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45 洗脳
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「おはようございます。ロイ王太子殿下。ゆっくりお休みになられましたか?」
私は先に来られていたロイ王太子殿下へご挨拶をした。
今日の話し合いは人数が増えたので、魔塔最上階の少し広いサロンになった。
「おはようエリー。よく眠れたけど、今朝はたたき起こされたから」
そう言って、笑っている。
「ルイス様はアズールとマーゴット様の報告を聞いてから来られます。少し遅れるそうです」
「あの二人は、もう戻ってきたの?」
ロイ王太子殿下は驚いた顔をした。
「はい、アズールは魔術師のですので、移動時間の短縮が可能です。司教さまのご家族もご一緒に戻られました。すでに司教さまと面会されていると思います」
「ご家族が無事だったのは良かった。特にお子さんが小さいから心配していたんだ」
「ええ、本当に」
「それからエリー、僕のことはロイで良いよ。堅苦しいのは苦手なんだ。シータ殿は時折、ロイお兄様と呼んでくれるので嬉しいよ」
えっ、シータ!ツワモノ過ぎる。
そして怒られないスキルがスゴイ!!
「分かりました。ロイ様と呼ばせていただきます」
コンコン、ノックの音がした。
「はい」
私は返事をする。
「マーゴットです。アズ様と参りました」
「アズ様!?」
私とロイ様の声が重なった。
ドアを開けて、マーゴット様とアズールが入ってくる。
「おはようございます。エリーゼ様、お兄様」
「おはようございます。ロイ王太子殿下、エリーゼ」
二人が挨拶をする。
「おはよう、アズール君、マーゴット」
「おはようございます。マーゴット様、アズール」
私たちも挨拶を返した。
「アズール君、マーゴットにいじめられてない?」
ロイ様が先制攻撃をした。
アズールがポカンとする。
「お兄様!私はアズ様を尊敬しておりますので、そのようなことはしません!!」
マーゴット様が反論した。
今度は、ロイ様がポカーンとしている。
ブフッ、思わず私は吹き出してしまった。
「なんなんだよ、エリーゼ」
アズールがツッコミを入れてくる。
「いえ、お二人が驚くほどいい関係なのだなと、嬉しく思ったのです」
コンコン、いいタイミングでノックの音がする。
「オレだ、遅くなって済まない。司教も連れて来た」
ルイス様は司教さまを連れて、サロンに入ってきた。
「おはよう。遅れて済まない。司教の家族も無事に到着した。アズールと姫ありがとう」
「わたくしからもお礼を申し上げます。家族を救って下さり、ありがとうございました。先ほど面会して来ました。3人とも怪我もなく、安心しました」
司教が深々と礼をする。
アズールとマーゴット姫は会釈で答えた。
「では、昨日の続きを、、、あ!シータが居ないな。呼ぶか」
ルイス様がそう言った数秒後。
ふわっと目の前にシータが現れた。
「うわっ!」
ロイ様が一人で声を上げて驚く。
「ええっ、みんな驚かないの?」
ロイ様はそこに居た皆に訴えた。
「ロイ、そのうち慣れる。では始めよう」
ロイ様の訴えは、ルイス様からバッサリ切ら捨てられた。
もう少し優しい対応をしてあげたら良いのにルイス様。
ちょいちょい、ロイ様に意地悪なのよね。
まあ、それだけ仲が良いってことなのかも知れないけど。
「では司教、昨日の続きから話してくれ」
「分かりました」
結局、一連の騒動を鑑みて、巨額の富を手に入れたのは、リベラ共和国であり、我々は感情を利用され、本質が見えないように誘導されていると、わたくしが気づいた頃、わたくしの家族は誘拐されました。
ここからは人名が増えますので、分かり易く申し上げます。
