リゼの悪役令嬢日記

風野うた

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33 再会

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 6月27日 くもり
先日、少し遠くへ旅をした。そして、ベルファント王国のロイ王太子殿下とロゼ様とお友達になった。ロゼ様は気が合いそうで嬉しい!久しぶりに会ったマーゴット様は相変わらず可憐な薔薇のように美しかったなぁ。眼福。


 コンコン。

「はい、どうぞ」

私が答えるとドアを開いて、マーゴット様が勢いよく走り込んで来る。

「お兄様、ロゼ姉さま!!」

お二人の方へ、一目散に向かう。

ロイ王太子殿下は腕を広げて、マーゴット様を抱きしめる。

その様子をドアの辺りから、リチャードが眺めていた。

ロゼ様はマーゴット様から目をゆっくりドアの方へ向けて、驚いた顔になる。

「お兄様?」

目が合うとリチャードはロゼの方に歩き始めた。

「ロゼ、心配したよ。無事に戻って来てくれて本当に本当に良かった」

静かに口にする。

その頬には涙が流れていた。

それを見たロゼ様の目からも大粒の涙が溢れる。

気付けば二組の兄妹は抱き合って再会を喜び泣いていた。

私も思わず感動なのか安心感なのか分からない涙が溢れて来る。

そっとルイス様が肩を抱いてくれた。

無事に連れて帰って来れて良かった。

大切な人たちが離れ離れにならなくて本当に良かった。

「それで、マーゴットはランドル王国に協力を求めるために、急遽留学したのか?父上たちは無事なのか?」

 ロイ王太子殿下はお茶菓子に出されたイヴァンカのうさぎの形のクッキーを手に取りながら、マーゴット様に質問する。

その様子を見て、本当に甘いものがお好きだったのねと、私は心の中でひとりごちる。

感動の再会も落ち着き、私たちはお茶とお菓子を用意して事件の擦り合わせパート2を始めていた。

「はい、お父様たちは大丈夫です。お父様は先ず私の身を案じて、直ぐにランドル王国へ行くように命じられました。こちらの国は治安がベルファント王国とは比べ物にならないほど良いですから」

マーゴット様が答える。

「そうか、王は狙わず何故に僕たちを狙うのだろうね。それはランドル王国も同じか。エリーゼ嬢が執拗に狙われたのだよね?」

ロイ王太子殿下が、ルイス様に向かって言う。

「リゼの襲撃は姫といる時ばかりだけどな」

ルイス様が答える。

「マーゴットといる時だけ?」

ロイ王太子殿下が怪訝な顔をした。

「わたくしの見解なのですが、犯人たちは使役紋で操られていたようですから当然、面識もない方々ばかりですし、どこかの命令系統がわたくしとエリーゼ様を間違えていたのではないでしょうか?」

マーゴット様が人違いの可能性を挙げる。

「いや、マーゴットその線は無いと思うよ?身長もだいぶん違うし。一緒なのは瞳の色だけのようだし」

ロイ王太子殿下が答える。

「そうですね。私も全く襲撃の理由は分からないのですが人違いではないと思います。」

私は、マーゴット様は美しいし、かっこいいし、推しだし、私なんかと間違われるなんて絶対ない!!と口には出さなかったが、力を込めて否定した。

「オレはロイ達を襲った奴とリゼを襲っている奴は同じだと思っている。姫といる時を狙うことで、本当の目的が分からないようにしているだけだろう。おそらく姫は最初から狙われてない」

ルイス様はまた違った見解を出して来た。

「ルイスはだいぶん広く事件が見えているみたいだね。何か裏が取れているのかい?」

「ああ、だいぶん見えて来た。だが確証はまだ無い。そこでロイに頼みがあるんだ。オレ達をここに戻すために力を貸してくれた我が国の若き魔術師をベルファント王国正教会で聖女を呼ぼうとして失敗した聖職者たちに会わせて欲しい」

「えっ、聖女召喚のこともバレているの?」

ロイ王太子殿下は驚く。

今、何となくマーゴット様とリチャードが目を逸らしたような、、、。

「ロイ、ベルファント王国から飛ばされて1か月半も立っているんだ。国は王太子不在を隠すために必死だったと思うし、情報があれば、藁にも縋る思いだったと思うぞ」

「ロイ殿下、申し訳ございません。私が話しました」

リチャードがロイ王太子殿下にお詫びを言う。

「いや、僕の自覚が足りなかった。僕たちは、1か月半死んだことになっていたんだ。確かに国を揺るがす事件だと思う。ここで僕は他人ごとではなく自国に帰ってこれからどうするかを考えないといけないのだと今になって気づいたよ」

「恐れながら、ロゼは死んだことになっておりますが、ロイ殿下は病気を患いつつ、宮殿で執務をしていることになっています」

リチャードが進言する。

「はぁ?僕は生きてることにしているだって?良く1か月半もバレなかったね。でもロゼだけ死んだことにされてるのも微妙な気持ちだな」

ロイ王子殿下は横に座っているロゼを見る。

ロゼはロイ王子殿下に何も言わず笑顔で答える。

私は見ていてロゼ様も愛らしくて推せる!などと余計なことを考えていた。

そこへ、ルイス様が念話で話しかけてくる。

「リゼ、くれぐれも前世と竜神王ルーの話は口を滑らせるなよ。ここで大切なのはオレ達に必要なことを聞き出すことだ。ロイも友好的な話をしているようだが食えない男だからな。頼むぞ!」

