使は邪神カルマを封印することに成功したんですよ」
ゲームかなにかでよく聞く昔話だが、この世界では本当に起こったことなんだろうな。
エナの話は続いていく。
「邪神カルマの封印は今この時まで一度も解かれたことはありませんが、そのカルマ教団というのは、一度この世界は邪神カルマによって無に帰すことで浄化させなければ真の平和は訪れない!……という思想をもつ破壊的な宗教団体です」
想像通りろくでもない教団だった。
絶対にかかわりたくない連中だが、ヤクトさんの調べではリドアードの一件にはカルマ教団の影がチラついてるとのことだし、おそらく絶対にどこかでがっつり関わることになるんだろうなぁ……今から気が重い。
「あの教団はここ何年か世界各地で支部を設立して勢力を拡大しつつあるんですよね……多分リンデフランデにも支部があると思います」
「もしかしてライノスやマグリドにもあった?」
「はい、ありましたね」
うわーやな感じ。
「ごめんなさい……まさかあの教団が裏で関わっているって思わなかったので、言ってませんでした」
「いや、別にそれはエナのせいじゃないんだから大丈夫だ。むしろその教団のことを今この場で知ることが出来て良かったよ、本当は口に出すのも嫌だったろうに……ありがとうなエナ?」
「いえ……」
俺がお礼をいうと、エナは複雑な表情で頷いた。
エナのこの態度を見るに、おそらくエナはカルマ教団と何らかの因縁があるんだろうな。
「本当はわかってるんですよ……私のことをちゃんとシューイチさんに話さないといけないんだって……でも私……本当のことを話して距離を置かれるのが怖いんです……」
「いいよいいよ、エナが話せるときになったら話してくれればさ!話してくれないからってエナのことは嫌いにならないし、話してくれたとしてもエナのことを嫌いになることはないと思うからさ?」
この世界に来てエナに出会って散々世話になってるのに、どうしてエナのことを嫌いになろうか?
むしろ好感しか抱いてないからな俺は?
もちろんエナだけではなくテレアにも同じことが言えるのだが。
「今日はもう見張りはいいからさ、テレアのそばについててあげてよ?あの子明るく振舞ってるけどあれで結構寂しいはずだからさ」
「えっ?でも……」
「いいからいいから!今日のところは見張りは俺に任せて?ほらほら」
渋るエナの背中を押してテントに強引に押し込んだ。
我ながらかなり強引だったけど、まあこれもエナの為だ。
馬を率先して引いてくれてたし、今日はゆっくり休んでもらってまた明日頑張ってもらおう。
それにほら、夜更かしは美容の天敵というらしいからな。
「あの、シューイチさん」
そんなことを思いながら折り畳み式簡易パイプ椅子に腰かけようとしたところで、テントから顔だけ出したエナが俺を呼んだので、そちらに振り返った。
「なんだ?見張りなら変わってあげないからな?」
「いえそうじゃなくて……その……」
いまいちエナの要領が得ない。
顔を少し赤らめて「あの……その……」と繰り返す。
10秒ほどそうしていただろうか、ようやく赤い顔を上げて―――
「わっ私もシューイチさんが何度全裸になったとしても、嫌いにはなりませんからね?」
―――と言ってテントに引っ込んでしまった。
「……なんだそりゃ」
その様子があまりにもおかしくて、俺は薄く笑いながら独り言のようにそう呟いたのだった。
その後も特に危ないこともなく順調に馬車での旅は続いていき……。
「おーここがリンデフランデか!」
予定通り4日で最初の目的地リンデフランデに到着できたのだ。
「なんだかキラキラしてるね」
「これ夜になると凄いですよ?キラキラしすぎて目が痛いくらいになりますから」
遠くに見える大きな建物はカジノだろうか?
一攫千金のドリームチャンスが渦巻く魔性の賭博場……男なら一度ビックチャンスをつかんでみたいが、多分今回は行くことはないんだろうな。俺も言うほど興味があるわけでもないし。
そんなことを思いながら改めて周囲を見渡す。
俺のいた世界でいうところのインドのような街並みが広がっている。
道行く人たちもどことなくサリーのような服装の人たちが多く目につく。
それなのに、カジノのある方角に行くにつれラスベガスのような煌びやかな風景に段々と変わっていくのが、とても印象深かった。
「早速宿を取りましょう!今日は久々にベッドで寝られますよー!」
「美味しいごはんも食べられるかな?」
少なくともエナの作る物よりは美味しいものが食べられると思うぞ?とは口に出して言うことはなかった。
これあんまりつつくとエナが一気に不機嫌になるからな?
