115 / 136
プールとか海で人がいっぱいの状態を『イモ洗い』と言う
しおりを挟む
さて、テンションあげあげのトシヤとマサオ、そしてトシヤに見せる初の水着姿が嬉し恥ずかしのハルカだが、ルナはと言えばどうなのだろう? マサオが気にして様子を覗うが、ルナはトシヤやマサオの様に無駄にテンションを上げることも無く、また、ハルカと違ってトシヤとマサオに水着姿を披露することについて別にどうとも思っていないみたいだ。
恐らくこれはルナがマサオに対して特別な感情を抱いていないということだろう。だとすればかわいそうなマサオ……いやいや、これぐらいでメゲるマサオでは無い。今は特別な感情を抱いてもらえていないかもしれないが、いつか振り向いてもらえる日を夢見て頑張る。それがマサオという男なのだ。
夏の昼下がりだけあってプールは結構な賑わいだ。身動きが取れないとまではいかないが、泳げる様なスペースは無い。もっとも遊園地のプールでガチ泳ぎするヤツなどあまりいないだろうけど。だがしかし、大人しく水に浸かっているだけでは面白くも無いというものだ。
「チャプチャプしてるだけじゃ面白くないよー」
「じゃあ、ウォータースライダーでも行くか?」
文句を言い出したハルカに提案したのはマサオだ。するとトシヤが困った顔で言った。
「俺、ロッカーにサイフ置いてきちまったぜ」
「私もー」
ハルカもトシヤに呼応するかの様に言った。そう、子供用の『滑り台』は無料だが、大人用の『ウォータースライダー』は有料なのだ。
「そうね、じゃあ一旦お財布取りに行きましょうか」
ルナが打開策的なことを言った時、マサオが水着のポケットから何やら取り出し、得意気な顔で言った。
「心配ご無用、そこは抜かり無いっすよ」
マサオがポケットから取り出したのはフリーザーバッグに入った三つ折りの一万円札だった。
「マサオ君、お金出してくれるの? やったー、太っ腹ぁ!」
「ハルカちゃん、なに厚かましいこと言ってるの! ごめんねマサオ君、後でちゃんとお金返すから」
目を輝かせて厚かましいことを言うハルカにルナは困った顔だが、それはマサオの想定の範囲内だ。
「いやいや、これぐらいどーってこと無いっすよ」
マサオは本気で言っている。しかしルナは頑としてそれを良しとしない。
「ダメよ。マサオ君はいつもそうなんだから」
もちろんコレもマサオの想定内だ。
「そーっすか。じゃあ、気持ちだけでも貰っといて下さいな」
マサオは格好良く言ったつもりなのだろうが『気持ちだけ貰っておく』というのは『貰う側』が言う言葉で、間違っても『あげる側』が言う言葉では無い。覚えたての言葉を使おうするからこうなる……実に残念な男だ。とは言え今は国語の勉強をしているのでは無い。ルナは突っ込むなんて野暮なことはせず、「そうね、ありがとう」と笑顔で答えるとマサオに背を向け、プールの縁に手をかけた。そう、プールから上がろうとしているのだ。
そうなるとマサオの取るべき行動はルナのお尻をローアングルで至近距離から凝視する……って、違う! それは寧ろ絶対やっちゃダメな事だ。いくらマサオでもそれぐらいは分かるらしい。ルナの後ろに待機するのでは無く、素早い動作でルナよりも先にプールから上がった。そして驚くべき行動に出た。
「ルナ先輩、どうぞ」
言ったかと思うと恥ずかしげもなくルナに向かって手を差し出したのだ。
「あ……ありがとう」
ルナは感謝の言葉を口にしてマサオの手に掴まったのだが、コレは本当に感謝していたのだろうか? それともコレを拒絶するわけにはいかないと思い、空気を読んだのだろうか? まあ、それは深く考えないことにしよう。どちらにしてもその答えはルナしか知らないし、その答えが公表されることはおそらく無い。それになんと言っても当事者のマサオがそれはもう幸せそうな顔をしているのだから……まあ、繋がれた手はルナがプールから上がればすぐに離されてしまうのだろうけれども。
