28 / 40
会議は踊る?
しおりを挟む
例の依頼書は無事にお城へと持ち込むことができた。
しかし、問題はそこからだった。
国からしてみても、この国の物流の要所となるこの道の安全確保は、
優先すべき内容であることは疑いようもないことだということなのだけど…。
あまりにも対応すべき箇所が広大だったのだ。
兵士の派遣だけでは必要な人材を賄うことが難しいと、ストップがかかってしまっている。
どうしたものか…。
「こんにちは。その後何か動きはありましたか?」
「アルバート様…。いえ、今のところ何も。」
「そうですか…。」
お城への依頼が滞り始めたころ、自分にも何かできることを探すと一時自領へと戻られていたのだ。
せっかく来ていただいたけれど、何もいい報告ができない状況だわ。
「アルバート様の方は、何か?」
「こちらも芳しくありませんね。今回該当する地域は私どもの領地と少し離れていますので…。
父上に協力を訴えてはみましたが、どうにも腰が重い状態です。」
申し訳ありませんと頭を下げようとするアルバート様を慌てて止める。
この状況はアルバート様が悪いわけではない。
国だって、むやみに兵士を派遣すれば国の防御が薄くなることを懸念しているのだ。
一領主が、自分の土地から遠い場所にわざわざ兵を派遣するなんて、かなりのメリットがないとできない判断よね。
でも何だかんだ話し合いの場を持ってくれているのね。
少なくとも、この件に関してどうにかしたいと皆が思っていると信じたい。
「カイル兄様の話では、該当地域を分割して複数回に分けて対応したらどうかとの案が挙がっているそうです。」
「…それだと1回ごとに派遣する兵士の人数を減らすことができる、という考えなんですね。」
「えぇ。しかし、今度はどこから手を付けるかという部分が揉め始めているとも…。
なかなか進まないと頭を悩ませているようでした。」
それもまた1つの手段。
でも、私たちが連名でお城に持ち込んだのは、部分的に対応しても解決が難しくなる可能性があるからだ。
せめて被害がどういったものか調査できれば違うのかもしれないけど…。
そういった専門家も少ないわよね。
確実な情報だってそう。私たちは魔獣に対して無知だわ。
「…人数がいれば、どうにかなるのでしょうか?」
「まずは、そうですね。とはいえ、魔獣退治は烏合の衆ではどうにもなりません。
下手をすれば、いたずらに被害者を増やすことにもなりかねません。
最低限武器の扱いができて、…命の危険を理解できている者がいいでしょうね。」
「適当にかき集めても、お話になりませんしね…。」
かつて街の外に出ただけで命の危機を感じたことのある私にとってみれば、
一般市民が魔獣と対峙した瞬間に動けなくなることは想像に易い。
あの時は、ウィルとレイが助けてくれたのよね…。
「…アルバート様。私に考えがあるのですが、協力いただけませんでしょうか。」
「…私にできることであれば。」
「兵士の数が足りないのであれば…。」
この国の各地にいる冒険者たちの力を集めるしかない。
しかし、問題はそこからだった。
国からしてみても、この国の物流の要所となるこの道の安全確保は、
優先すべき内容であることは疑いようもないことだということなのだけど…。
あまりにも対応すべき箇所が広大だったのだ。
兵士の派遣だけでは必要な人材を賄うことが難しいと、ストップがかかってしまっている。
どうしたものか…。
「こんにちは。その後何か動きはありましたか?」
「アルバート様…。いえ、今のところ何も。」
「そうですか…。」
お城への依頼が滞り始めたころ、自分にも何かできることを探すと一時自領へと戻られていたのだ。
せっかく来ていただいたけれど、何もいい報告ができない状況だわ。
「アルバート様の方は、何か?」
「こちらも芳しくありませんね。今回該当する地域は私どもの領地と少し離れていますので…。
父上に協力を訴えてはみましたが、どうにも腰が重い状態です。」
申し訳ありませんと頭を下げようとするアルバート様を慌てて止める。
この状況はアルバート様が悪いわけではない。
国だって、むやみに兵士を派遣すれば国の防御が薄くなることを懸念しているのだ。
一領主が、自分の土地から遠い場所にわざわざ兵を派遣するなんて、かなりのメリットがないとできない判断よね。
でも何だかんだ話し合いの場を持ってくれているのね。
少なくとも、この件に関してどうにかしたいと皆が思っていると信じたい。
「カイル兄様の話では、該当地域を分割して複数回に分けて対応したらどうかとの案が挙がっているそうです。」