まず、私の家族を誘拐したのは、カルマン商会と名乗っていますが、実態はリベラ共和国の諜報部隊です。
正教会内の諜報員は司祭キースと司祭アーサーで、アーサーは高位魔術が使えます。
お察しされているかもしれませんが、仮面の男は司祭アーサーです。
彼は凶悪な面がありますので、要注意です。
ルソー・ブランド辺境伯爵は私の使役紋で正教会とブランド領の行き来をする伝令の仕事をしていました。
ブランド領で私の家族と一緒に居たのは、おそらく、使役紋の効力が消えた後に捕えられたのだと思います。
また、占星術師ノアは旧ヨーク公国出身なのですが、鉱石の取引で賑わっている時にリベラ共和国へ自身を売り込んだと聞いています。
リベラ共和国は長年大陸を支配する夢を持っていたようで、占星術師ノアが説く竜神王の力を借りる方法という話に乗りました。
占星術師ノアは「竜神王は復活していると星の巡りが告げている。つがいしか愛せない竜神王を簡単に傀儡とするためには、先に花嫁を探し出さなければならない」という話を、実際に起こった災害などと結びつけて語り、リベラ共和国を洗脳しました。
「司教すまない。話の途中だが、その竜神王の存在は確認したのか?」
ルイス様が口を挟む。
「いえ、全く。しかしながら、対外的にはホロロ帝国から来られたギザン・サマンサ侯爵を竜神王の生まれ変わりとリベラ共和国内では諜報員が触れ回っていたようです」
「ギザン・サマンサ侯爵は利用されていたと言うわけか」
ルイス様が呟く。
「はい、そうだと思います。彼の正義感を巧く利用したのだと思います」
「彼らが、ベルファント王国を舞台にしたのは何故なの?」
ロイ様も質問する。
「それは資金調達のためだと思います。また、リベラ共和国からの諜報員が2人も司祭に入り込む隙のある正教会も利用しやすかったのかもしれません」
「隙があるか、、、耳が痛い話だね。宮殿の守りも長年の平和で甘いところがあるのは否めないからね」
「話が逸れたが続きを頼む」
ルイス様は司教さまに続きを促した。
竜神王の花嫁を探すため、占星術師ノアが花嫁の情報を占いました。
『紫の薔薇』というお告げが出ました。
占星術師はその『紫の薔薇』と呼ばれる女性が存在する世界の座標を見つけました。
そして、私に4人の司祭を使い『紫の薔薇』を召喚するように命令してきました。
「ああ、時間の流れを間違えて失敗したという情報は掴んでいる。またその際、貴殿が黒い板を引き取ったとも聞いた」
ルイス様が既に知っている事を伝える。
「そうですか、そこまで調べられていたのですね。あの時、私は時間の流れが違うことは把握していましたが知らないふりをしました。黒い板は悪用されないように回収しました。のちに使うことになりましたが、、、。続きを話します」
「マキト、占星術師ノアからベルファント王国の王太子と婚約者を暗殺するようにと指令が来た。宮殿への侵入を手伝ってくれ」
司祭アーサーが言って来ました。
「分かった。考えておく」
わたくしは事態をどうやって最小限に抑えるかを考えました。
そして、前回の失敗を利用すれば、王太子殿下と婚約者様を救えるかもしれないと閃きました。
黒い板は異世界とのつながりを持っていましたので魔術を施し、起動すれば転移するように設定しました。
「あの、黒い板ってどういうものなのでしょうか?」
私は、何も知らないフリをして質問した。
「黒くて触ると光りますが、それ以外は何もない板でした」
「そうですか」
その時、久しぶりに念話が来た。
「リゼ、それ以上はダメだ。多分、シータが動かないから真実だと思う」
「分かりました。ルイス様、いつも良いタイミングでありがとうございます」
司教さまは話を続ける。
あの異世界は時の流れがとても緩やかでしたので、一度転移したとしても、王太子殿下と婚約者様をあまりお待たせすることなく再召喚出来ると考えたのです。