恐らくこれはルナがマサオに対して特別な感情を抱いていないということだろう。だとすればかわいそうなマサオ……いやいや、これぐらいでメゲるマサオでは無い。今は特別な感情を抱いてもらえていないかもしれないが、いつか振り向いてもらえる日を夢見て頑張る。それがマサオという男なのだ。
夏の昼下がりだけあってプールは結構な賑わいだ。身動きが取れないとまではいかないが、泳げる様なスペースは無い。もっとも遊園地のプールでガチ泳ぎするヤツなどあまりいないだろうけど。だがしかし、大人しく水に浸かっているだけでは面白くも無いというものだ。
「チャプチャプしてるだけじゃ面白くないよー」
「じゃあ、ウォータースライダーでも行くか?」
文句を言い出したハルカに提案したのはマサオだ。するとトシヤが困った顔で言った。
「俺、ロッカーにサイフ置いてきちまったぜ」
「私もー」
ハルカもトシヤに呼応するかの様に言った。そう、子供用の『滑り台』は無料だが、大人用の『ウォータースライダー』は有料なのだ。
「そうね、じゃあ一旦お財布取りに行きましょうか」
ルナが打開策的なことを言った時、マサオが水着のポケットから何やら取り出し、得意気な顔で言った。
「心配ご無用、そこは抜かり無いっすよ」
マサオがポケットから取り出したのはフリーザーバッグに入った三つ折りの一万円札だった。
「マサオ君、お金出してくれるの? やったー、太っ腹ぁ!」
「ハルカちゃん、なに厚かましいこと言ってるの! ごめんねマサオ君、後でちゃんとお金返すから」
目を輝かせて厚かましいことを言うハルカにルナは困った顔だが、それはマサオの想定の範囲内だ。
「いやいや、これぐらいどーってこと無いっすよ」
マサオは本気で言っている。しかしルナは頑としてそれを良しとしない。
「ダメよ。マサオ君はいつもそうなんだから」
もちろんコレもマサオの想定内だ。
「そーっすか。じゃあ、気持ちだけでも貰っといて下さいな」
マサオは格好良く言ったつもりなのだろうが『気持ちだけ貰っておく』というのは『貰う側』が言う言葉で、間違っても『あげる側』が言う言葉では無い。覚えたての言葉を使おうするからこうなる……実に残念な男だ。とは言え今は国語の勉強をしているのでは無い。ルナは突っ込むなんて野暮なことはせず、「そうね、ありがとう」と笑顔で答えるとマサオに背を向け、プールの縁に手をかけた。そう、プールから上がろうとしているのだ。
そうなるとマサオの取るべき行動はルナのお尻をローアングルで至近距離から凝視する……って、違う! それは寧ろ絶対やっちゃダメな事だ。いくらマサオでもそれぐらいは分かるらしい。ルナの後ろに待機するのでは無く、素早い動作でルナよりも先にプールから上がった。そして驚くべき行動に出た。
「ルナ先輩、どうぞ」
言ったかと思うと恥ずかしげもなくルナに向かって手を差し出したのだ。
「あ……ありがとう」
ルナは感謝の言葉を口にしてマサオの手に掴まったのだが、コレは本当に感謝していたのだろうか? それともコレを拒絶するわけにはいかないと思い、空気を読んだのだろうか? まあ、それは深く考えないことにしよう。どちらにしてもその答えはルナしか知らないし、その答えが公表されることはおそらく無い。それになんと言っても当事者のマサオがそれはもう幸せそうな顔をしているのだから……まあ、繋がれた手はルナがプールから上がればすぐに離されてしまうのだろうけれども。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる