16 / 119
私だって美味しいものは作りたいんです! 1
しおりを挟む
作り終えた惣菜はみなプラスチックパックに詰めて、グラムを計って値札を付ける。
それを今度は、夕方のピークに合わせてズラリと陳列していくのだ。
「ねぇ、クリームコロッケまだないの?」
「えっ、あっ、いらっしゃいませ!
えぇと、すぐご用意しますーっ」
陳列棚の厨房側のドアから出来上がった惣菜を並べていると、その開いたドア越しに声をかけてきたお客さんがいて私は慌てて対応した。
何がそんなに気に食わないのか、ブスッとした表情で他の惣菜もジロジロみている中年のおばちゃん。
不特定多数の人が利用するお店ではあるけれど、そういったタイプのお客さんに当たるのは正直…苦手だったりするんだよね。
もちろん、人の良いお客さんもいるんだけれど。
それからすぐ後、晩ご飯のおかずを求めてきた主婦の方たちで集るようになり、レジの方が忙しくなってきた。
「1円玉いっぱいあるから、もらってくれない?」
「あ、はい。
1…2…3…4…」
この忙しいタイミングでさえも、平気でじゃら金を大量に出してくるお客さんもいてイラッとするけれど、そこは笑顔で応えなきゃね。
「あー 財布が軽くなったわ。
ありがとね~」
「いえっ
ありがとうございまーす…」
何年もやっているからさすがに慣れたけど、初めの頃はそんなお客さんの対応に四苦八苦したっけな。
「あ、そうそう。このサラダも戴くわ。
ここのサラダは美味しいから好きなのよ」
「わぁ、ありがとうございますーっ!」
そしてマニュアル調理とは言え、自分が作ったものを美味しいと言ってくれるとスゴく嬉しい。
そこは全体的にも、やっぱりこの仕事を選んで良かったなぁと思っているんだ!
そして、主婦たちがごった返す夕方のピークが過ぎた。
あっという間に時間は経っていき、つい暇になってくると何となくチラリ チラリと時計を見てしまう。
…そろそろかなぁ…
「あの、いくら?」
「えっ、あぁっ
ええっと…890円です!」
ぼんやりしていてお客さんにダメ出しされてしまったりとか、イケナイ イケナイ。
戴いたお代をレジで打ってお釣りを返すと、買われた惣菜をレジ袋に入れて手渡した。
「しっかりしてよ」
「は、はいっ、すみません!
ありがとうございますーっ」
あーあ、お客さんに怒られちゃった。
特に後腐れなく帰って行ったけれど、レジに立つ以上はお客さんの前で上の空なんてとんでもないよねっ
ホント、しっかりしなきゃ…!
「しっかりしてますかー?」
「はっ!
す すみま…えぇっ!?」
帰って行ったハズのお客さんがまた戻って来たのかと思って、私はドキッとして振り向いた。
だけどそこに立っていたのはさっきのお客さんではなく、そんな私を見てニマニマ変な笑みを浮かべていた例のアイツ。
傘を貸してくれた、あの高校生の男の子だったのだ。
それを今度は、夕方のピークに合わせてズラリと陳列していくのだ。
「ねぇ、クリームコロッケまだないの?」
「えっ、あっ、いらっしゃいませ!
えぇと、すぐご用意しますーっ」
陳列棚の厨房側のドアから出来上がった惣菜を並べていると、その開いたドア越しに声をかけてきたお客さんがいて私は慌てて対応した。
何がそんなに気に食わないのか、ブスッとした表情で他の惣菜もジロジロみている中年のおばちゃん。
不特定多数の人が利用するお店ではあるけれど、そういったタイプのお客さんに当たるのは正直…苦手だったりするんだよね。
もちろん、人の良いお客さんもいるんだけれど。
それからすぐ後、晩ご飯のおかずを求めてきた主婦の方たちで集るようになり、レジの方が忙しくなってきた。
「1円玉いっぱいあるから、もらってくれない?」
「あ、はい。
1…2…3…4…」
この忙しいタイミングでさえも、平気でじゃら金を大量に出してくるお客さんもいてイラッとするけれど、そこは笑顔で応えなきゃね。
「あー 財布が軽くなったわ。
ありがとね~」
「いえっ
ありがとうございまーす…」
何年もやっているからさすがに慣れたけど、初めの頃はそんなお客さんの対応に四苦八苦したっけな。
「あ、そうそう。このサラダも戴くわ。
ここのサラダは美味しいから好きなのよ」
「わぁ、ありがとうございますーっ!」
そしてマニュアル調理とは言え、自分が作ったものを美味しいと言ってくれるとスゴく嬉しい。
そこは全体的にも、やっぱりこの仕事を選んで良かったなぁと思っているんだ!
