ディア・ドロップ

あめいろ

文字の大きさ
10 / 14

開口

しおりを挟む
ハイボール片手に上司が身を乗り出して聞いてくる。
「で、いつから付き合ってんの?」
「付き合ってないですよ」
「てかゴメンね。何回もDTイジリして。卒業してたの気付かなかったよ」
「いやまだ卒業してないですから。てか何言わせてんですか」
「あ、ゴメンゴメン。彼女の前だったね」
「いや彼女じゃないですから」
何回言わせんだよアンタ。
自分と上司とのやり取りを見て、隣に座る雫が吹き出す。
「ちょ!陽太面白すぎ!さすがだね!」
「うるさい!てかもう無理。なんかいたたまれない。帰る。ちょ、どいて」
「ヤだよ。もっと陽太の慌てふためくところ見てたい」
「お前マジその顔面じゃなきゃ殴り倒してるからな」
カワイイはいつだってズルい。
「てかさー」
笑みを引っ込めて、上司が自分と雫を交互に見ながら聞いてくる
「キミらって、ぶっちゃけ、どーいう関係?」
その言葉に2人は一瞬顔を見合わせる。
そして、同時に答える。
「ストーカー」
「運命の人」
「.....は?」
「え?」
雫はポカンと口を開けている。
「いや運命の人じゃないだろ!またそーいう誤解することをお前は!」
「いや合ってるよ!だって記憶失ったと思ったら、陽太の記憶だけはあるんだよ!運命だよ!」
「だとしてもだよ!それに俺はまだ信じたわけじゃ.....」
「てか陽太!わたしのことストーカーとか思ってたの!?ひどい!」
「いやストーカーだろ!知らない奴に声かけられて飯付き合わされてる身にもなれ!」
2人の口喧嘩に今度は上司が吹き出す。
「何笑ってんですか!」
「ゴメンゴメン。いややっぱ面白いね日野くんは。コミュ障の癖に」
「一言多いですよ」
「でも、そんなキミの心を開くとは。すごいね、えっと名前は?」
「雨宮雫です!」
明るく雫が答える。
「雫ちゃんね。で、ちょっと気になったんだけど、記憶を失ったってどーゆうことかな?」
上司のトーンが僅かに下がる。
上司の雰囲気を察したのか、雫が笑みを引っ込める。
「わたし、5年前からそれ以前の記憶がないんです。でも、唯一覚えているのが、陽太との記憶で.....」
「へぇ、すごい。ロマンチックじゃん。早くくっ付けば良いのに」
「何言ってんですか」
上司の軽口についついツッコミを入れる。
自分のツッコミはお構いなしに上司は話を進める。
「2人は幼馴染なんだね」
「いえ違います。今日初めて会いました」
「え?」
上司が間の抜けた表情をする。
そりゃ、そーなるよな。
「わたし、陽太とは会ってないと思うんです。記憶の中の陽太は、わたしを呼ぶときに"ミハル"って呼ぶから」
「元の名前がミハルなんじゃないの?」
「いえ、それは違うと思います。雨宮雫で戸籍もありますから」
「戸籍が間違ってる可能性は?」
「それは分からないですけど.....」
やはり気になるポイントは皆んな同じらしい。雫の話には違和感が多すぎる。
「でも記憶喪失から5年経ってるんだよね。何でわざわざこのタイミングで日野くんに会いにきたの?」
言われてみればその通りだ。
一体、なぜ?
「全部記憶を忘れた代わりに、陽太の記憶だけは残ってて。もしかしたら、陽太に会えば記憶が戻るかもって考えたこともありました。でも、陽太の記憶があるのは陽太が小学校4年生だったときのわずか半年だけ。その情報から陽太を探ることは困難でした」
「たしかに」
「ですが、一ヶ月前でした。たまたま見た記事に陽太のことが載っていました」
「!」
一ヶ月前?
「そうか、お店のオープンのときの....!」
陽太はあるカフェで働いている。そこは一ヶ月前にオープンしていたのだ。たしか地元紙で紹介されていた筈だ。
「それで、今日お店に電話したんですけど、スマホの電池が切れちゃって、ちゃんと聞けずじまいになっちゃって.....なんで、お店の近くを張ってました」
「結局ストーカーじゃねーか」
なるほど。昼間の電話も雫だったわけか。ようやく合点がいった。
「じゃあ、雫ちゃんは記憶復活の為に日野くんに会いにきたわけだ?」
「いえ、違います」
「え、違うの?」
「わたし、アイドルになるのが夢なんです。で、陽太にプロデュースしてもらおうと思いまして」
「.....え?」
上司が固まる。
当然の反応である。
「え、待って、話が見えてこないんだけど?」
「大丈夫です。その時期は僕にもありました」
「あ、皆通る道なのね」
雫が話を始める。
「記憶が戻れば良いなとは正直思ってます。でも、それ以上に私思うんです。あ、アイドルになりたいなって」
「いやだから、その理由を知りたいんだよ」
ついつい横槍を入れる。
気にならないのか雫は変わらず話を続ける。
「記憶が無くなってからというもの。どこか毎日満ち足りない日々を送っていました。そんなとき、語りかけてくるのは記憶の中の陽太でした。記憶の中の陽太は、作家になると言っていました」
「.....」

「そして、わたしは.....ミハルはアイドルになりたいと言っていました」
「!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...