ひな*恋 〜童顔ひな子の年の差恋愛(ノベル版)

むらさ樹

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仕事に入ったばかりの、まだお客さんがあまり来ない時間帯。

今日もいつも通り、私はサラダ作りから始める。



マニュアルで決められている分量と手順で作るのだけど、人気のおかずは毎日作っている。

だからもう何も見なくても、目分量で作れるようになっているわけだ。



私は慣れた手つきで茹でた卵の殻を剥き、ふかしたジャガイモとハムやきゅうりなどの野菜も一緒に大きなボウルに入れ、マヨネーズや調味料なんかで丁寧に和えた。




「そう言えばアイツ…いや、あの傘のお客さんは昨日、何を買って行ったんですか?」



作りながら、隣で炒め物の野菜を切っている田原さんに話しかけた。


誰がどんなものを選んで買って行くなんて、そんなのは下世話な話かもしれないけれど。

常連さんが今日はどんなものを買って行ったかなんて話は、案外うちのスタッフ間では普通に話したりもしている。


まったく、この仕事をしている私たちは、ドンダケ下世話な人間だ。



「あぁ、あの男の子?
えーっとねぇ…唐揚げと焼き肉とハンバーグとフライと…後はそのサラダね」



若い男子だけあって、やっぱり食べるものは肉系ばかりだ。

しかも量も多い。

そして煮物みたいなものは、眼中にすらないんだろうな。


…だけど。



「へぇ…高校生男子でも、サラダなんて好んで食べるんですね」



「そのサラダ」なんて言われ、思わずドキッとしてしまったじゃないか。


昨日は私は休みだったので、当然他のスタッフがこのサラダを作ったんだろう。


だけど、いま正に私が作っているものを昨日は買って帰ったなんて聞くと、ついサラダを和える手に汗をかく。

…あ、もちろん調理用手袋をしてますけどねっ。



「そりゃあ肉ばっかりじゃ胃がもたれそうよ!
まぁ一緒に食べる人が、サラダを頼んでただけかもしれないけど」



一緒に食べる人…かぁ。


確かに、1人で食べるにはずいぶん量が多いんだけどね。



でも確かに、しばらく毎日お世話になるって言ってけど、アイツは昨日1人で晩ご飯を食べたんだろうか。


まだ未成年なのに、親は本当にどうしてるんだろう。




「でも、今日も来る予定なんでしょ?
だったら本人に訊いてみたらいいんじゃない?」


「えぇっ!?
訊きませんよ、そんな事っ!!」



いくら下世話な私たちでも、さすがにお客さん本人に向かってそんな事は訊きやしない。


せいぜい厨房の中で飛び交ううわさ話程度なのだ。




それに…アイツが1人で食べようが誰かと食べようが、赤の他人である私には関係ないんだから。


……………………私には…



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