「折角来たんだし、宿を取って一休みしたら少し見て回らないか?」
「テレアも見てみたい!」
「そうですね……私も興味がないと言えば嘘になりますから、三人で見て回りましょうか?」
そうと決まればまず宿を探さないとな。
ちなみに旅に必要な路銀は少ないがヤクトさんからもらっている。
本当は断ったのだが、半ば強引に渡されてしまったのだ。
「本当はもっと渡せれば良かったんだけど」と言っていたが、もらえるだけでありがたいのに、これ以上とかとんでもない話である。
ほどなくして俺たちは宿を取ることができ、いったんそれぞれの部屋で一休みした後で宿の前で集合する運びとなった。
ちなみに俺は一人部屋なのに対し、エナとテレアは同室だった。
なんだか申し訳ないが、エナもテレアも普通に仲がいいので問題ないばかりか、むしろ部屋代が一つ浮くとエナが言っていたので、あまり気にしないことにした。
「しかしマグリドとはまた違った景色だよなぁ」
まるで田舎から都会にきたおのぼりさんのごとく、キョロキョロと町並みを見渡す。
日本にいたころ、高校の同級生から海外旅行に行った時の話を聞いたんだが、曰く「あまりにも現実離れしすぎててなんだか異世界に来たみたいだった」と言ってた。
そいつも今の俺みたいな心境になっていたのだろうか?
そんなことを考えていると不意に服のすそを引っ張られる。
俺にこういうアクションをする相手は一人しかいない。
「最初に来たのはテレアか?エナは一緒じゃないのか?」
「……誰?」
「いやそっちこそ誰?」
振り向くとそこには全然知らない女の子が俺の服のすそを掴んで首をかしげていた。
「……私をご存じでない?」
「全くご存じでないな」
なにせこの世界に来てまだ日が浅いんでねぇ。
しかし、可愛い声なんだけどぼそぼそと喋る子だな。
容姿をざっと確認したところ、褐色肌なのか俺よりも大分濃い肌色をしていて、長い緑髪を左右でお団子にしつつ、余った髪がそのお団子から垂れ下がっているちょっと特徴的な髪型だ。
「……人をじろじろと見るのは変態だと聞き及んだ」
「失礼な」
「……変態?」
「指をさすな指を」
何なんだこの子は?
独特のリズムで会話してくるから微妙にやりずらい。
「……実は迷子になってしまいまして」
「ほう?今さっきこの国に到着したばかりの俺を頼るとはいい度胸だ?」
「……なんだ」
そう言ってすそから手を離し、俺の横を通り過ぎようとする少女を俺は引き留めた。
「イヤイヤちょっと待って!迷子なんだろ?」
「……そういう設定」
設定なの!?
「残念ながら俺はこの国に詳しくはないけど、今からここに来る仲間がそこそこ詳しい人間だから、もしかしたら案内できるかもしれないし、少し待っててくれよ」
「……そういうことなら」
そう言って俺の顔を見上げた後、テケテケと隣に歩いてきてちょこんと座りこんだ。
もしかして疲れてるんだろうか?
「……今の可愛いしぐさで男のハートを鷲掴みできると聞いてたんだけど……どう?」
「どうもせんわ!」
思わず突っ込んでしまったが、ほんとこの子なんなの?
「おおぉー……」
なんだか目を輝かせながら感動してるし。
相手をしてるだけでどっと疲れてくる……。
「俺は葉山宗一だ。お前さんは?」
「……フリル=フルリル」
「フリルね……俺のことはシューイチさんとか気軽に呼んでくれていいよ」
「……シューイチ?」
いきなり呼び捨てとは恐れ入る。
別にいいんだけどね。
「……シューイチはここに何しに来たの?」
手持無沙汰にでもなったのか、フリルが質問を投げかけてきた。
「俺……というか俺たちは旅をしてる最中でな?今はエルサイムってところに向かってるんだけど、その途中にあるこの国に休憩がてら立ち寄ってるんだ」
「……奇遇、私も世界中を旅してる」
「へぇ?一人で?」
「……そんなわけない」
ですよねー。
「……家族と来てるんだけど、一人で散歩してたら自分がどこにいるのかわらなくなってた」
「どこに出しても恥ずかしくない迷子だな」
「……うん」
そう言って少し不安そうな顔をするフリル。
さっきから変な言動ばかりだが、もしかしたら不安を紛らわせる為の物なのかもしれないな。
「……今みたいな不安そうな顔をしておけば男はいちころだって聞いたんだけど……どう?」
「だからどうもせんっちゅーに!!」
なんか変な子に絡まれてしまったなぁ……エナたち早く来てくれないかなぁ?
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