リビングデッド

常夏の炬燵

文字の大きさ
上 下
19 / 58
魔族編

第十九話

しおりを挟む
「カッ……ッ!」

ザンゲの放ったビームがナナシの喉を貫いた。

「ナナシ君!」

「ナナシ!」

悪く思うなよ…これも、オレが生きる為だ…

エドは無意識にナナシから目を背けた。

「おっと!天界人!君も動いちゃダメだよ」

テンカにユメを見せつける。

「くっ」

「順番だからね。ナナシが立てなくなったら、君の番だから」

俺が立てなくなったら…という事は、俺が倒れなければ、テンカに被害が及ぶことは無い…

更にビームが三発ナナシの体を貫通する。

「流石。既に死んでるだけあってしぶといね」

「何故それを!?」

その事を知っているのは、俺とナナシ、神様とユメ…後は殺した本人だけの筈…

「まさか、お前がナナシを…!」

「勘違いしないでよ。僕は知り合いから
聞いたってだけ。犯人は他にいるよ」

「そいつは…誰なんだ…?」

「あ、喋れるんだ。それは言えないなー、まあ、この僕を満足させてくれたら、色々と教えてあげるよ」

更に数発、ナナシに撃ち込む。

それから、数時間、ナナシはじわじわと痛めつけられていた。

「ナナシ!もういい!立つな!」

「ナナシ君!もう逃げて!私の事はいいから!」

なんだよ…アイツ…何がオマエをそうさせる?たかが他人の為に…なんでそんなに自分を犠牲にできる…?
もう無理だろ…諦めろよ…なんで…なんで!

「しぶといな…後半からもう代わり映えしないし。もう飽きちゃった…」

やべー…ザンゲのヤツ、既に飽きてきてやがる…いいのかオレは…このままナナシを見捨てて…

「じゃあ、エド。代わりにナナシ撃ってよ。僕は次天界人と遊ぶから」

「なっ!?」

オレが…ナナシを…?

いや、何を迷ってる…やらなきゃ殺される…オレとアイツらは上辺だけの関係…
仲間なんかじゃねー…

「何してんの?早くしてくんないかな?」

ナナシの方を向く。
ナナシと目が合うが、その目からは、疑いが感じ取れなかった。
テンカの方を向く。
テンカからは、初対面の頃の敵対心が全く感じ取れない。

アイツら…もうオレの事、仲間だと思ってやがる…

気づいてんだろエド…!見ないフリすんな…!ナナシを見ろ!アイツはこっちを全く見てねーぞ!敵だと思われてねーぞ!テンカを見ろ!アイツはもう微塵も疑ってねーぞ!

オレの初めての本当の仲間だ。こんな奇跡二度と起きねーぞ!?

「はあ…めんどくさ…」

ザンゲが低いトーンでそう呟くとナナシに手をかざした。

「よく頑張ったけど、お前はもういいよ。さようなら」

掌に魔力を込める。
魔力弾を発射する瞬間、ザンゲの腕がなにかに弾かれ、明後日の方向へ飛んで行った。

エドの方を向くと、右手中指には、銃口のような穴が空いており、右目は、スコープのような模様になっていた。

そして、瞬時にユメを救い出しテンカの傍に避難させた。

「そっちを選んだか」

ザンゲがにやりと笑う。

「まさかお前が裏切るとはね。女の子も取られたし。今回は僕の負けでいいよ」

「なんだと…?」

「そうそう、僕を満足させたら情報を提供するんだっけ。そうだな…本当の敵は身近にいるよ。特にそこの天界人の近くにね」

「俺の近く…?」

俺に関係する人物…ここに居るやつらは違うとして、天界人の誰か…?それとも…

「それと、もう一つ。僕はもうこの戦いに関与しない。でも、安心しないことだね。今まで魔族に勝ててたのは僕のおかげだから」

「どういう事だ…?」

「僕はある人の指示で、君達のサポートをしてたんだよ。最強の魔族を作り出す為にね」

「最強の魔族…?」

「まあ、それは後々わかるだろうからいいとして、気をつけてね。今のままじゃこれからの魔族戦、苦労するだろうから、それじゃあね」

「あ、言い忘れてた。薄々勘づいてたかもだけど、エドは魔族じゃなくて、魔物ね。魔王じゃなくて、僕が地球の生物を改造したんだ。そんで、ナナシが戦った。巨大蜘蛛…チュラも僕の作品。次いでに、関係ないけど、あの時女の子が駆けつけられたのも、生き残れたのも僕のお陰だから、感謝してよね。バイバーイ!」

そう言って、ザンゲは四人を追い出した。

「逃げ…られた…」

「いや、逆だ…逃がされた。あのまま戦えば俺達は、確実に殺されていた」

テンカは密かに感じとっていた。
ザンゲの今まで感じたことの無いような、膨大な魔力に。

ザンゲ…一体、何者なんだ…
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ファラリスの雄牛

歴史・時代 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

【完結】ざまあ、してみたかったな2

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:14

小さな幸せ

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

僕の過去・現在・未来

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

処理中です...