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私は魔塔の中庭のベンチに座り、花壇を見つめていた。
あいにくの曇り空で、気分もイマイチ。
ロイ王太子殿下とロゼ様は救出したものの、まだ真相は闇の中、私はまだ狙われるのかしら、、、。
理由が分からないっていうのが、このスッキリしない気分の原因なのかもね。
「妖精さん、隣に座ってもいいかい?」
思い耽っている私の後ろから声がした。振り返るとロイ王太子殿下が一人で立っている。
「ロイ王太子殿下、ごきげんよう。どうぞお座り下さい」
私は立ち上がって挨拶をした。
「エリーゼ嬢、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」
にっこりと笑顔で返された。
こうやってじっくり見るとロイ王太子殿下とマーゴット様は似ている。
赤みがかった銀髪にエメラルドの瞳、、、。
「そんなに見つめられると恥ずかしいな」
そう言いながら、ロイ王太子殿下は私を優雅にエスコートしてベンチに座らせ、ご自身もその横に腰掛けた。
二人でベンチに座って、何を話す?
ロイ王太子殿下とルイス様は親しいみたいだけど、下手に話題に出したりしたら、私は口を滑らして言ってはいけないことを言ってしまいそうだわ。
私がグルグル悩んでいるとロイ王太子殿下が先に話し始めた。
「花が綺麗だね。魔塔なのにこんなに花壇の手入れがされているなんて、僕のイメージとは全然違うよ」
「お褒め下さり、ありがとうございます。ランドル王国ではガーデニングが盛んなのです。四季折々、お花の開花に合わせて、お祭りもあるのですよ」
「いい習慣だね。ベルファント王国は武闘系のお祭りが多い気がする。お花の祭りを開催したら、子供達や女性も喜ぶかも知れない。マネしてみようかな」
「ええ、是非マネしてください」
あら、思ったより和やかに話せてる。ロイ王太子殿下はコミュニケーション能力が素晴らしいわ!と呑気に考えていたら、
「ランドルの妖精は僕のことをお忘れの様だね?」
ロイ王太子殿下はいきなり不服そうに言い出す。
「僕が初めましてと挨拶しても全く気づいてなかったから、少し寂しかったよ」
私はあまり回転の良くない頭をフルに回してみたが、思い当たらなかった。
「申し訳ございません。物覚えが悪いもので、、」
素直に謝る私。
ロイ王太子殿下はクスクス笑う。
「エリーと呼んでたって言ったら分かる?」
私をエリーと呼ぶのは一人しかいない。まさか!
「えっ、ブロイ?、、、ロイ王太子殿下お知り合いなのですか」
ブロイというのは、私が領地にいる時に遊びに来ていた親戚の子のハズだったのだけど。
「うん、知り合いとではなくて、僕はブロイと言う名で、子供の頃は祖母の友人のお家に良く遊びに行っていたんだよ。その頃もベルファント王国の宮殿は刺客が紛れ込んだりしていて危なかったからね。マーゴットは母の実家に行くことが多かったよ、その結果、彼女は武闘派になってしまったんだけどね」
ロイ王太子殿下は笑って話す。
私は、まさか幼馴染が隣国の王太子とは思ってなかったので、驚きすぎて言葉も出ない。
「僕たち、あの頃は本当に野生児だったよね。あの綺麗な湖、また行きたいよ」
えっ、湖?湖って私が寝てた場所?精霊が取り囲んでいたって、ルイス様が言ってたわよね。
まさかバレてないわよね、、、。
嫌な汗が背中を伝う。
「ええ、是非ベルカノン家の領地にもまた遊びにいらして下さい。祖父母も喜ぶと思います」
社交辞令よろしくニッコリと返す。
「エリー、本当に懐かしいよ。湖の横で遊び疲れて眠ってしまった君の事をベルカノン公爵にいつも知らせに行ってたのは僕だよ」
あー、詰んだ!!絶対詰んだ!
この人知ってる。
知ってて面白がってる!
私の心臓がバクバク音を立てる。
「それはありがとうございました。私もお転婆だったので、お恥ずかしい限りです」
出来るだけシラを切っていく方向で何とか逃げてやるー!
「大きな白狼は今も元気?」
「、、、。さぁ、何のことだか存じませんけど。犬なら飼ってましたけど」
私がそう答えるとロイ王太子殿下は爆笑した。
もう無理だー。
「ロイ、何が面白いんだ?」
突然、ルイス様が登場した。
ナイスタイミング!!