司祭アーサーには、宮殿は守りが硬いため、少人数でいくことと、殺せば返り血などで逃げる際に足が付きやすくなるだろうから黒い板で異世界に飛ばしてしまえば簡単だと説明しました。
司祭アーサーは任務が簡単になったと喜んでいました。
ところが彼は大きな失敗をして帰って来ました。
「マキト上手くいった。ありがとよ。黒い板も一緒に消えちまったが、まぁ問題ないよな」
彼の一言に体が凍り付きそうになりましたが、表には出さず、「ああ、良かったな」と言って、やり過ごしました。
あの黒い板を紛失され、わたくしは王太子殿下と婚約者様を再召喚することが出来なくなりました。
ここまで話して司教さまはロイ王太子殿下の方を見た。
あ、やっぱり気になるよね。
「失礼ながら、王太子殿下は、どうやってこちらへ戻られたのでしょうか?」
ロイ様はルイス様に視線を送る。
「それはオレがシータに頼んで連れ戻したんだよ」
ルイス様が答えた。
だいぶん端折ったけど、いいと思う。
「そうですか、ランドル王国はすごいのですね」
司教さまがシータを尊敬の眼差しで見る。
しかし、シータは無垢な笑顔を浮かべ、特に何も言わなかった。
司祭アーサーは王太子殿下と婚約者様を葬り去ることでベルファント王国を潰した気になっていました。
これで終わりだと、、、。
しかし、王太子殿下と婚約者様が消えた後、王女殿下がランドル王国へ留学されたタイミングで、占星術師ノアから次の指令が来ました。
それは、ランドル王国のベルカノン公爵令嬢を殺害せよというものでした。
「なぜこのタイミングでリゼを狙い始めたんだ?」
「占星術師ノアは『紫の薔薇』を召喚出来なかったため、花嫁に縁のあるものを占いました。するとベルカノン公爵令嬢の名前が出て来たと言うのです」
「その占星術師は必ず捕まえないといけないな」
ルイス様は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「はい、彼女が全てを動かしていたと思います」
「あ、彼女なんだ!?僕は男性と思い込んでたよ。失礼」
ロイ様が謝る。
「司教、細かなところは追々聞くとして、大方の謎は解けた。カルマン商会がもぬけのからなら、奴らは今頃、国外に逃亡しているだろう。そこで、オレたちが後からただ追うのでは面白くないよな?」
ルイス様がニヤリとロイ様に視線を送る。
「ああ、倍返ししてやらないとね」
ロイ様も悪い顔になった。
「うわー!楽しそう!!ぼくもその作戦会議のメンバーに入りたい!!」
ずっと黙っていたシータがはしゃぎ出す。
司教が若干引いている。
だよね、やっと安心の日々に戻ったのに。
でもね、私も悪党共に一泡吹かせてやりたいと思っているのよ。
「私も囮なら任せてー!!」
私が手を挙げてそう言うと、全員が引いた。
空気読めていませんでした。
ゴメンナサイ!!
私は先に来られていたロイ王太子殿下へご挨拶をした。
今日の話し合いは人数が増えたので、魔塔最上階の少し広いサロンになった。
「おはようエリー。よく眠れたけど、今朝はたたき起こされたから」
そう言って、笑っている。
「ルイス様はアズールとマーゴット様の報告を聞いてから来られます。少し遅れるそうです」
「あの二人は、もう戻ってきたの?」
ロイ王太子殿下は驚いた顔をした。
「はい、アズールは魔術師のですので、移動時間の短縮が可能です。司教さまのご家族もご一緒に戻られました。すでに司教さまと面会されていると思います」
「ご家族が無事だったのは良かった。特にお子さんが小さいから心配していたんだ」
「ええ、本当に」
「それからエリー、僕のことはロイで良いよ。堅苦しいのは苦手なんだ。シータ殿は時折、ロイお兄様と呼んでくれるので嬉しいよ」
えっ、シータ!ツワモノ過ぎる。
そして怒られないスキルがスゴイ!!
