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いざ出陣!
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「…それ本気で提案するんです?」
「私もそう言ったんですよ、兄様。でもそれしかないのではありませんか?」
「うーん…。」
後日、アルバート様を通じてカイル様をすずらんへと招いていた。
こっちが呼び出しているとはいえ、こんな簡単に来てくれるなんて王族であることを忘れそうになるわ。
王族って危機感ガバガバなんじゃないでしょうね…。
「お城の方で対応が進まないのは、そもそも人手が足りないからですよね?
であれば、その人員を確保する目途がある程度立てば、話は進むのではありませんか?」
「物事はそう単純ではありませんよ。なにしろ依頼内容は魔獣退治。
一般市民をかき集めたとしても太刀打ちできません。」
「えぇ。そこで魔獣退治に乗り出している冒険者たちに声をかけるのです!」
冒険者として身を立てている者であれば、武器の扱いに離れている人が多いでしょうし、
少なくとも一般の人よりは魔獣に対抗することができるはず。
この付近にどれだけの冒険者がいるかは分からないけど、やってみる価値はあると思うのよね。
問題は…。
「報酬をどこから出すか、ですかね。」
「そうなんです…。兵士の方々は国にお勤めですから、賃金に問題はないかと思うのですが。
不特定多数の冒険者を、どのような形で雇えばいいのか…。」
「そこに関して、私が相談を受けていたのです。
ある程度の金額を用意することは可能なのですが、
あくまで私費なので1人1人にいき渡るように、となるとそこまでの金額になるか…。」
「ふむ…。」
何でも屋の活動は基本的に報酬を設定していない。
ましてや今回の依頼は既にお城に主導権が移ってしまっているから、私たちが干渉することは難しい。
お城での話し合いに関わっているカイル様に、何とか解決策をねじ込んでもらいたいところだけど…。
「…現状、国からの報酬金を期待することは難しいと思いますよ。
ましてや参加する冒険者の人数が分からないとなると…。」
「お金を用意しようがない、ですよね…。」
「まぁ、必要になる冒険者の人数を逆算することはできますかね。
派遣できる兵士の数を確定させて、それから補充したい人数を割り出せば…。
正直な話、ある程度手練れな人間であれば何人でも欲しいところですがね。」
アハハと乾いた笑いで返す王子の目は笑っていない。
普段であれば腹黒い、少し信用ならない笑顔だなって思うところだけど…。
お疲れなのね。
実際のところ、実施する作戦の規模がはっきりしていないし、万が一に備えて人手もそろえておきたいわよね。
でも提案できるような形にするには、その方向でいくのがいいでしょうね。
「城の人間はできるだけ派遣する兵士の数を少なくしたいでしょうが…、
まぁそこはうまく丸め込むしかないですね。
もう少し時間がかかりそうですが、何とか会議に挙げてみましょう。」
「よろしくお願いします。」
ここから先はカイル様に任せるしかない。
…こんな状況だと、私たち市民は勝手よね。国の対応に好き勝手文句言っちゃってさ。
人から相談を受けて対応する側になって初めてわかったわ。
一つの相談を解決するために、いろんなことに気を回さなくちゃいけないんだもの。
それでも私たちは声を上げることを止めるわけにはいかない。
「…まぁそんなに心配なさらずに!
アルの方から支援が受けられると言ったら、貴族連中も多少気楽に受け入れるでしょう。
今回のことがうまくいけば、また新たな前例ができて面白いことになりそうです。」
…不安そうな顔でもしていたのかしら。
やけに明るい雰囲気で話しかけてくるカイル様に吹き出してしまう。
本当、本来だったら不敬罪で処罰されるところよ、私。
「報酬金の方は力になれないかもしれませんが、
私たちの方でも何か協力できることがないか、知り合いにあたってみます。」
「ここまで活動をしてきたあなた方ですから、関わってきた人たちとの繋がりは確かなものです。
信頼していますよ。…無理はしないように。」
「もちろんです。」
私たちには私たちなりの人脈がある。
皆自分たちの生活で大変な時だと思うけど、この依頼が達成できれば助かる人はたくさんいるはず。
そういった人たちに少しずつ協力してもらうことができれば、きっと魔獣退治はうまくいくわ!
さあ、こうしちゃいられない。私たちの戦いはもう始まっている!
