異世界転生したプログラマー、魔法は使えないけれど魔法陣プログラミングで無双する?(ベータ版)

田中寿郎

文字の大きさ
174 / 184
第三部 暗殺者編

第174話 クレイ、言い負かされる

しおりを挟む
クレイは、ダイナドー侯爵の屋敷に向かう前に、まず、平民街まで行き飲食店に入り食事を始めた。

やがて食事を終えたクレイは席を立ち、トイレに向かった。

個室に入り用を済ませ身支度を整えると、クレイはそこから転移で移動してしまう。(トイレの鍵はちゃんと開けておいたし、食事の代金もテーブルにそっと置いてきてあるので問題ない。)

これは以前から時々使っている手である。人目がある町中では、なかなか転移は使いづらい。人目がない場所を探して転移する事になるが、店に入ってトイレを借りてしまうのが手っ取り早かったのである。

また、今日は自分に監視がついている可能性も考慮していた。宰相は、王宮の諜報機関は優秀だと言っていた。そしておそらく、宰相も王もクレイの能力を知りたがっているはずである。まぁ国を預かる者として知っておきたいのも分からなくはないが、だからと言ってクレイも簡単に明かす気はない。

いくら優秀な諜報部員であっても、トイレの中までは覗かない可能性が高いとクレイは予想したのだ。

もちろん、転移先はダイナドー侯爵の屋敷の中、侯爵の執務室の裏にあるウォークインクローゼットである。(もちろん転移先マップでスキャンして、ここには誰も居ないのを確認している。)

ドアを開け、部屋を覗いてみると、執務室の中にはダイナドー侯爵が一人だけであった。虫眼鏡を使って書類を読んでいる。(侯爵も高齢なので老眼なのだろう。)

ドアが開いた音に気付いて顔を向けたダイナドー侯爵と目があう。

クレイ 「こんにちわ」

ニヤッと笑って見せるクレイ。

ダイナドー 「…っ! …お前か。侯爵家に忍び込むなど、けしからん奴だな」

そう言いながらダイナドーの手が机の下に入っていくのを見て、クレイが言う。

クレイ 「ああ、護衛の騎士は呼ばないほうがいいですよ。毎度彼らを痛めつけるのも気が引けるので…」

確か前回も、呼んでも居ないのに騎士が雪崩込んできた。おそらく机の下にでも騎士を呼ぶ装置があるのだろう。

ダイナドーはやれやれと言う顔で手を机の上に戻して言った。

ダイナドー 「…何しに来た」

クレイ 「いや、今日、王宮に呼ばれて、ミト王陛下と宰相様に会ってきましてね」

ダイナドー 「……」

クレイ 「そこで面白い話を教えてもらいまして……なんでも、侯爵閣下が王に、私に謀反の恐れがあると訴えたとか?」

ダイナドー 「それは……事実だな。儂も王都を守る防衛大臣なのでな、危険性があるなら報告だけはしておく必要があったのだ。

実際お前は『王都に高ランクの魔物を送り込んで壊滅させる』などと言っておっただろうが? それを報告したまでの事」

クレイ 「いやいやいや。なんか、話のニュアンスを曲げて伝える感じのやつ…? そういう事もできると言った気はしますけど、『実行するつもりがある』なんて言った覚えはないですが?」

ダイナドー 「そういう事を可能な人間が居る。それだけで脅威だ。王もそれを認識しておく必要があるだろう」

クレイ 「……私には、今後、手を出すな、関わるなと警告したはずですが?」

ダイナドー 「……約束は違えておらんぞ? 儂から直接手を下す事はしていない。儂はもう手を出さんよ。

だが、報告を受けた王がどう判断するかは王次第。まぁ、可能なら討伐してしまうという選択肢オプションは提示したがな」

クレイ 「屁理屈を…」

ダイナドー 「大体、お前は手を出すなとは言ったが、喋ってはならんとは言っていなかっただろうが。

ああ、お前が転移が使えるという事については口止めされていたから、その事は喋っておらんぞ。儂は約束はちゃんと守るんだよ」

クレイ 「…確かに、王も宰相もその事は知らなかったような……」

ダイナドー 「お前だって、儂がお前の事を王族や貴族に吹聴する事で、牽制になる事を期待していた部分があったんだろう?」

クレイ 「それは…そうですけどね」

ダイナドー 「期待通り、お前の危険性を吹聴してやっているつもりだが? だいたい、儂が『アイツは危険だから手を出さないほうがいい』などと言った所で、王族や貴族が素直に聞くと思うか?

お前の危険性を聞かされた後、どう判断し行動するかは儂の知るところではないさ」

クレイ 「なんか屁理屈で上手く誤魔化されている気がするのに、なんか言い返せない…」

ダイナドー 「儂は約束は違えていない。今後もお前に手を出す気はない。お前も約束を守れよ。もう儂もお前とは関わりたくはないさ」

クレイ(低い声で) 「……本当に、手を出していないなら、な…。

実は最近、何度も襲撃を受けているんだが?」

ダイナドー (ギクリ)

クレイ 「手口からして、プロの暗殺者のようだ。まさか、侯爵が命じてやらせているなんて事はないだろうな?」

ダイナドー 「…し、知らんよ。誰か他の貴族が仕掛けてきているのじゃないのか?」

クレイ 「王が、ダンジョン踏破の褒美をくれるというので、王家の諜報部を使って暗殺組織とその依頼者について調べてくれるように頼んだ」

ダイナドー 「……」

クレイ 「黒幕が判明したら、厳しい報復を考えている。命を狙われたのだから、命を取られる覚悟は当然あるだろうが、簡単には殺さない。それなりに苦しみながら死んでもらうつもりだ。

その対象がダイナドー侯爵、アンタでないといいな」

そう言い捨てクレイは転移で消えていった。

青い顔になっているダイナドー侯爵。

どうなっているのか、暗殺部隊【闇烏】にすぐにでも問い質したいダイナドーであったが、相手は神出鬼没の転移使いである。帰ったフリをしてどこかに潜んでいる可能性もあると考えると、性急な行動も躊躇われる。

それに、もし王家の “影” が動いているという事ならそれも危険である。

ブレラに暗殺中止を指示しようかとも考えたダイナドー。だが…平民の冒険者に脅されて言うことを聞いたというのも、それはそれとして、高位貴族としてのプライドが許さない。

まだ王家の諜報部と言えども動き始めたばかりなら証拠は掴んでいないはずだ。

闇烏が今まで暗殺に失敗した事はない。今回もきっと…とは思うが、いつもならすぐに結果が出るのに、未だにクレイは生きている。先程のクレイの言からすると、ブレア達は失敗を繰り返しているという事になる。

ダイナドーは執事のウスターを呼んだ。


しおりを挟む
感想 98

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

狼になっちゃった!

家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで? 色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!? ……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう? これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

処理中です...