「分かりました。ロイ様と呼ばせていただきます」
コンコン、ノックの音がした。
「はい」
私は返事をする。
「マーゴットです。アズ様と参りました」
「アズ様!?」
私とロイ様の声が重なった。
ドアを開けて、マーゴット様とアズールが入ってくる。
「おはようございます。エリーゼ様、お兄様」
「おはようございます。ロイ王太子殿下、エリーゼ」
二人が挨拶をする。
「おはよう、アズール君、マーゴット」
「おはようございます。マーゴット様、アズール」
私たちも挨拶を返した。
「アズール君、マーゴットにいじめられてない?」
ロイ様が先制攻撃をした。
アズールがポカンとする。
「お兄様!私はアズ様を尊敬しておりますので、そのようなことはしません!!」
マーゴット様が反論した。
今度は、ロイ様がポカーンとしている。
ブフッ、思わず私は吹き出してしまった。
「なんなんだよ、エリーゼ」
アズールがツッコミを入れてくる。
「いえ、お二人が驚くほどいい関係なのだなと、嬉しく思ったのです」
コンコン、いいタイミングでノックの音がする。
「オレだ、遅くなって済まない。司教も連れて来た」
ルイス様は司教さまを連れて、サロンに入ってきた。
「おはよう。遅れて済まない。司教の家族も無事に到着した。アズールと姫ありがとう」
「わたくしからもお礼を申し上げます。家族を救って下さり、ありがとうございました。先ほど面会して来ました。3人とも怪我もなく、安心しました」
司教が深々と礼をする。
アズールとマーゴット姫は会釈で答えた。
「では、昨日の続きを、、、あ!シータが居ないな。呼ぶか」
ルイス様がそう言った数秒後。
ふわっと目の前にシータが現れた。
「うわっ!」
ロイ様が一人で声を上げて驚く。
「ええっ、みんな驚かないの?」
ロイ様はそこに居た皆に訴えた。
「ロイ、そのうち慣れる。では始めよう」
ロイ様の訴えは、ルイス様からバッサリ切ら捨てられた。
もう少し優しい対応をしてあげたら良いのにルイス様。
ちょいちょい、ロイ様に意地悪なのよね。
まあ、それだけ仲が良いってことなのかも知れないけど。
「では司教、昨日の続きから話してくれ」
「分かりました」
結局、一連の騒動を鑑みて、巨額の富を手に入れたのは、リベラ共和国であり、我々は感情を利用され、本質が見えないように誘導されていると、わたくしが気づいた頃、わたくしの家族は誘拐されました。
ここからは人名が増えますので、分かり易く申し上げます。
まず、私の家族を誘拐したのは、カルマン商会と名乗っていますが、実態はリベラ共和国の諜報部隊です。
正教会内の諜報員は司祭キースと司祭アーサーで、アーサーは高位魔術が使えます。
お察しされているかもしれませんが、仮面の男は司祭アーサーです。
彼は凶悪な面がありますので、要注意です。
ルソー・ブランド辺境伯爵は私の使役紋で正教会とブランド領の行き来をする伝令の仕事をしていました。
ブランド領で私の家族と一緒に居たのは、おそらく、使役紋の効力が消えた後に捕えられたのだと思います。
また、占星術師ノアは旧ヨーク公国出身なのですが、鉱石の取引で賑わっている時にリベラ共和国へ自身を売り込んだと聞いています。
リベラ共和国は長年大陸を支配する夢を持っていたようで、占星術師ノアが説く竜神王の力を借りる方法という話に乗りました。
占星術師ノアは「竜神王は復活していると星の巡りが告げている。つがいしか愛せない竜神王を簡単に傀儡とするためには、先に花嫁を探し出さなければならない」という話を、実際に起こった災害などと結びつけて語り、リベラ共和国を洗脳しました。
「司教すまない。話の途中だが、その竜神王の存在は確認したのか?」
ルイス様が口を挟む。
「いえ、全く。しかしながら、対外的にはホロロ帝国から来られたギザン・サマンサ侯爵を竜神王の生まれ変わりとリベラ共和国内では諜報員が触れ回っていたようです」
「ギザン・サマンサ侯爵は利用されていたと言うわけか」
ルイス様が呟く。
「はい、そうだと思います。彼の正義感を巧く利用したのだと思います」
「彼らが、ベルファント王国を舞台にしたのは何故なの?」
ロイ様も質問する。
「それは資金調達のためだと思います。また、リベラ共和国からの諜報員が2人も司祭に入り込む隙のある正教会も利用しやすかったのかもしれません」
「隙があるか、、、耳が痛い話だね。宮殿の守りも長年の平和で甘いところがあるのは否めないからね」
「話が逸れたが続きを頼む」
ルイス様は司教さまに続きを促した。
竜神王の花嫁を探すため、占星術師ノアが花嫁の情報を占いました。