これ以上、墓穴を掘らないうちに退散したい。
「今、エリーに僕が子供の頃、身分を隠してブロイって名乗ってたって話をしてたんだけど、エリーが話を逸らそうとするからさー」
ロイ王太子はルイス様に状況を説明しながら、まだ笑っている。
「ロイ、リゼを揶揄うなよ」
「ルイスは、エリーゼ嬢のことになると厳しいな。でも二人に会えて良かったよ。ランドルの妖精は相変わらず可憐で可愛いし、ルイスも真面目で正義感が強くていい子だ」
ロイ王太子殿下はそう言って、私達の頭を撫で回した。
「ベルファント王国は岐路かも知れない。沢山お世話になるかも知れないけど、これからもよろしく!!」
彼は捨て台詞を残し、ちょうど迎えに来たロゼ様の方へ帰って行った。
「リゼ、何か変なこと聞かれたのか?」
私は頷く。
ルイス様に念話で、事の顛末を伝える。
「大きな白狼はお元気?と聞かれました。私は犬なら飼ってましたけど、、、って言い訳したのですが、精霊の事をご存じの様でした」
「はぁ、何で知ってるんだよ!!やっぱり食えない男だな。しかも、エリーとか図々しく呼んでるのも、ムカつく!」
不機嫌なお顔も麗しいですねルイス様、、、。
「どうやら、ベルカノン家の領地で一緒に遊んでいた親戚のブロイという男の子は身分を隠したロイ王太子殿下だったようです」
「何だって!オレがリゼと会えなかった間に遊んでたって事か?、、、知らなかった」
ルイス様は、ガックリと肩を落とした。
「ルイス様、そんなに気にしないでください。大丈夫、私はルイス様が良いんですから」
慰めになっているような、なっていないような事を言いながら、ルイス様の手を取る。
「リゼ、ありがとう。でも、幼い頃のリゼとも一緒に居たかったな」
ルイス様が私の手に口付けを落とす。
「これからずっと一緒にいるのだから、大丈夫ですよ。もう飽きたって言わないで下さいね」
「そうだな、でも飽きることは無いと思う。リゼは自分で思ってるより、かなり可愛いし、面白いからな」
「面白いは余計です」
ほっぺを膨らませて、反論する。
ルイス様の肩越しに見えた空は、先ほどとは打って変わって、気持ちの良い快晴になっていた。
あいにくの曇り空で、気分もイマイチ。
ロイ王太子殿下とロゼ様は救出したものの、まだ真相は闇の中、私はまだ狙われるのかしら、、、。
理由が分からないっていうのが、このスッキリしない気分の原因なのかもね。
「妖精さん、隣に座ってもいいかい?」
思い耽っている私の後ろから声がした。振り返るとロイ王太子殿下が一人で立っている。
「ロイ王太子殿下、ごきげんよう。どうぞお座り下さい」
私は立ち上がって挨拶をした。
「エリーゼ嬢、そんなに畏まらなくても大丈夫だよ」
にっこりと笑顔で返された。
こうやってじっくり見るとロイ王太子殿下とマーゴット様は似ている。
赤みがかった銀髪にエメラルドの瞳、、、。
「そんなに見つめられると恥ずかしいな」
そう言いながら、ロイ王太子殿下は私を優雅にエスコートしてベンチに座らせ、ご自身もその横に腰掛けた。
二人でベンチに座って、何を話す?
ロイ王太子殿下とルイス様は親しいみたいだけど、下手に話題に出したりしたら、私は口を滑らして言ってはいけないことを言ってしまいそうだわ。
私がグルグル悩んでいるとロイ王太子殿下が先に話し始めた。
「花が綺麗だね。魔塔なのにこんなに花壇の手入れがされているなんて、僕のイメージとは全然違うよ」
「お褒め下さり、ありがとうございます。ランドル王国ではガーデニングが盛んなのです。四季折々、お花の開花に合わせて、お祭りもあるのですよ」
「いい習慣だね。ベルファント王国は武闘系のお祭りが多い気がする。お花の祭りを開催したら、子供達や女性も喜ぶかも知れない。マネしてみようかな」
「ええ、是非マネしてください」
あら、思ったより和やかに話せてる。ロイ王太子殿下はコミュニケーション能力が素晴らしいわ!と呑気に考えていたら、
「ランドルの妖精は僕のことをお忘れの様だね?」
ロイ王太子殿下はいきなり不服そうに言い出す。
「僕が初めましてと挨拶しても全く気づいてなかったから、少し寂しかったよ」
私はあまり回転の良くない頭をフルに回してみたが、思い当たらなかった。
「申し訳ございません。物覚えが悪いもので、、」
素直に謝る私。
ロイ王太子殿下はクスクス笑う。
「エリーと呼んでたって言ったら分かる?」
私をエリーと呼ぶのは一人しかいない。まさか!