そして、主婦たちがごった返す夕方のピークが過ぎた。
あっという間に時間は経っていき、つい暇になってくると何となくチラリ チラリと時計を見てしまう。
…そろそろかなぁ…
「あの、いくら?」
「えっ、あぁっ
ええっと…890円です!」
ぼんやりしていてお客さんにダメ出しされてしまったりとか、イケナイ イケナイ。
戴いたお代をレジで打ってお釣りを返すと、買われた惣菜をレジ袋に入れて手渡した。
「しっかりしてよ」
「は、はいっ、すみません!
ありがとうございますーっ」
あーあ、お客さんに怒られちゃった。
特に後腐れなく帰って行ったけれど、レジに立つ以上はお客さんの前で上の空なんてとんでもないよねっ
ホント、しっかりしなきゃ…!
「しっかりしてますかー?」
「はっ!
す すみま…えぇっ!?」
帰って行ったハズのお客さんがまた戻って来たのかと思って、私はドキッとして振り向いた。
だけどそこに立っていたのはさっきのお客さんではなく、そんな私を見てニマニマ変な笑みを浮かべていた例のアイツ。
傘を貸してくれた、あの高校生の男の子だったのだ。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい
小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。
エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。
しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。
――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。
安心してください、ハピエンです――
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜
雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。
【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】
☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆
※ベリーズカフェでも掲載中
※推敲、校正前のものです。ご注意下さい
この度、仮面夫婦の妊婦妻になりまして。
天織 みお
恋愛
「おめでとうございます。奥様はご懐妊されています」
目が覚めたらいきなり知らない老人に言われた私。どうやら私、妊娠していたらしい。
「だが!彼女と子供が出来るような心当たりは一度しかないんだぞ!!」
そして、子供を作ったイケメン王太子様との仲はあまり良くないようで――?
そこに私の元婚約者らしい隣国の王太子様とそのお妃様まで新婚旅行でやって来た!
っていうか、私ただの女子高生なんですけど、いつの間に結婚していたの?!ファーストキスすらまだなんだけど!!
っていうか、ここどこ?!
※完結まで毎日2話更新予定でしたが、3話に変更しました
※他サイトにも掲載中
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
同期の御曹司様は浮気がお嫌い
秋葉なな
恋愛
付き合っている恋人が他の女と結婚して、相手がまさかの妊娠!?
不倫扱いされて会社に居場所がなくなり、ボロボロになった私を助けてくれたのは同期入社の御曹司様。
「君が辛そうなのは見ていられない。俺が守るから、そばで笑ってほしい」
強引に同居が始まって甘やかされています。
人生ボロボロOL × 財閥御曹司
甘い生活に突然元カレ不倫男が現れて心が乱される生活に逆戻り。
「俺と浮気して。二番目の男でもいいから君が欲しい」
表紙イラスト
ノーコピーライトガール様 @nocopyrightgirl
俺の妖精すぎるおっとり妻から離縁を求められ、戦場でも止まらなかった心臓が止まるかと思った。何を言われても別れたくはないんだが?
イセヤ レキ
恋愛
「離縁致しましょう」
私の幸せな世界は、妻の言い放ったたった一言で、凍りついたのを感じた──。
最愛の妻から離縁を突きつけられ、最終的に無事に回避することが出来た、英雄の独白。
全6話、完結済。
リクエストにお応えした作品です。
単体でも読めると思いますが、
①【私の愛しい娘が、自分は悪役令嬢だと言っております。私の呪詛を恋敵に使って断罪されるらしいのですが、同じ失敗を犯すつもりはございませんよ?】
母主人公
※ノベルアンソロジー掲載の為、アルファポリス様からは引き下げております。
②【私は、お母様の能力を使って人の恋路を邪魔する悪役令嬢のようです。けれども断罪回避を目指すので、ヒーローに近付くつもりは微塵もございませんよ?】
娘主人公
を先にお読み頂くと世界観に理解が深まるかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる