喜んだらレベルとステータス引き継いで最初から~あなたの異世界召喚物語~

中島健一

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第60話

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~ハルが異世界召喚されてから8日目~ 

「それではこの4名は今日の放課後この教室に集まってくれ」 

 本来はレベルアップ演習からの帰還中の為、授業をする予定などなかった。スタンはというと昨日学校関係者にクロス遺跡での出来事を伝え、今日は教会関係者や国の諮問機関に事件についての詳細を報告しに行くらしい。ということで放課後までは自習となった。 

 沈黙する教室内。 

 アレックスが席を立ち提案する。 

「みんなさ!ハルに魔法教えて貰おうよ!」 

「あ、それ賛成!」 

 リコスがメガネをかけ直して賛同する。 

「わ、わたしも!教えてほしいです!」  

 クライネも賛同する。いつもは消極的だが魔法好きのクライネらしい反応だった。 

「私も教えてほしい」 

 マリアも賛成した。 

 ゼルダは、少し迷ってから賛同した。 

 男達は、 

「俺は遠慮する」 

 レイは席を立ち教室から出ようとすると、マリアがどこへ行くか尋ねた。 

「家で明日の訓練をする。放課後迄には戻る」 

 教室から出ていった。 

「旦那に帰りは何時になるか訊いた時に返ってくるセリフみたいだな…」 

 ハルがツッコミをいれると何人かが笑った。 

「俺も別で訓練する」 

 スコートも立ち上がり去っていく。ゼルダが引き留めようと少し動いたが思い至って止めたのをハルは見た。 

「僕も帰って街の女の子と会う約束してるから」 

 アレンも帰り始める。 

「拙者は教えてほしいでござる」 

 デイビッドは残った。 

「じゃあ訓練場でやろっか?この時間は空いてるってスタン先生も言ってたし」 

「いいね~!」 

 ハルを先頭にして訓練場へと向かう。その間に女子達がなにかを話している。 

「ねぇあのクロス遺跡の一件で男子達変わったよね?」 

 アレックスがヒソヒソした声で言うと、 

「あの~拙者も男子なのですがぁ……」 

 デイビッドが申し訳なさそうに発声する。 

 忘れてたと言わんばかりの表情を浮かべるアレックスは取り繕うようにして訊いた。 

「まあまあ、でもそんな感じしない?」 

「む~ハル殿の強さは正直嫉妬しますからなぁ。男なら憧れるけど、男だからこそ悔しいというか……」 

───────────────────── 

 レイは自宅の訓練施設でトレーニングをしている。 

 父の知り合いで現役を退いた戦士と試合をしていた。 

「シューティングアロー」 

 レイの唱えた魔法に戦士はそれを剣技の防刃を使って抵抗力、耐久力を上げて弾く。弾いた手はビリビリと痺れる。戦士はレイに向かって言った。 

「腕を上げましたな?ならば次は此方から参りますぞ?」 

 戦士は剣技の剣気を使い身体能力を上げレイとの間合いを詰める。 

───────────────────── 

『離れろ』 

 クロス遺跡に行く前に皆で買い物に行ったときのことをアレンは教室から出たときに何故か思い出していた。 

 あの時、冒険者にからまれた時、もしハルがいなかったら、スコートはどうしていたのだろうか。 

 ──彼がやられて、次は僕とデイビッドが相手をしてたのか?スコートは周りのことを何も考えちゃいない。僕達を巻き込んで危険に晒した。はぁ…なんで僕はこんなにアイツのことが嫌いなんだろうか…… 

 すると、目の前にスコートがトボトボと歩いているのを目撃する。 

 スコートとアレンは目的地の方角が一緒なのか、アレンは先に教室から出たスコートに追い付いてしまった。 

 黙ったまま追い越すのも嫌なのでアレンはスコートに話し掛けた。 

「ねぇ、どうして選考会に出ようと思ったの?」 

「もともと出るつもりだったからだ」 

 アレンは上を向いて思った、こういう奴だったぁ!!話し掛けた手前もう少し話題をふろうとするアレン。 

「まさかハルとブラッドベル兄弟に勝てるとか思ってる?」 

 アレンはスコートを試すような質問をした。 

「…以前の俺だったら嘘でも勝てると答えていたかもしれないな……」 

 ──じゃあ今は!? 

 スコートは続けて話そうとすると、 

「よぉ!弱虫!久しぶりだなぁ!」 

 体格の良い二人組に絡まれた。制服のネクタイの色は2年生を表していた。 

 ハル達1年生は赤色のストライプが入ったネクタイを着用している。2年生は青色だ。 

 ──弱虫って…スコートのこと? 

 アレンはスコートを横目で見た。スコートは黙ったままだ。しかし堂々としていた。 

「なんだよ?無視か?それとも怖くて喋れないのか?ハハハハ」 

 二人組の2年生達は笑っている。 

 ──なんだコイツら? 

 アレンが戸惑っていると、
  
「お前明日の選考会でろよ?俺達が昔みたいに虐めてやるからよぉ?」 

「おいおいそう言ってやるなよ?ていうかコイツは選考会にでるような度胸ないって!?」 

 ──この2年生達は知らないのか?スコートがAクラスだって…… 

「そういえばお前、騎士爵だったよな?なんでここの制服着てるんだ?」 

「あ~あれか戦士養成所から追い出されたんだな?」 

「「ハハハハハハ」」 

 一通りバカにした後、スコートの肩を叩いて二人組は言ってしまった。 

「…………」 

 黙りこくるスコートにアレンは話し掛けた。 

「…どうして何も言い返さなかったの?」 

「…わからない……」 

 スコートはいつもよりも落ち着いて答える。 

「わからないって…悔しくなかったの?」 

「悔しかったさ……」 

 要領を得ないスコートの返答にだんだん苛立つアレン。 

「じゃあ、なんで何も言わないんだよ!?僕もバカにされたみたいじゃないか!?」 

 アレンは前々からスコートに感じていた苛立ちを気付いたらぶつけていた。 

「それはすまなかった。ただ、驚いていた。まさか俺を虐めてた奴にこんなところで会うとは……」 

 ──スコートが虐められてたって? 