「えっ、ブロイ?、、、ロイ王太子殿下お知り合いなのですか」
ブロイというのは、私が領地にいる時に遊びに来ていた親戚の子のハズだったのだけど。
「うん、知り合いとではなくて、僕はブロイと言う名で、子供の頃は祖母の友人のお家に良く遊びに行っていたんだよ。その頃もベルファント王国の宮殿は刺客が紛れ込んだりしていて危なかったからね。マーゴットは母の実家に行くことが多かったよ、その結果、彼女は武闘派になってしまったんだけどね」
ロイ王太子殿下は笑って話す。
私は、まさか幼馴染が隣国の王太子とは思ってなかったので、驚きすぎて言葉も出ない。
「僕たち、あの頃は本当に野生児だったよね。あの綺麗な湖、また行きたいよ」
えっ、湖?湖って私が寝てた場所?精霊が取り囲んでいたって、ルイス様が言ってたわよね。
まさかバレてないわよね、、、。
嫌な汗が背中を伝う。
「ええ、是非ベルカノン家の領地にもまた遊びにいらして下さい。祖父母も喜ぶと思います」
社交辞令よろしくニッコリと返す。
「エリー、本当に懐かしいよ。湖の横で遊び疲れて眠ってしまった君の事をベルカノン公爵にいつも知らせに行ってたのは僕だよ」
あー、詰んだ!!絶対詰んだ!
この人知ってる。
知ってて面白がってる!
私の心臓がバクバク音を立てる。
「それはありがとうございました。私もお転婆だったので、お恥ずかしい限りです」
出来るだけシラを切っていく方向で何とか逃げてやるー!
「大きな白狼は今も元気?」
「、、、。さぁ、何のことだか存じませんけど。犬なら飼ってましたけど」
私がそう答えるとロイ王太子殿下は爆笑した。
もう無理だー。
「ロイ、何が面白いんだ?」
突然、ルイス様が登場した。
ナイスタイミング!!
これ以上、墓穴を掘らないうちに退散したい。
「今、エリーに僕が子供の頃、身分を隠してブロイって名乗ってたって話をしてたんだけど、エリーが話を逸らそうとするからさー」
ロイ王太子はルイス様に状況を説明しながら、まだ笑っている。
「ロイ、リゼを揶揄うなよ」
「ルイスは、エリーゼ嬢のことになると厳しいな。でも二人に会えて良かったよ。ランドルの妖精は相変わらず可憐で可愛いし、ルイスも真面目で正義感が強くていい子だ」
ロイ王太子殿下はそう言って、私達の頭を撫で回した。
「ベルファント王国は岐路かも知れない。沢山お世話になるかも知れないけど、これからもよろしく!!」
彼は捨て台詞を残し、ちょうど迎えに来たロゼ様の方へ帰って行った。
「リゼ、何か変なこと聞かれたのか?」
私は頷く。
ルイス様に念話で、事の顛末を伝える。
「大きな白狼はお元気?と聞かれました。私は犬なら飼ってましたけど、、、って言い訳したのですが、精霊の事をご存じの様でした」
「はぁ、何で知ってるんだよ!!やっぱり食えない男だな。しかも、エリーとか図々しく呼んでるのも、ムカつく!」
不機嫌なお顔も麗しいですねルイス様、、、。
「どうやら、ベルカノン家の領地で一緒に遊んでいた親戚のブロイという男の子は身分を隠したロイ王太子殿下だったようです」
「何だって!オレがリゼと会えなかった間に遊んでたって事か?、、、知らなかった」
ルイス様は、ガックリと肩を落とした。
「ルイス様、そんなに気にしないでください。大丈夫、私はルイス様が良いんですから」
慰めになっているような、なっていないような事を言いながら、ルイス様の手を取る。
「リゼ、ありがとう。でも、幼い頃のリゼとも一緒に居たかったな」
ルイス様が私の手に口付けを落とす。
「これからずっと一緒にいるのだから、大丈夫ですよ。もう飽きたって言わないで下さいね」
「そうだな、でも飽きることは無いと思う。リゼは自分で思ってるより、かなり可愛いし、面白いからな」
「面白いは余計です」
ほっぺを膨らませて、反論する。
ルイス様の肩越しに見えた空は、先ほどとは打って変わって、気持ちの良い快晴になっていた。
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