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リーマン物語1

【四話・おおっと!居酒屋】

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 彼らは居酒屋『南国バナナ』という行きつけの店にいた。わが社の、ある脱サラした元社員の開いた居酒屋である。
(実在のものとは無関係であり、バナナ…もとい!フィクションです)

「やっぱ落ち着くなぁ」
 六人掛けを四人で占領し、まずはビールで乾杯。サラリーマンといえば、ビール。ビールと言えばサラリーマン。サラリーマンといえば、バナナである。
(ん?)

 目の前にはキュウリと茄子とミョウガの漬物。野菜スティック、スペアリブ、ししゃも……
(ん? 長い!? 造形が長ry)

「おい、なんであんだけ食べたのにバナナが間に敷き詰められたパンケーキたのんだ? しかもバナナアイスつきの」
と、塩田。
「何言ってるの! 俺たちバナナ倶楽部のバナナ同盟じゃん!」
と電車が意味不明なことをいい始めた。
 よく見たら勝手にウィスキーをロックで呑んで酔っぱらっている。
「バナナ倶楽部、何すんの?」
と、板井が興味を持った。
 板井は小指で周りに迷惑をかけないように足を椅子にベルトで固定されおり、なおかつトイレの近い席である。

「バナナ食う!」
「まんま、じゃないかよ」
 電車と板井がしゃべっているすきに課長がすかさずパンケーキの間のバナナを全部自分の皿に取り分けた。
「ほら、バナナパンケーキを…う?!バナナ入ってない!」
 よそ見をしながら電車がパンケーキを一切れ口に運び泣きそうな顔をする。
「ちょっと店員さああああん!バナナぁ」
 泣きべそをかき、声をはる電車に課長がにやりとした。
「お前のバナナは頂いた!」
「やだあ! へんたーい♡」
 酔っぱらいの電車は股間を押さえた。

「切り刻まれてるけど……」
 板井が課長の皿を見てそっと溢す。
「面倒なことになるから黙っとけよ」
 塩田はバカどもを眺めながらキュウリを齧っていた。

****

「そういや苗木どうしたんだ?」
と、板井に問われ
「ああ、一階のエントランスに吹き抜けのところあるだろ」
「確か有名な何とかって人がデザインしたウン百万する花壇? 花壇なのか? あれは」
 噴水の周りに南国チックなデザインのアートである。
「え、まさか」
「うん、穴掘って植えてきた」
 塩田の返事に板井はムンクの叫びをする。塩田は子持ちシシャモに夢中であった。

「店員さん、もう一皿」
 横を通りかかった店員にシシャモを頼む。何故か電車の前には焼きバナナとバナナ団子、バナナケーキに、バナナ炒めが乗っている。
 そんなメニューあっただろうか?
「これだけあれば課長でも奪えないもんね!」
「ふはは!笑止!電車よ。お前のバナナを奪い放題ということだ!」
「いやーん。へんたああい」
 向かい合って楽しそうではあるが

「誰だよ、この変態バナナ野郎共を連れてきたのは」
 あまりの酔っ払いっぷりに塩田はシシャモを加えながら隣の板井に問う。
「いや、勝手に来たし」
「あ?」
 居酒屋内はざわついている。南国バナナという名前だけあってそこかしこにバナナの装飾品と各テーブルにはバナナの装飾品がついたライトがぶら下がっているのだが、バナナ型である。ちなみに、ここの店員のエプロンはバナナ模様。

「ん? なんかメッセが」
 バナナ型テーブルの上の塩田スマホがチカチカしている。
「なに?」
 仕事のメッセかと板井も覗き込むが
「うあ!」
 黒いバナナのドアップ写真であった。
『お前のバナナは頂いた』
と、添えてある。
「くそ!管理人め」
 どうやら管理人は勝手に部屋に入って黒バナナとかたいバナナを交換していったらしい。
「俺のバナナを! 許すまじ、管理人ぐぬぬ……」
「まじで持って行ったのか」
 板井は驚いていたのだった。

****

 塩田が怒り狂っているとスマホの着信が鳴った。
 どうやら会社からだ。嫌な予感しかしなかったが、平静を装って電話に出ると部長からであった。
 まるまると太って美味しそうな豚の丸焼きのことを思い出しつつ”はい”と返事すると

「塩田ーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
と、髪がびゅーーーーーーっと横になびきそうな勢いで怒鳴られた。
 理由は薄々気付いている。

 くそっ! 誰かチクりやがったな。

 塩田はこんなでもモテる為、社内では恨んでいる輩がゴマンといた。
(居過ぎである)

 一課のアイツか? 総務のアイツか? いや搬入のアイツかもしれん。
 いやいや、企画のとこのアイツだろうか?
 もしかしたら得意先の担当のアイツか?
 それともうちの自販機に商品を入れているあそこの……。
 うーん、本店の店長か? それとも受付嬢に熱を入れている二課の?