 アレンは信じられないでいた。 

「あの時の嫌な記憶が甦った。でも同時に自分の小ささを改めて感じた……」 

 アレンはスコートが何を言っているのかよくわからない。 

「さっきの質問だが、俺はアイツらには勝てない。だけど自分を出しきる。どんな形でも…。そうすれば俺は只の弱い奴じゃないと証明できる気がするんだ」 

 ──弱い奴だなんて…… 

 あの自信家のスコートが自分のことをそう表現したことにアレンはまたも驚いた。 

『只の弱い奴じゃないと証明できる……』 

 アレンは何故かその言葉が頭から離れなかった。 

───────────────────── 

 ゼルダは皆と一緒に訓練場にいた。 

 ハルは現在、デイビッドとアレックスに魔力を感じる訓練を施している。 

 ゼルダの隣にいたリコスが話し掛けてきた。 

「どうして選考会に出るの?あんまり言うべきじゃないけど、勝ち目は……」 

「─わかってる。わかってるけど……」 

 リコスが質問をいい終わる前にゼルダは答えた。 

『クロス遺跡で何かあったの?』
『あの時何を思ったの?』 

 皆そう聞きたいのは山々だったが、中々にショッキングな出来事だった為、あの時のことを皆、話に出したがらないし訊き出さなかった。 

 しかし、ゼルダは口にした。 

「私、クロス遺跡で死にかけてるの……」 

「え!?」 

 リコスだけでなく周りにいたクライネとマリアが驚愕の表情を浮かべている。 

「多分…死ぬよりも恐ろしいことをされそうだった……」 

 心配そうな表情になるリコス、マリア、クライネ。 

「でもスコートが私を守ってくれたの。自分を捨ててまで……。皆はどうして選考会に出なかったの?負けるとわかってるから?」 

 皆、上級生、ましてやハルやレイに勝てるなんて思ってもみない。 

「私も皆と同じよ…。どうせ負けるって……。でも負けると分かっていても私を守り続けてくれたスコートの姿を見て思ったの。私も彼のようになりたいって。とっても格好悪くてとっても格好よかったから……」 

~ハルが異世界召喚されてから9日目~ 

 正午、照りつける恒星テラは吹き抜けになっている闘技場のリングを眩しく照らす。円形のリングを囲うように観客席が連なり、闘技場全体は大きな山の頂上を上空からくりぬいた形になっている。王都では城の次に目立つ規模の大きさだ。 

 熱気とこれから行われるであろう熱い戦いに早くも興奮している観客たちは誰もいないリングを見下ろしている。 

 三國魔法大会の代表を決める試合であるため、観客と言っても魔法学校の生徒か父兄と言ったところが主だった。後は貴族や王国の魔法士が将来性豊かな生徒を見極めようとしている。 

 大会本番となれば、各国の要人や貴族、冒険者、傭兵団、魔法マニア等、多岐にわたる観客がやって来る。これだけでも経済的に国は潤うと言われている。 

「レナード様の美しい戦いをまた見れるなんて……」
「あぁ素敵……」
「やっぱりレナードだろ?」
「弟はどのくらい強いのかな?」 

 魔法学校の生徒はこれからでる同級生達の勇姿見届ける。中でも前回、前々回大会の優勝者レナード・ブラッドベルの注目度は高い。このお祭り気分を味わい、みんながどこかソワソワしていた。 

「ハル勝てるかな?」
「ハルって強いのぉユリお姉ちゃん?」 

 グラースとマキノがユリに質問する。 

「ハルくんはとっても強いのよ?ね、ルナさん?」 

 ユリは自慢気に二人の子供達に言うと、ルナに同意を求めた。ユリは子供達と触れ合うことで、母親を失なった悲しみを紛らわせるているのか、それとも乗り越えたのかはわからないが、ハルが見る限り元気であった。地下施設で過ごした辛い経験も、今では彼女を強くした要因の一つとなって昇華しようと努めている。ハルはユリに魔法を教えようと考えていた。 

 妖精族であることで、今後も思いもよらぬ事件に巻き込まれる可能性が予測できたからだ。それに上手く対処するならば強くなっておけば、選択の幅が広がる。  

「うん!第二階級魔法も唱えられるし凄く強いんじゃないのかな?」 

 ルナはこの世界線ではハルの戦闘を見たことがない。故に曖昧な解答をユリと子供達に提示する。 

 銅鑼のけたたましくも血管を通る血をたぎらせる音が鳴り響く。観客達は熱を高めながら徐々に静まった。 

 風属性が付与されている魔道具が声を闘技場全体に響かせる。 

 アマデウス校長はリングに上がると、 

「これから三國魔法大会、フルートベール王国王立魔法高等学校の代表者3名を決める選考会を行う」 

 開会の簡素な言葉を聞き終えた観客達は抑えていた感情を発散させ、これから出てくる選手達の健闘を称えた。 

「「「「うおおおおおおおおお!!!」」」」
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