インターセプト

レイラ

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第2部 3幕

インターハイ予選決勝ー徳丸高校ー6

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 拓斗は、1人でプレーしてしまい、慧に注意されていた。

 その場で謝ったものの、納得がいかない。難しい顔をする拓斗。

 梅木に挑発されて、ムキになる気持ちもわかる。俺も負けたくないから、勝負を仕掛けたくなる。

 だけど、バスケは個人プレーじゃない。チームプレーだから仲間がピンチの時はフォローすることが大事。

 梅木はフッと笑っている。

 推測だが、拓斗はすぐイラッとして、自分のプレーができなくなることを知って、怒らせるようなプレーを思いついたのだろう。

 城伯高校のディフェンス。

 梅木はボールを持ちながら、拓斗に来いよと目で合図していた。

 これをやられたら、俺もムカつく。でも、ここで冷静さを失ったら、相手の思うツボ。

 ますます悪い方向へと導かれてしまう。

「この野郎……」

 拓斗は眉をピクッと動かす。

「落ち着け!拓斗!!」

 怒りに身を任せて、ディフェンスをしそうになったことに気がついた灯が叫ぶ。

「挑発に乗るな!」

 ベンチから、記録していた美香の大きな声が飛ぶ。

「心を乱すな!」

 ベンチで見ている快の声も響く。

 拓斗にその声が届いたのか、届いていないのか。スルーして、梅木のシュートを狙う仕草に思わず反応してしまった。

 本当はジャンプしてはいけないところを、ジャンプして、スペースができる。

 そのスペースを使い、梅木はドリブルでゴール下まで切り込み、そのまま、フワッとボールをリングに置いてきた。

 ドライブからのレインアップシュートだ。

「挑発に乗りやすいな……」

 俺はため息をついた。冷静であれば、梅木がまだ、何をするかわからないため、たとえシュートする仕草を見せてもジャンプする必要はなかった。

 城伯高校のオフェンスだが、ここでも、また、拓斗は梅木の挑発に乗ってしまう。

「俺を抜いてみろ」

 梅木は口角を上げている。拓斗を止められる自信があり余裕だ。

「抜いてやる」

 拓斗はドリブルをして、空いたスペースに入り込もうとするが、そのスペースはない。

 ただ、貴のところが空いている。パスを出して貴に任せることが今のプレーでは必要。

「こっちだ! 拓斗!!」

 貴がパスを要求する。

 拓斗は貴の要求には応えなかった。あくまで、梅木を負かしたい、その思いだけで強引に突っ込んでいった。

「バカッ! 無理にシュートに行こうとするな!」

 智樹がすぐにリバウンド体制に入りながら呟く。

「1人でプレーするなって言っただろ」

 慧が再度、拓斗に忠告する。

 慧の忠告に、わかりましたと返事をする。

 返事はするけれど、慧の忠告を無視して、拓斗はひとりプレーを続けていた。

 試合を見ている人も、拓斗がひとりで暴走し始めていると思っているだろう。

 高宮コーチは手を顎に当てて、俺を呼んだ。

「拓斗と交代だ」

「はい」

 俺は息を吐いた。

 拓斗がベンチに下がると、高宮コーチにしては、厳しい表情で口を開く。

「何故、交代させたのか、よく考えてみろ」

 拓斗は何か言いたそうな顔をしたけれど、押し黙った。とても悔しそうだ。

 でも、冷静になって考えることも必要だ。しっかり考えろ。拓斗。

 さぁ、俺は俺で落ち着いてプレーを見極めないと。
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