 塩田は思い当たる相手が居過ぎて部長の話をあまり聞いていなかった。
「で?」
(部長に”で”っていう、ツワモノ塩田)
 案の定、エントランスのオブジェにこっそり植えた苗木のことで怒られる。
「そんなこというなら、部長が持って帰ってくださいよ」
 苗木は何故か、部長が持って帰ることになった。
「欲しいならそういえばいいのに」
 塩田は頬杖をつき、ぼやいたが
「いやいや、違うだろ」
と、板井にツッコミをいれられ、余計不機嫌になってしまう。
 いいトバチリだ。

「部長もバナナ食うって?」
「部長は豚しか食わんだろ」
 板井が仕方なく話を振ると、そんな返事が返ってくる。
「それじゃ共食いだろ!」
 何故か電車とふざけていたはずの課長がツッコミをいれた。課長が地獄耳なことに板井はビビッていたのだった。

****

「おまえ、部長に苗木押しつけたのか? 前も何か押しつけてたよな」
「いつもですよ」
 課長の言葉に板井がやれやれというポーズを。
「さすが、塩田さま! ういー」
 電車が茶化してくる。塩田は、気にせずししゃもを加えていた。現在五皿目である。

 やっぱりビールにはししゃもだな。

「部長は塩田がお気に入りってか?」
「それじゃ、塩ぶたー」
 課長の言葉に電車がツッコミを入れるが酷い言われようである。塩田は次のししゃものことしか考えていなかったが。
「へい! お待ち!」
大将が塩豚を持ってきた。
「え? 頼んでないけど。バナナしか食べないし」
 電車はキョトンとしているが、さりげなく妙なことをいっている。

 お前はゴリラか!
 ああ、ゴリラだった。失敬。

「お客さーん、困りますよ」
 頼んでないと言ったことを言われるのかと思ったら。
「バナナばかり食われちゃ。在庫なくなっちゃうじゃないですか」
 電車の前には新たなるバナナ料理が運ばれてきた。どんだけバナナ食うんだ!
「えーじゃあ、塩豚にバナナ挟んでくれたら食べる」
 大将は渋々持っていった。

 バナナ塩豚?
 上手いのか? それ
 いや、食べないが

「俺、唐揚げたの……ぐはっ!」
 板井は腹を蹴られた。
「骨付きチキンは可だけど、それはダメ!」
 板井は、しかたなく骨付きチキンを頼むが、クリスマスサイズだった。
「え、これ?」
「鶏では無さそうだな」
 どう見ても七面鳥。
 板井は渋々かじりついたが
「へい! お待ち!」
 大将が持ってきた塩豚バナナがバナナ型になっていることに吹いた。

****

「そういえば以前さ、金欠になってクリスマス商戦で余ったスモークの七面鳥が安かったから大量買いしたんさ」
と、渋い顔をして課長が。
「あんまり上手くなかったんさ、煮ても焼いても口に合わなかった」
 トホホといって項垂れる。
「スモークは合う、合わないありますからねー」
と、相変わらずバナナ料理ばかり食べている電車が。

 それ以前に君はバナナしか食わんよね?

「余計にひもじかった」
 その反動であんなにまるご○バナナばかり食べるのか?と塩田は頬杖を付きため息をついた。板井は何故か感動してうるうるしている。あの話に感動するところあっただろうか?

「俺もありましたよー。変わったカップめん箱買いしたら口に合わなかったこと」
 あ、なるほど体験思い出して泣いてたわけね。
(どちらも実話ですw まるごとバ○ナは食べませんw)

「あ! ビール追加で」
 横を通り過ぎた店員に板井が声をかける。
「塩田は何かないの?」
と電車に話を振られるが特になにも面白いことは…
「そういえば、好きなお菓子を箱買いしたら途中で飽きて、他の食べ方調べたらのって無くて」
「うんうん」
「じゃが○こみたいにお湯入れてみたんだけれど、おもっくそ不味かった」
「え?何にお湯いれたの?」
「ポ○ロング」
(実話である。おもっくそ不味かった!)

****

「電車は、なにか失敗談ないのか?」
 人生失敗しかなさそうな電車でんまに課長が話をふると、よくぞ聞いてくれました! という顔をする。どうやら切実らしい。
「夏に毎日食べようとところてんを買ったんですよー。タレが不味くて食べきれなかった!」
「ところてんはなぁ。マロ○ーとかならいろいろアレンジできそうだが」
と、板井。
「あと、塩タレのレトルト焼き鳥。量がありすぎて飽きちゃって」
 くくくと悔し泣きをしている。バナナもそのうち飽きそうだが。

「リメイクをグーグル先生で調べまくったんだけど作り方はあるけど、リメイク料理なくて」
 電車は額を打ち付け悶絶している。
(どちらも実話である。額は打ち付けないが)
「結構失敗談多いなぁ」
「リメイクで上手くいったとかないのか?」
と、課長。
 挙手したのは塩田である。

「食べきれなかったネギトロをニンニク、生姜、醤油でそぼろにしたら肉そぼろより柔らかくて旨かったぞ」
「ヘルシーじゃん!」
と、電車。
「あとは刺身は良く、余ったら生姜醤油で炒めるな。結構旨い」
「買いすぎたらいかん! と言う教訓だな」
と、課長。
「アマゾ○に誘惑が多すぎるんだ!」

「買って旨くてハマったものとかは?」
と、問われ
「ニチ○イの唐揚げは旨いぞ。さくさくして衣が薄めでちゃんと唐揚げって感じがする」
と塩田は答えたが
「俺、たーのも!」
 電車がスマホを弄りだす。

 お前はバナナしか食わんだろ!

(全部実話である。ニチ○イの唐揚げおすすめですw 冷凍)
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