「…それだと1回ごとに派遣する兵士の人数を減らすことができる、という考えなんですね。」
「えぇ。しかし、今度はどこから手を付けるかという部分が揉め始めているとも…。
なかなか進まないと頭を悩ませているようでした。」
それもまた1つの手段。
でも、私たちが連名でお城に持ち込んだのは、部分的に対応しても解決が難しくなる可能性があるからだ。
せめて被害がどういったものか調査できれば違うのかもしれないけど…。
そういった専門家も少ないわよね。
確実な情報だってそう。私たちは魔獣に対して無知だわ。
「…人数がいれば、どうにかなるのでしょうか?」
「まずは、そうですね。とはいえ、魔獣退治は烏合の衆ではどうにもなりません。
下手をすれば、いたずらに被害者を増やすことにもなりかねません。
最低限武器の扱いができて、…命の危険を理解できている者がいいでしょうね。」
「適当にかき集めても、お話になりませんしね…。」
かつて街の外に出ただけで命の危機を感じたことのある私にとってみれば、
一般市民が魔獣と対峙した瞬間に動けなくなることは想像に易い。
あの時は、ウィルとレイが助けてくれたのよね…。
「…アルバート様。私に考えがあるのですが、協力いただけませんでしょうか。」
「…私にできることであれば。」
「兵士の数が足りないのであれば…。」
この国の各地にいる冒険者たちの力を集めるしかない。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
何の取り柄もない営業系新入社員の俺が、舌先三寸でバケモノ達の相手をするはめになるなんて。(第2.5部)幕間 あるいは新年会の宴の席にて。
二式大型七面鳥
ファンタジー
青葉五月救出に成功し、スナック「轆轤」のリニューアル改装も成功裏に終わった年の瀬を経て明けた新年。関係者一同は、新装開店なった「轆轤」にて、新年会を催していた……
今回はいわゆる「日常回」、何か事件が起こるわけでも、オチがつくわけでもありません。
ただ、どうしても書いておきたかった、文章の形にしておきたかったネタがありまして。
その意味で、この話は、むしろ「龍の卵 ー時代遅れの風紀総番長「巴御前」、曲者の新入生に翻弄されるー」及び「雨降り狼さん夢の中」の後日談にあたります。
ぶっちゃけ、信仁と巴の関係が完成されるところが書きたかっただけです。自己満足です。
ラブなロマンスが書きたかったんです……言うほどロマンスか?って言うのは言わないお約束で。
※なので、カテゴリは悩みました。
※派手な展開は、16話目から始まります。8~9話は小手調べ。
唐突に無意味に脇役の設定が増える部分がありますが、脇役の方が世代としては古いキャラクターだったりするので、まあそのあたりは大目に見てやって下さい。いずれそいつらでも書きます、書きたい。
※カクヨムさんにも重複投稿してます。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?

一人ぼっちの辺境伯
暁丸
ファンタジー
「辺境伯の爵位を剥奪し、庶民とする」
数十年ぶりに王城からやってきた使者は、そう告げた。理由は、辺境伯が貴族の責務を果たしていないことらしい。数年前に王位継承の小競り合いがおき、公文書館が焼け落ち、辺境伯が何をしているか失伝していたのだ。
あの方が身罷られてもうどれほど経ったか…。ため息一つで辺境伯は勅命を受け入れた。
長編で書いてるお話の主人公、ステレのプロトタイプです。
山奥に一人で住む辺境伯という設定は、元々別のお話のゲストキャラだったのですが、一部設定を変更のうえ独立してあぁ成りました。ステレは元々はBBAキャラだったのです。
長編の方がちょうど辺境伯になった所まで来たので、こっちも独立の短編に纏め直してみました。
ショートショートで登場人物全員名無しです。ご容赦下さい。
(2022.03)読み直しておかしなところを修正しています。内容に大きな変更はありません。
(2022.04)元々、チョイ役予定だったキャラのバックストーリーを纏めただけなので、読み直したら「行間読めよ」と言わんばかりの説明不足が気になりちょこちょこ加筆してたんですが、それでも足りないように思えて来たので、1周年記念で前日譚と後日譚を新規に書いてみました。
若干コメディ寄りになってます。ぶっちゃけ、最終話できちんと完結した…と思った人は読まなくてもいい程度の話です。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる