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────3話*俺のものだから

12・大好きな君との優しい夜

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****♡Side・電車でんま

『パンツ履くから先に出る』
『えッ?』

 塩田は謎の一言を残し、先に浴室から出て行った。電車は、混乱していたが五分ほど間を置いて浴室から出る。

──いつもパンツ履いてたと思うんだけど?

 電車は身体を拭き、お気に入りのバナナ柄のハーフパンツを身に着けると、髪を拭きながらリビングへ。
 塩田はいつも通り”どこに売ってんだそれ”と突っ込みたくなる”〇多の塩”とプリントされたTシャツに、灰色のスウェットを履いていた。とてつもなくダサいが、元が美人なのでちょうどいいのかもしれない。
「塩田、パンツ履いた?」
とふざけて問うと、彼は何か返答をしようとしていったん口を閉じた。
 そして、
「上も着ろよ、風邪ひくだろ」
とソファーの背もたれにかかっていた、Tシャツを投げて寄こす。
「なんだよ、俺の肉体美見せてやろうと思ったのに」
と冗談を返せば、
「風呂場で見た」
と言われてしまう。

 仕方なくTシャツに袖を通し、リビングのダイニングテーブルへ。
「めずらしいね、今日はカウンターじゃないの?」
 電車の作った料理を並べている彼の傍まで行くと、その手元を見つめて。
「今日は品数多いから」
 一見、表情に変化はなさそうに見えるが彼はとても嬉しそうだ。今日は好きな料理がいつもより多いからだろう。

 ダイニングテーブルは対面の椅子ではなく、木製のベンチシートに並んで座るものだ。先日向かい側に座ろうとしたら、
『恋人は並んで座るものだろ?』
と海外映画を観ながら彼は電車に不満をもらした。
 そんな彼を堪らなく愛しく感じたのを覚えている。ただやはり、時々不安になるのは否めない。

 恋人だから、そうしたいのか。
 そうしたい理由として”恋人なのに!”と言っているのか判断がつきかねる。

──それでもやっぱり変わらないのは……。
 俺に”恋人らしいことをしてあげたい”
 って思っているところかな。

 早く食べたそうにしている彼に腰かけるよう促すと、自分も隣に腰かけ手を合わせた。
「いただきます」
 やはり彼は嬉しそうだ。こんな日が毎日続くといいなと思っていると、
「いつ越してくる?」
と問われる。
 彼が嬉しそうなのは料理のせいだけではないようだ。
「休みの日。でも、今週は遊園地いくし……。挨拶にも行かなきゃならないし、来週かな」
と答えると、彼の中では思ったより予定が早かったのか、
「そっか」
と言って微笑んだ。

──塩田が可愛すぎて困る。

「なんだよ」
 ニコニコしながら彼を見ていると、電車の視線に気づき眉を寄せる。
「可愛いなと思って」
「ふーん」
「ね、どんなパンツ履いてるの?」
 可愛いと言われ、まんざらでもなさそうな彼に嬉しくなって、電車は調子に乗った。背中のほうからスウェットのウエスト部分を引っ張ろうとして、
「ダメだって」
と怒られる。何故か彼は涙目だ。
「どうせ後で見るだろ」
「塩田?」
 今はダメ、と電車の腕に手をおく彼に何故か、興奮してしまっていたのだった。
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