「ルイス様、真っ黒いご指示をありがとうございます。良かったです。異世界の話とか思わず振ってしまいそうでした。気を付けますね!」

「ああ、頼むな。それと姫とリゼを間違うとか絶対ないぞ。リゼはランドルの妖精だ。可憐さのレベルが違うからな!!厚かましいんだよ姫は」

「ええええ、嬉しいですけど嬉しくない発言ですねー。マーゴット様は可憐ですよ!!私なんて比べれるのも烏滸がましいです」

「リゼ、、、、、頼むから素直に受け取ってくれ。絶対、リゼが可愛い!!」

「あのー、お二人共見つめあっているところを申し訳ないのですが、今、ノックの音が聞こえました。どうしましょう?」

遠慮がちにロゼ様が私たちに話しかけて来る。

くだらない言い合いをしていたとも言えず、、、お恥ずかしい。

「はい、誰だ?」

ルイス様がドアに向かって問う。

「お話中に失礼いたします。シータです」

「シータか、どうぞ入ってくれ」

ルイス様が入室を許可すると、ゆっくりドアが開きシータが入ってくる。

「あら、可愛らしい方ね。お二方の弟君ですか?」

ロゼ様が私たちに聞いてくる。

「いや、彼は次期王宮筆頭魔術師のシータだ。今回オレ達をここに戻してくれた張本人だ」

「ご紹介に預かりました魔術師のシータです。どうぞよろしくお願いいたします」

シータはロイ王太子殿下とロゼ様に挨拶をした。

ロイ王太子殿下が驚いた顔をして、こちらを見てくる。

「そう驚くなよ、ロイ。先ほど話した魔術師のシータだ。彼にベルファント王国正教会の訪問許可を出して欲しい」

「正教会に?ちょっと待って、それよりも僕が想像していた魔術師のイメージと違い過ぎていて、ビックリしたよ。ええっと、シータ殿はおいくつになられるのですか?もしや見た目より年長者?」

「ぼくですか?今年10歳になりました。見た目通りだと思います。それからロイ王太子殿下と僕はもうすぐ親戚になると思います」

「えっ10歳?えっ親戚?ええっと、ごめん何一つ良く分からない」

とても困惑するロイ王太子殿下。

でも、シータはマイペースに続ける。

「先日、ぼくの兄のアズールをマーゴット王女殿下に差し上げる約束をしました。なので近々親戚になる予定です」

「はぁ?何だと!シータ、それはオレも知らないぞ」

ロイ様よりルイス様が興奮してシータに食ってかかる。

「ルイス王子殿下が救出作戦をしているときに話をしたんだよ。ちゃんと兄ちゃんにも意思確認したから大丈夫だと思う」

「おい、アズはオレの側近なんだぞ。代わりはどうする?」

「ぼくがいるからいいんじゃない?」

「お前、結構ヒドイな、、、、」

何となくルイス様が負けた感じがする。

シータは本日も絶好調である。

「えっとマーゴットもその話は了承しちゃったの?」

恐る恐るロイ王子殿下がマーゴット様に聞く。

「はい、下さるというのでありがたくいただくことにしました」

横のリチャードが吹いて笑い出す。

「笑い事じゃないって、シータ殿のお兄さんはものじゃないんだぞ。マーゴット責任持てるのか?」

「はい責任をもって、お受けします。それとアズール様をものだとは思っていません。彼はイケメンです」

真顔でマーゴット様が言うので、思わず私とロゼ様も吹いた。

イケメンって、、、、。

「姫、オレはてっきり筋肉が好きなのかと思っていたよ」

ルイス様はチラリとリチャードを見て言う。

リチャードは何も言わず左手の指輪をこちらに見せてくる。

妻帯者だったの!?知らなかった!!

「いえ、筋肉は私に充分ありますので不要です。ですので、知的な人がいいです。正直なところ、祖国では剣を少々振り回し過ぎたようで、全くご縁がありませんでした。今回はシータ殿に大変有難いお話をいただきました。ありがとうございます」

マーゴット様は花も霞むほどの美しい笑顔でシータにお礼を述べた。

ロイ王太子殿下は頭を抱えながら、話始めた。

「マーゴットが決めたのなら、仕方ない僕も応援するよ。父上たちに早く報告しなければいけないね。それとシータ殿を正教会で聖女の件に携わった聖職者と会っていただくための席は、僕が責任を持って用意するよ。今回とてもお世話になったからね。まだ事件の全容も分かってないし、犯人も捕まえてないから、僕らも引き続き身辺には気を付けるよ。みんな僕たちが帰還するために沢山協力してくれて本当にありがとう。」

最後は立ち上がって深々と頭を下げた。

「それからシータ殿、済まないがアズール殿と会って話をしたい。後ほどお願いできるだろうか?」

「はい、兄を呼んでから、後ほどご連絡をします。ぼくは一度下がります。皆さんごきげんよう」

シータはいつも通りアッサリと帰って行った。



 オレはアズと念話でいつでも会話が出来る。

だが、この後の展開を考えると可哀そうで、とても話しかける勇気が出なかった。

シータよ、これではアズールは身売りどころか生贄だと思うぞオレは、、、。
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