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2. レエリナサウラと秘密結社 →数億年前地球 中世ヨーロッパ

第23話 殺してしまうには惜しいよね(牡丹&まさみ)

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「で、そっちはどうなのよ?」
「知らないわ。」
 私はそっけなく言葉をつむぐ。
「知らないって、どういうことよ」

「なんか、幸せそうで腹がたったわ。相当な能天気っぷりよ。あれは、あれで大した者かもよ。」

 私は豪奢な毛皮におおわれた小さなエリナサウラが引く車に乗っている。私の名前はまさみ。
 牡丹は、今日は常盤色ときわいろはかまに白地にたいそう艶やかな蜜柑色みかんいろ金赤色きんあかいろの着物をきていて、足元はブーツで決めている。

 いつも通り、牡丹の衣装は、私のシンプルさでモダンを追求する衣装いしょうとは大違いだ。

 牡丹は私の言葉を聞いて、美しいお顔を少しふっと緩めて、鼻で笑った。

「ね、今、鼻で笑ったでしょう。」
「そうね。失敬。思わず笑っちゃったわ。」
「それさー、私が、腹が立ったことに笑ったわけ?それとも能天気っぷりの間抜けさ加減に笑ったわけ?」
「どっちでもいいじゃない。」
「よくないわ。気になってイライラするじゃない。」

「あなたも嫉妬するのねと思って。」

「やっぱそっち。」
「そうよ。」
 私はため息をついて、自分の手のヒラを見つめた。

「なんかさ、若君わかぎみって凛々りりしくて良いお人じゃない?殺してしまうには惜しいよね。」


「しっ!」
迂闊うかつにものを言わない。」
「だってここにはあなたと私しかいないじゃない。」
「それでも、だめ。」
「分かった。」
「じゃあ、予定通りに。」
御意ぎょい

 私は、一通りのない寂しい場所で、莫大ばくだいな富のあかしである貴和豪一門の恐車からおりた。振り返ると、牡丹が手を軽く振ってうなずいてくれた。
 
 豪奢ごうしゃな毛皮におおわれた小さなエリナサウラが引く恐車は、静かに素早く通りを曲がって姿を消した。
 私は、誰も見ていないことを素早く確かめると、目の前の建物に入って行った。

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