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私だって美味しいものは作りたいんです! 1

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作り終えた惣菜はみなプラスチックパックに詰めて、グラムを計って値札を付ける。


それを今度は、夕方のピークに合わせてズラリと陳列していくのだ。




「ねぇ、クリームコロッケまだないの?」


「えっ、あっ、いらっしゃいませ!
えぇと、すぐご用意しますーっ」



陳列棚の厨房側のドアから出来上がった惣菜を並べていると、その開いたドア越しに声をかけてきたお客さんがいて私は慌てて対応した。



何がそんなに気に食わないのか、ブスッとした表情で他の惣菜もジロジロみている中年のおばちゃん。


不特定多数の人が利用するお店ではあるけれど、そういったタイプのお客さんに当たるのは正直…苦手だったりするんだよね。



もちろん、人の良いお客さんもいるんだけれど。



それからすぐ後、晩ご飯のおかずを求めてきた主婦の方たちで集るようになり、レジの方が忙しくなってきた。



「1円玉いっぱいあるから、もらってくれない?」


「あ、はい。
1…2…3…4…」



この忙しいタイミングでさえも、平気でじゃら金を大量に出してくるお客さんもいてイラッとするけれど、そこは笑顔で応えなきゃね。




「あー 財布が軽くなったわ。
ありがとね~」


「いえっ
ありがとうございまーす…」



何年もやっているからさすがに慣れたけど、初めの頃はそんなお客さんの対応に四苦八苦したっけな。




「あ、そうそう。このサラダも戴くわ。
ここのサラダは美味しいから好きなのよ」


「わぁ、ありがとうございますーっ!」



そしてマニュアル調理とは言え、自分が作ったものを美味しいと言ってくれるとスゴく嬉しい。


そこは全体的にも、やっぱりこの仕事を選んで良かったなぁと思っているんだ!





そして、主婦たちがごった返す夕方のピークが過ぎた。


あっという間に時間は経っていき、つい暇になってくると何となくチラリ チラリと時計を見てしまう。



…そろそろかなぁ…




「あの、いくら?」


「えっ、あぁっ
ええっと…890円です!」



ぼんやりしていてお客さんにダメ出しされてしまったりとか、イケナイ イケナイ。


戴いたお代をレジで打ってお釣りを返すと、買われた惣菜をレジ袋に入れて手渡した。



「しっかりしてよ」


「は、はいっ、すみません!
ありがとうございますーっ」



あーあ、お客さんに怒られちゃった。

特に後腐れなく帰って行ったけれど、レジに立つ以上はお客さんの前で上の空なんてとんでもないよねっ

ホント、しっかりしなきゃ…!





「しっかりしてますかー?」


「はっ!
す すみま…えぇっ!?」



帰って行ったハズのお客さんがまた戻って来たのかと思って、私はドキッとして振り向いた。



だけどそこに立っていたのはさっきのお客さんではなく、そんな私を見てニマニマ変な笑みを浮かべていた例のアイツ。

傘を貸してくれた、あの高校生の男の子だったのだ。
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