『紫の薔薇』というお告げが出ました。
占星術師はその『紫の薔薇』と呼ばれる女性が存在する世界の座標を見つけました。
そして、私に4人の司祭を使い『紫の薔薇』を召喚するように命令してきました。
「ああ、時間の流れを間違えて失敗したという情報は掴んでいる。またその際、貴殿が黒い板を引き取ったとも聞いた」
ルイス様が既に知っている事を伝える。
「そうですか、そこまで調べられていたのですね。あの時、私は時間の流れが違うことは把握していましたが知らないふりをしました。黒い板は悪用されないように回収しました。のちに使うことになりましたが、、、。続きを話します」
「マキト、占星術師ノアからベルファント王国の王太子と婚約者を暗殺するようにと指令が来た。宮殿への侵入を手伝ってくれ」
司祭アーサーが言って来ました。
「分かった。考えておく」
わたくしは事態をどうやって最小限に抑えるかを考えました。
そして、前回の失敗を利用すれば、王太子殿下と婚約者様を救えるかもしれないと閃きました。
黒い板は異世界とのつながりを持っていましたので魔術を施し、起動すれば転移するように設定しました。
「あの、黒い板ってどういうものなのでしょうか?」
私は、何も知らないフリをして質問した。
「黒くて触ると光りますが、それ以外は何もない板でした」
「そうですか」
その時、久しぶりに念話が来た。
「リゼ、それ以上はダメだ。多分、シータが動かないから真実だと思う」
「分かりました。ルイス様、いつも良いタイミングでありがとうございます」
司教さまは話を続ける。
あの異世界は時の流れがとても緩やかでしたので、一度転移したとしても、王太子殿下と婚約者様をあまりお待たせすることなく再召喚出来ると考えたのです。
司祭アーサーには、宮殿は守りが硬いため、少人数でいくことと、殺せば返り血などで逃げる際に足が付きやすくなるだろうから黒い板で異世界に飛ばしてしまえば簡単だと説明しました。
司祭アーサーは任務が簡単になったと喜んでいました。
ところが彼は大きな失敗をして帰って来ました。
「マキト上手くいった。ありがとよ。黒い板も一緒に消えちまったが、まぁ問題ないよな」
彼の一言に体が凍り付きそうになりましたが、表には出さず、「ああ、良かったな」と言って、やり過ごしました。
あの黒い板を紛失され、わたくしは王太子殿下と婚約者様を再召喚することが出来なくなりました。
ここまで話して司教さまはロイ王太子殿下の方を見た。
あ、やっぱり気になるよね。
「失礼ながら、王太子殿下は、どうやってこちらへ戻られたのでしょうか?」
ロイ様はルイス様に視線を送る。
「それはオレがシータに頼んで連れ戻したんだよ」
ルイス様が答えた。
だいぶん端折ったけど、いいと思う。
「そうですか、ランドル王国はすごいのですね」
司教さまがシータを尊敬の眼差しで見る。
しかし、シータは無垢な笑顔を浮かべ、特に何も言わなかった。
司祭アーサーは王太子殿下と婚約者様を葬り去ることでベルファント王国を潰した気になっていました。
これで終わりだと、、、。
しかし、王太子殿下と婚約者様が消えた後、王女殿下がランドル王国へ留学されたタイミングで、占星術師ノアから次の指令が来ました。
それは、ランドル王国のベルカノン公爵令嬢を殺害せよというものでした。
「なぜこのタイミングでリゼを狙い始めたんだ?」
「占星術師ノアは『紫の薔薇』を召喚出来なかったため、花嫁に縁のあるものを占いました。するとベルカノン公爵令嬢の名前が出て来たと言うのです」
「その占星術師は必ず捕まえないといけないな」
ルイス様は苦虫を噛み潰した様な顔をした。
「はい、彼女が全てを動かしていたと思います」
「あ、彼女なんだ!?僕は男性と思い込んでたよ。失礼」
ロイ様が謝る。
「司教、細かなところは追々聞くとして、大方の謎は解けた。カルマン商会がもぬけのからなら、奴らは今頃、国外に逃亡しているだろう。そこで、オレたちが後からただ追うのでは面白くないよな?」
ルイス様がニヤリとロイ様に視線を送る。
「ああ、倍返ししてやらないとね」
ロイ様も悪い顔になった。
「うわー!楽しそう!!ぼくもその作戦会議のメンバーに入りたい!!」
ずっと黙っていたシータがはしゃぎ出す。
司教が若干引いている。
だよね、やっと安心の日々に戻ったのに。
でもね、私も悪党共に一泡吹かせてやりたいと思っているのよ。
「私も囮なら任せてー!!」
私が手を挙げてそう言うと、全員が引いた。
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