「私もそう言ったんですよ、兄様。でもそれしかないのではありませんか?」
「うーん…。」
後日、アルバート様を通じてカイル様をすずらんへと招いていた。
こっちが呼び出しているとはいえ、こんな簡単に来てくれるなんて王族であることを忘れそうになるわ。
王族って危機感ガバガバなんじゃないでしょうね…。
「お城の方で対応が進まないのは、そもそも人手が足りないからですよね?
であれば、その人員を確保する目途がある程度立てば、話は進むのではありませんか?」
「物事はそう単純ではありませんよ。なにしろ依頼内容は魔獣退治。
一般市民をかき集めたとしても太刀打ちできません。」
「えぇ。そこで魔獣退治に乗り出している冒険者たちに声をかけるのです!」
冒険者として身を立てている者であれば、武器の扱いに離れている人が多いでしょうし、
少なくとも一般の人よりは魔獣に対抗することができるはず。
この付近にどれだけの冒険者がいるかは分からないけど、やってみる価値はあると思うのよね。
問題は…。
「報酬をどこから出すか、ですかね。」
「そうなんです…。兵士の方々は国にお勤めですから、賃金に問題はないかと思うのですが。
不特定多数の冒険者を、どのような形で雇えばいいのか…。」
「そこに関して、私が相談を受けていたのです。
ある程度の金額を用意することは可能なのですが、
あくまで私費なので1人1人にいき渡るように、となるとそこまでの金額になるか…。」
「ふむ…。」
何でも屋の活動は基本的に報酬を設定していない。
ましてや今回の依頼は既にお城に主導権が移ってしまっているから、私たちが干渉することは難しい。
お城での話し合いに関わっているカイル様に、何とか解決策をねじ込んでもらいたいところだけど…。
「…現状、国からの報酬金を期待することは難しいと思いますよ。
ましてや参加する冒険者の人数が分からないとなると…。」
「お金を用意しようがない、ですよね…。」
「まぁ、必要になる冒険者の人数を逆算することはできますかね。
派遣できる兵士の数を確定させて、それから補充したい人数を割り出せば…。
正直な話、ある程度手練れな人間であれば何人でも欲しいところですがね。」
アハハと乾いた笑いで返す王子の目は笑っていない。
普段であれば腹黒い、少し信用ならない笑顔だなって思うところだけど…。
お疲れなのね。
実際のところ、実施する作戦の規模がはっきりしていないし、万が一に備えて人手もそろえておきたいわよね。
でも提案できるような形にするには、その方向でいくのがいいでしょうね。
「城の人間はできるだけ派遣する兵士の数を少なくしたいでしょうが…、
まぁそこはうまく丸め込むしかないですね。
もう少し時間がかかりそうですが、何とか会議に挙げてみましょう。」
「よろしくお願いします。」
ここから先はカイル様に任せるしかない。
…こんな状況だと、私たち市民は勝手よね。国の対応に好き勝手文句言っちゃってさ。
人から相談を受けて対応する側になって初めてわかったわ。
一つの相談を解決するために、いろんなことに気を回さなくちゃいけないんだもの。
それでも私たちは声を上げることを止めるわけにはいかない。
「…まぁそんなに心配なさらずに!
アルの方から支援が受けられると言ったら、貴族連中も多少気楽に受け入れるでしょう。
今回のことがうまくいけば、また新たな前例ができて面白いことになりそうです。」
…不安そうな顔でもしていたのかしら。
やけに明るい雰囲気で話しかけてくるカイル様に吹き出してしまう。
本当、本来だったら不敬罪で処罰されるところよ、私。
「報酬金の方は力になれないかもしれませんが、
私たちの方でも何か協力できることがないか、知り合いにあたってみます。」
「ここまで活動をしてきたあなた方ですから、関わってきた人たちとの繋がりは確かなものです。
信頼していますよ。…無理はしないように。」
「もちろんです。」
私たちには私たちなりの人脈がある。
皆自分たちの生活で大変な時だと思うけど、この依頼が達成できれば助かる人はたくさんいるはず。
そういった人たちに少しずつ協力してもらうことができれば、きっと魔獣退治はうまくいくわ!
さあ、こうしちゃいられない。私たちの戦いはもう始まっている!
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