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6.日が昇る直前のこと◆noa

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吸血鬼はなるべく足音を立てないように、小さな蝋燭を手に持ち、そろそろと地下室への階段を降りていた。
これから寝室に行き、ウィリーのことを起こさなければならないのだ。日が登ったらソファで寝ると宣言していたから。


実を言うと、正確には、この城にはもう一つだけベッドがある。
しかしそれを使う人物があと数日もすればこちらにやってくるので、ウィリーに使わせるのは憚られた。というよりも、嫉妬に似たものなのかもしれない。とにかく使わせるのが嫌だったのだ。


寝室にたどり着きドアを押し開けたら、規則正しい寝息が聞こえた。思わず笑みが溢れる。起きているあいだ、あんなに反抗的でうるさいのに、スヤスヤと眠っているのが可愛いと思った。もちろん、生意気なところもそれはそれで可愛いのだが。


『絶対にまた、ノアに会うことができると信じてる』


蝋燭を吹き消したとき、遠い昔に言われた言葉が耳の奥に響いた。胸に痛みが走る。甘くて鋭い痛みだ。
寝る前になるとこうしていつも思い出す。


手を伸ばし、ウィリーを起こすために声をかけようとして、ふと気が変わった。代わりに、あらわになっている首筋にかかった金色の髪の毛を指先でそっと払う。吸血鬼は夜目が利くので、蝋燭を消したあとの暗闇でも、すべてを詳細まで見ることができた。


身をかがめて、吸い寄せられるように、その白い首筋にそっと口をつける。愛おしさで焼けつきそうになりながら、ウィリーと共にいられるこの先の毎日を思って泣きたい気持ちになった。


「んっ……」


吐息を漏らし、ウィリーがびくんと反応した。唇を離して反応を見るが、やはり起きる様子はない。


吸血鬼はしばし逡巡したあと、静かにベッドに身を沈めた。とても大きいので、男二人が並んでもどうということはなかった。そのままウィリーに背を向けて目を閉じる。自分の中にある激情に耐えるすべはとっくに身につけていた。

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