弱小スキル「自動マッピング」が実は偽装されてました? 〜気弱なのに、(ほぼ)強制的に神殺しをさせられそうな件〜

苺 あんこ

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-はじまりの陰謀-編

一日のはじまり? 終わり?

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 彼は二つの問題に直面していた。
 
 一つは、Tシャツとルームパンツという着の身着の儘きのみきのままの状態で召喚されたこと。

 これでは外に助けも呼べないし、帰ることもほぼ不可能だろう。食料もなければ、寒さを しのぐ毛布もない。

 スマホでもあれば地図を調べられたかもしれないが、家の机に置きっぱだ。

「これで異世界ってのは確定だな......」

 そしてもう一つは、彼の召喚された洞窟がゴブリンの巣だったこと。

 時間を遡ること少し前。俺が起きてからものの数分後になにやらおかしな声が聞こえてきた。

「グギャアッ、グギギ!」

「ググゲ、ゲグッ!」

 明らかに普通の動物が出す類の鳴き声ではない、とすぐにわかった。
 
 それが数匹こちらに近づいてくる足音が聞こえた俺は、物陰に隠れて静かにじっと様子を伺う。


 彼の幸運は、起きてすぐに数メートル先にある光が漏れている 箇所かしょ、おそらく洞窟の出口であろう場所に向かわなかったことである。

 仮にすぐ出口に向かっていれば、ゴブリンと出くわしたかもしれない。見方を変えればすぐに出ていれば逃げられたかもしれない、とも言えるわけだが。

どのみちゴブリンがいる時点で外には魔物がいるだろうから、危険には変わりない。


 光の差す先から現れたのは、ツノの生えたウサギーーの両耳を掴んで仲間と楽しそうに笑うゴブリンだった。狩りにでも行っていたのだろう。

 なぜゴブリンだとわかったかって? それは簡単な質問だ。異世界に関する知識が少しでもあるならゴブリンの姿は容易に想像できるはず。

 濃い緑色の肌に尖った耳、小さな背丈で骨の浮き出た細い身体。爪は長く伸び、黄ばんでいて所々が黒ずんでいる。おまけにカエルのような独特な目。

 漫画で見るよりも生々しくて、とても気持ち悪い。

 (全部で4匹か......最悪だな)

 声には出せないので、頭の中で数える。

 するとゴブリンの足音が段々、こちらに近づいてきた。

 (やばいっ! バレる!)

 と、思ったのだが不幸中の幸いで、エイトが召喚された場所は洞窟の行き止まりに当たる部分だったのだ。

 知能が低いと言われるゴブリンでもそのことは理解していたようで、こちらに気づくことなく奥へと進んでいった。

「ふぅ......。仮に神が俺を召喚したんだとしたら、スポーン地点くらいちゃんとしろ! と文句を言ってやる。覚えてろよ」

 負け役のセリフを吐きながらかっこつけているが、握りしめた彼のこぶしは手汗でビショビショだ。

 さて、危険は去ったのでいよいよこの洞窟から脱出するーーのかと思いきや、まだ同じ場所にとどまっていた。

 なぜなら、彼が気弱だからである。

 奥のほうに行ったとはいえ、なにやら話し声が聞こえる距離にいるし(だいぶ遠い)、まだ明るいからもう一度、狩りに行くかもしれないし(ウサギを六匹くらい捕まえていた)、外に仲間がいるかもしれない(これはある)。

 なので万全ばんぜんを期して明日、再びやつらが狩りに出かけたときに脱出することにしよう。

 というか怖すぎて足が動かない。

 それまで警戒をおこたらないように気をつけて見張りをーー


ーーザッザッ

 複数の足音が聞こえて、俺はやっと目を覚ました。

 (ん? やば、寝てた)

 大事な約束に寝坊したくらいの心臓のドキドキが、自分の耳だけに鳴り響く。

 この男、慎重なのか大胆なのか、それともただのアホなのか。

 ともあれゴブリンたちが狩りに出かけたらしいので、満を して洞窟の外に出たのだった。

「久方ぶりの光は目に染みるな」

 しかしここでも問題が発生する。

「最悪だ......」

 予想はしていたが、四方八方しほうはっぽうが森。これではどこに行けばいいのかわからない。

 Tシャツとルームパンツのエイトが一度でも魔物に出会えば、それは死を意味する。

「もうなんか、この洞窟が一番安全な気がしてきた」

 冷や汗をかきながら、俺は一日のはじまりを感じた。......いや、すぐに終わるかもしれないが。
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